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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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なんとしても釣り上げたいんです

 ワイワイ。


 特に挨拶とか紹介とか、そういった形式めいたことをすることもなく、元食堂には人々が集まってただただ歓談を交わしていた。


 というかミカ様はそこに座っていらっしゃいなと、みんながお茶や干しりんごなどを出してくれたり、料理長が作ったパンケーキが私と護衛の分まで届いたりするのでもぐもぐするのに忙しかった。


 私やザコルに話しかけにきてくれる人もたくさんいるが、水害直後の怪我人手当では大活躍だったエビーやタイタと話したいも多い。相変わらずザコルが編んだレースに釘付けの人々もいるし、イーリアの孫自慢、娘(予定)自慢を楽しく聴いている勢もいる。


 私達にとっては顔馴染みばかりで、若干カオスな会話も心地よいばかりだった。


 ちなみにサゴシとメリーとペータの姿はない。たぶん屋根裏あたりに潜んでいると思う。


「ねえみんな、ティスはどうしたの。お仕事中?」


 私は同志村女子の三人に声をかける。


 お馴染み同志村女子五人組のうち、ここにいるのはユーカとカモミとルーシの三人だけだ。私の影武者をしながら曲者を引き付けているピッタは除くとして、もう一人のティスはどこにいるのだろう。


 それから、子爵邸に行きたがっていたというカファと、姿の見えない町長マージの行方も気になっていた。まあ、マージはサゴシ達と一緒に屋根裏で坊っちゃまをガン見しているかもしれないが……。


「ティスさんは集会所におります。あの、もしミカ様がよろしければ、私達の誰かのフリをしながら集会所の方へ向かってやってくださいませんか」

「なるほど、逆影武者ってことね! えー、誰になろうかなあ」


 彼女達は全員地毛が明るい色味だ。染めでもしない限り、遠目に見ても黒髪っぽく見える子はいない。私が彼女達になりきるとしたら、かつらを用意する必要があるかもしれない。せっかく提案してくれたのに何だが、エセコマになる方が正直楽かも……。


 そう私が考えたのを読んだように、彼女達はふふっと笑ってうなずき合った。


「私達、一ヶ月前ほどからお揃いのニット帽をかぶるようにしているんです。なので、かつらなどを使わなくても私達になりきれますよ」

「一ヶ月、前から? ニット帽を?」

「ええ。ミカ様がこちらを発ってからすぐに編みました。ピッタさんはミカ様の影武者をするのに忙しかったのであまりかぶる機会がなかったですが、私達は外に出る際は必ずこれをかぶるって決めたんです」

「はみ出た髪はなるべく生成り色のマフラーで隠すようにしてきました。外は寒いですし、不自然ではないかと」


 ユーカとカモミとルーシの三人は、揃って赤色のニット帽を取り出した。


「なるべく目立つ色の毛糸を取り寄せたんです」

「猟犬様とミカ様のフリで深緑色の頭巾やマントをつけている方が多いですから、反対色がいいかなって」


 はい、と私の分の赤色ニット帽が手渡される。


「私達戦闘に関しては完全に素人ですから、最近は身の安全のために、この屋敷の外を出歩く際は町民の男性についてきてもらう決まりになっています。護衛の皆さんには町民のふりをしていただければいいかなと」

「素人なりに考えたんですよ。マージ町長様に色々相談させていただいて」


 うふふ、と三人は気恥ずかしそうな、ちょっぴり得意そうな、そんな複雑な感情をはにかみに含ませる。


「そんな、みんなまさか、私が戻ってきた時のために一ヶ月も前から仕込みを……!?」

「と言っても、一週間ほどは子爵邸にお邪魔していましたから実質二週間ちょっとというところですよ」

「何かしたいなと思っても、ピッタや他の皆さんみたいな影武者の真似事は絶対に無理ですから」

「実はティスさんの発案なんですよ。逆に影武者をしやすい格好と行動をしておけば、後でミカ様や民の皆さんのお役に立てるんじゃないかって」

「頭いいわよね、彼女」


 結局私は食堂のど真ん中で愛と感謝を叫ぶことになった。そして全員にヨーグルトフラッペを作ってくると言って走り出そうとしたら総出で止められた。


『実家』に帰ってきたからには大人しく世話を焼かれてのんびりしていろ、と。





「と、言いつつ。一つお願いがあるんですよ、ミカ様」

「何、何何何、なんでも言ってください!!」


 話しかけてきたのは、シータイ在住幼児の一人、ガットの母であった。


「もう、ミカ様は相変わらず仕事したがりなんですから。外にミカ様のフリしたタキがいますから、その隣で魔法を使ってくださいませんか」


 つまり、私の影武者をしているタキを、魔法を使える本物だと外部に思い込ませたい、ということだ。


「それは構いませんが……。あの、この町、まだそんなに曲者が潜んでるんですか?」


 外から来るのはともかく、中にいたのはよほど掃討されているかと思ったのだが。


「念のためですよ。いるとしたら練度の高い奴ですから。なんとしても釣り上げたいんです」


 にや。ガット母は不敵に微笑う。


「ふむ、そういうことなら」


 この赤帽子をかぶっていったところで、タキの周りにいた者も怪しまれて尾けられる可能性があるな、と私は考える。


 どうやって『微妙に怪しい』感じを出そうか。私はフル回転で考え始めた。




つづく

活動報告に遅れるって書きましたがとりあえず間に合いました


後でちょこちょこ推敲して直すかもしれないです

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