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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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ジャムか干し肉にでも加工しておきますね

「うーん、王弟殿下ってもしや、魔力供給機関というか、四郎さんの生命維持装置としての王都を手放したくなくて籠城してるんでしょうか。そしてその研究で第一人者の第一王子殿下におもねってる……とか?」


 ぶつぶつ。


 そういえばなんか、王弟が王子の婚約者候補にまで嫌がらせしてたってセオドアが言ってた気がするな。

 王子達もまた、父王から稀有な能力を引き継いだ者達だ。第二王子は貴族達からやたらに娘をけしかけられていたようだし、王弟は政敵? の第一王子を不自然に褒め称えていたらしいことも判っている。力の強さとしては第二王子よりも第一王子の方が強い。第一王子にも自分の息のかかった娘でも嫁がせたかったのか、はたまた渡り人のような高魔力の者を充てがいたかったのか。

 私は、オーレンから聞いた、女の渡り人は特に狙われるという言葉を思い出していた。



「サギラで一角生やした馬の魔獣が目撃されている。パードレのガキが言ってんだから間違いねえだろう」


 パードレ、というのは現サギラ侯爵の名である。ちなみにそのガキ、というか令息の名はフィリオだ。


「やっぱりコマさん、サギラ侯爵様とは以前からのお知り合いだったんですね」


 何度でも説明するが、かの侯爵親子は被災地カリューに直接入って支援していた深緑の猟犬ファンの集い古参メンバーである。コマは、適当な理由をつけて私達のカリュー訪問に同行していた。その際に彼らとも接触したのだろう、とは後で気づいたことだ。


「まあな。豚が俺らの仲勘繰ったせいでパードレが一方的に被害こうむって以来の仲だ」

「え、何だって」


 何か聞き捨てならないようなことを早口で言われた気が。


「姫。俺は、氷を、お前を監視しなけりゃならない。間違っても、あいつと繋がるようなことがねえように……」


 コマが軽くうつむく。私なんかに申し訳ないとでも思っているのか、らしくもない。


「へー。だったらちゃんと仲取り持ってくださいよ。金輪際間に入らねえとか言ってないで」


 む。カップケーキみたいなお顔の眉間に皺が寄る。


「ケッ。お互い他に引き取り手もねえような変人同士に仲立ちなんざ要るワケねーだろが。だが、万が一その駄犬に飽きたら即言えよ。俺が一生側にいてやっからな」

「きゃー熱烈ー」

 やんややんや。

「やめろ」


 ぐい。ザコルが私を抱き込む。コマは気にした様子もなくフンと鼻を鳴らした。


「いいか、お前らに限ってはテキトーな計画でガキこさえんじゃねえぞ。作んなら完璧に管理しろ」

「うるさい!! これ以上ミカと下世話な話をするな!!」

「お前……。尋問となりゃ平気で下世話なモンいじくり回すくせしやがって」

「黙れ効率の問題だ!!」


 効率の問題で下世話なモンをいじくり回しているのか…。まあ、急所だろうし、精神的なダメージも大きそうだし、最悪取れても……考えるのはやめよう。ヒュンだ。


「ふへへ」


 ぎゅ。


「ミカ? 大丈夫ですか」


 ふざけた感じで抱きついたのに、心配されてしまった。


「大丈夫ですよ。そこそこ戦えるようになったし、闇の力まで得たので向かうところ敵なしです。もしあなた以外の相手をあてがわれるようなことがあったら、その場でジャムか干し肉にでも加工しておきますね」

「…………流石は僕のミカだ」


 いーこいーこ。

 幾分か冷静になったらしいザコルは、いつものように私の髪を撫でてくれた。




「ブレねえなあ、姐さんは。王宮の豚を解体とか言ってた時と何一つ変わってねーや」

「闇の力を求められた真の理由。それは、弱点をなくすことで、ザコル殿との間に障害も不安も作らせぬためであったのですね。流石は我らが公式聖女様でございます。しかしそのような状況には我々がさせませんのでご安心を」

「つーか、メイヤー教神徒も皆殺しにするんですよね? 自分で向かってくのだけはやめろくださいね? 影に任せてね? ね?」

「影にやらせる方が危ないよっ、約束してくれないなら私が直接出向くからね!? サゴちゃんからも言っといて!」


 もはや私を護っているのか私が飛び出さないように見張っているのか分からないのがうちの護衛達である。



「それで。この施設に不審な点はあったのか」


 そう問うザコルを、コマは鬱陶しいものでも見るように睨んだ。


「お前が怪しむのも解るが。この里では、単に魔獣の地位が高いだけだぞ」

「まだ見つかってねえだけだ。当主の邸より立派な建造物なんざ、怪しい以外の何物でもねえ」

「ちょっと小鞠、まだ疑ってるのかい? 君、毎日のようにここへ来て探してるんだろう。いい加減に」


「だから『まだ』見つかってねえっつってんだろがこのクソ木偶。お前みたいな仕掛けオンチが、隠された機構に気づいてねえとどうして言い切れる。大体、あんな規模のモンでさえ手入れ怠りやがって、たまたまそこの息子が神徒に転身してなけりゃ今頃完全にオバケ屋敷と化してただろうなあ?」


「んぐう…っ」


 お前んち、おっばけやーしきー。それと同レベルのセリフにうなる子爵家当主様である。


「ケッ、せいぜいこの変な女に感謝しとけよ」

「それは当然……」


 オーレンが私の方を伺ったので、首を横に振っておく。


「いえ、お礼なら穴熊さんとミイにおっしゃってください。穴熊さんは以前からオーレン様に異常の兆候を報告していたはず。私はミイに言われるまま、問題の場所に案内しただけです。あと、浄化はどうかと言い出したのはザコルで、私はいかにも神徒の才能がありそうな人を紹介しただけ。ね、ジーロ様」


「俺は何が何だか分からんうちにお前らに拉致されただけだ。どうして才能を見抜かれていたのかの方が気になるな」

「それは……」




「…………フン」


 コマは騒がしくする人々を捨て置き、未だ静かに待ち続けていたミリナとその息子、彼女らを守護する魔獣達の方へ向き直った。




つづく

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