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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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ヤミっておもしろーい!!

「みっ、みんな…っ、ほっ、本当に大丈夫、穴熊さん達やっ、影の皆さんの側を離れたらダメよ!?」

「姉上よ、心配する気持ちは解るがまずは割り振りだ。ザコルよ、戦場での経験が多い魔獣殿はどなただ」


 ガチガチのミリナの肩をジーロがそっと叩く。


「この中で僕が一緒に戦ったことがあるのは、ミイとナラとトツ、それからここにいませんがゴウです。ジョジーは僕と出たことはないですが、戦場の経験はありますね。第一王子殿下が『かわいいお猿の魔獣とお出かけした』とおっしゃっていたので」


 キキィ!


 かわいいと言われて嬉しそうなジョジーである。ザコルの口から出る『かわいいお猿』の破壊力よ。


「今名前が上がった以外の子で、戦場に出たことある子はいますか? ミリナ様」

「そそそっ、それ、それっ、そそそれっ、ひゃんっ」


 ミリナは私が脇腹をつついたので悲鳴を上げた。


「すすすすみませんっ」

「いえ。ミリナ様が色んな感情がない混ぜになってしまっているのは非常によく解ります。ゆっくりで大丈夫なので、まずは落ち着いてください」


 スーハー、スーハー。


 キュウ、くぅん、ミイ……


 ミリナは深呼吸を繰り返したのち、寄り添う魔獣達をそっと撫でた。


「……だめね、逆に心配をかけているようでは。訓練をつけたのは私だというのに、信じてやらなくてどうするの」


 うぉう。


「じょぉぅ、我ぁ、ぁずかぅ、ぁんしん」


 魔獣の女王よ、我らが責任持って預かる。ご安心いただきたい。


「ええ、穴熊さん達のことは心から信頼しております。ただ、この子達を戦場に送り出す役は今まで夫やサンド様が担っていたものですから。私の裁量で送り出すのは、まだまだ慣れなくて……。こんな弱気なことを言っていてはダメだと解っているのに」

「いいのよ、ミリナさん。お好きなだけお悩みなさい。今日はミカも何か発表があるのでしょう。先になさったら」

「そうさせていただきます、ザラミーア様。少しだけ場が混沌とするかもしれませんが、よろしいでしょうか」

「混沌? まさか昨日のドージョーほどではないでしょう?」


 ぐふっ、集まった影の誰かが吹き出す。昨日は完全に闇に呑まれていた道場である。


「そうですね、多分、昨日ほどでは。ジョジー、見ててね」


 キキィ、キキキィ!

 ミカ、がんばるです!


「よっしゃ。じゃあ、今から余興と言いますか、ちょっとした魔法実験を行いますのでお手伝いを募ります! 我こそはという方、挙手をお願いしまーす」

「はいはいはい! おれやりたい!!」

「ぼくも!!」


 真っ先に手を挙げたのはゴーシとイリヤだった。私は思わず天井を仰ぎ見る。


「子供でも多分大丈夫でーす」


 天井から間延びした答えが返ってきた。


「多分か…。短時間にするけど、ヤバそうだったら止めてよー?」

「オーケーでーす」


 ではお付き合いしましょう、とシータイの影も何人か出てきてくれた。


「うーん、プロの闇の眷属相手にどこまで効くかは未知数なんですが。とりあえず、ザコルとサゴシには効きませんでした」

「俺らと少年少女にはめっちゃ効いたけどな」

「はは、全く不思議な体験でございました」


 エビーとタイタは苦笑する。

 ざわ、ざわざわ。何をする気だ、と観客の影達も顔を見合わせる。


「では、百聞は一見にしかず! とくとご覧あれ!」


 私は全神経を集中させた。ここ数日、少しずつ練っては貯めてきたものを、体の奥底から大事に取り出す。じわりと空間が暗くなる。


「なんだ? 空気が」

「おかしいわ、急に寒くなったような」


 光の者ジーロと、魔力に敏感なミリナがあたりを見回す。




「…………踊れ」




 タシッ、イリヤとゴーシが同時に足を出した。


『へっ』

「踊れ」


 ヒョイ、シータイの影の一人が両手を挙げた。


「ヘァッ!?」

「踊れ」


 私はどんどん出力を上げてゆく。


「踊れー踊れー」

『わわわわ、わわわわわわわわあああああ!?』


 前に出た者達が全員で同じ踊りを始めた。


「こっ、これは、まさか!?」

「闇の……っ、ミカが操っているのか!?」


 血相を変えたイーリアに微笑んでみせる。


「はい! 最近ちょっとだけ習得しました!」

「ちょっとだけ!? この人数の影を操れる力が『ちょっとだけ』なものか!! オーレン!! ミカには特性があったのか!?」

「ないよ。ないのに作り出したんだ。全くとんでもない子だよ」

「ジョジーにやり方を聞いただけですよ。あはは踊れ踊れー」


 私はカバンからタンバリンを取り出し、シャンシャンと鳴らした。みんなが盆踊りのように回りだす。


「なにこれなにこれ! からだがかってにうごきます!」

「あはははは! なにこのおどり!?」

「エビー直伝の謎踊りだよぉー」


 ぶふぅっ、我慢しきれなくなったザコルが吹き出した。彼は昨日、部屋で人を集めて試した時にも笑いすぎて腹筋が崩壊していた。


「すごいわミカ! あなたったら人形劇もお得意なのねえ」

「まあまあ、イリヤがそんなに上手に踊れたなんて母さま知らなかったわあ!」


 ザラミーアとミリナはお遊戯会でも見ているようなノリで手を叩き始めた。


「なんだこれは…ッこんな干渉のされ方は初めてだ!!」

「我らが操られるということは、我らよりミカ様の闇の方が断然深いということだ!」

「なんという姫だ、光の住人にしか見えないのに!?」

「闇を愛しているからなせる技だぞこれは……!!」

「なんかむつかしーこと言いながらおどってる…っ」

「ヤミっておもしろーい!!」


 アホな踊りを真剣な表情で行う影達に、そんな影達を笑いながら踊る少年達である。


「ふむ。驚きはしたが、異界娘ならさもありなんという気がしてきた。はは。こんな平和な闇の使い道があろうとはな」

「いや、これ戦場でやられたら結構えげつねえすよ」


 もし戦場でうまくハマれば、敵が集団で踊り出して隙だらけになること請け合いだ。確かに、やられる方としてはえげつない攻撃である。


 しかし謎踊りをさせることはできたものの、感情や思念に作用するような術は使えなかった。たぶん、私に開花した闇はそういう能力なのだ。


 ザコルはチャームと言って人を魅了する能力、サゴシは人の悪感情に干渉する能力、穴熊は同じ能力者同士で精神をつなげる能力。闇の力に由来する能力も多種多様だ。精神というか神経に作用する能力があってもおかしくはないだろう。




つづく

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