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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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392/578

天然酵母パンか何かみたいな悪口

昨日アップしました「ep.391 私を調子に乗らせたいとしか思えないんですけど」で

一部修正というか文を削除しました。


魔獣のゴウがサンドについて行ったとか書いちゃったんですが

ゴウは、サンドに弟を頼むと言われたのでザッシュと行動をともにしています。

「オーレンは、随分とあなた達に気を許しているな」

「そんな……あっ、申し訳ありません。旦那様に馴れ馴れしい態度を」


 ぺこぺこ。私は慌てて頭を下げた。イーリアはこれでもオーレンに一目惚れだったらしい。そんな運命の相手の周りを無遠慮にうろちょろされたら、いくら寛大で男前な彼女でも面白くなくて当然……


「違う、単に珍しいと思っただけだ。人見知りと人間不信と自意識過剰を捏ね合わせて発酵させたようなあれが、自分の執務室を丸ごと貸し出すところなど初めて見たのでな」

「そうなんですか……」


 私は肩からずれて落ちかけた布袋を背負い直した。

 人見知りと人間不信と自意識過剰を捏ね合わせて発酵。天然酵母パンか何かかみたいな悪口だな…………というのはともかくとして。


 改めて考えてみると、貴族家の当主の執務室を私的な密談に使ったり、その後もガッツリ居座って変な編みぐるみを大量に作ったりと、普通に非常識だった気がしてきた。しかも息子の頼みとはいえ、お遣いまで引き受けてもらっている。


 シータイ町長マージの執務室もよく借りていたが、町長と領主の執務室では置いてあるものの重要度も違う。

 オーレンから申し出てくれたことばかりとはいえ、厚意に甘えすぎというか、距離感を間違っていたかもしれない。我ながら本当に図々しいとか図太いとかの天才だな……。


「全く図々しい」

「いやほんとそうですよね!? 大変申し訳」

「違う。図々しいのはあいつの方だ。ミカは伯爵家の姫だぞ、挨拶もせずに逃げ回っていたかと思えば、今はやたらに付きまとってくだらん話に付き合わせやがって。自分の立場を理解しているのか?」


 うんうん、ザコルがセーフティゾーンの向こうでうなずいている。


「ついには護衛もろとも自室にまで連れ込むとは。ミカよ、あいつに無用な接待などさせられていないか。あなたは気を回しすぎるところがあるから心配だ」

「い、いえ、お話が面白いので楽しいです……」

「甘い!! そうやって甘やかすから図に乗るのだ!!」


 甘やかしたつもりはない。雑談は主に昭和と令和の日本について、もしくはサカシータ家の思い出話だが、どれも私が楽しいだけの話である。たまに調子に乗ってしまうのはお互い様だ。


「お前もそう思うだろう、エビー!!」

「ミカさんが楽しんでんのは本当すよ閣下。そんでも、あんだけ自然体で話していただけるようになってやっと話が進んだのもありますね。さっすがうちの姫、人の懐に入り込む天才っす」

「ミカが天才なのは同意だが!? どうしてあいつばかり!! 私だって自室にミカを呼んで独占したい!!」

「それが本音すか。つか、オーレン様と話せるように計らってくださったのは女帝様すよね?」

「それはそうだが、あいつ、肝心な相談には乗ってやっているのか? 自分がしたい話ばかりしているようにしか見えんが」

「……ノーコメでオネシャス」

「きっちり答えろ!」


 胸ぐらを掴まれて困ったようにヘラヘラしているチャラ男である。


 人の懐に入る天才なのは私よりこのエビーだ。

 エビーは礼儀作法も騎士としての実力もぶっちゃけそこそこだったにも関わらず、ここにいるテイラー勢の中では一番テイラー家の中枢に近い立場を確立している。表舞台には立てない影から、果ては第二王子や魔獣をして『ズッ友』と言わしめるこのコミュ力。ぜひ見習っていきたい。


「ザコル殿。背中にお隠れいただくのは久方ぶりでございますね。お飲み物などはいかがでしょうか」

「いや……」


 話には加わらず、少し後ろをついてくるのは礼儀作法と実力ではピカイチのタイタだ。相変わらずサービスのいいセーフティゾーンでもある。

 そして、先ほど天井裏に帰ってしまったが、伝説の工作員ザコルをして『完璧な影』と言わしめるサゴシ。


 私が護衛もろとも部屋に呼んでもらえるのは、彼らの信用度が高いおかげでもある。






 魔獣舎への同行希望者は、ミリューとミリナが待つ訓練場に集まった。

 空は曇天。何となく雪が降り出しそうな雰囲気だ。あまり長居はできないかもしれない。


 イーリアと私達テイラー勢だけでなく、ミリナに同行していた子供達イリヤとゴーシ、そしてコマ、ついでにジーロにザラミーア、オーレンまでいた。


「どうしてお前までいる! お前は充分ミカと遊んだだろうが!!」

「ちょっ、僕ぁ玄武達に会いたいだけだよ! 離してよリアあああ」


 今度はオーレンの胸倉を掴むイーリアだ。そんな二人を「仲良しねえ」と微笑むザラミーア。通常運転である。


「あれ、シシせんせもいるじゃねーすか」

「オーレン様に誘われましてな」


 おじさんはお友達も呼んでいた。


「これ、乗り切れるのかなあ……」


 キュ、キュルウ。

 大丈夫、来る。


「来る?」


 ミリューの返事に顔を上げる。


「ミカ様、ご心配にはおよびません。他の子も呼んでありますから」


 ミリナが言うが早いか、魔獣舎の方から二つほど大きな影がこちらに飛んでくるのが見えた。




つづく

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