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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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賞状といったらこの曲ですよね

 ちゃーちゃーらちゃーんちゃーん、ちゃらららちゃんちゃんちゃーん


「わあ、賞状授与の時に流れるあの曲だ! 曲名は知らないけれど!」

「賞状といったらこの曲ですよね。私も曲名は知らないですが」


 ちゃらららちゃんちゃんちゃーんちゃーん、ちゃーらーらーちゃちゃーん


 そんな例の曲を口ずさみながら、私はソロバン塾卒業証書を商会女子達に授与していく。


 証書には、タイタ先生の美文字で綴られた文面に、私のサインをちょこっと入れた。オーレンにもお願いしたら、当主らしい立派なサインを添えてくれた。

 オーレンは昨日のヤキトリパーティで随分と女子に慣れたらしく、今日はなんと授与式に参列してくれることになった。執務メイドの皆さんも感涙の嵐である。


「ありがとうございます。サカシータ子爵様、ミカ様」


 代表でユーカが謝意を述べると、その場の皆が拍手をした。


「一週間でよく頑張ってくれたね。卒業おめでとう」


 事実、ピッタ達商会女子はとてもよく頑張ってくれた。まだ反復練習は必要とはいえ、基礎は完璧マスターだ。


 注文していた新品ソロバンも取り急ぎで三十台納品された。私が初期投資して注文した数は三百台だが、一週間で三十台仕上げてくれただけでも充分すごい。どうやら以前オーレンが発注した時の材料の余りを大事に保管していたらしかった。それ以降は竹材の下処理なども含めて一から作ると聞いたので、もっと時間がかかるだろう。


 オーレン監修の教本も数冊ずつ渡せたし、これでいつ彼女達に迎えが来てもいいくらいには準備が整った。


「とはいえ、昨夜の大雪で足止めか、今日中に着くかどうかって感じだろうねえ」


 私は窓から外を眺める。

 積もったばかりの雪に日の光が降り注ぎ、ひときわ美しい銀世界が広がっていた。


「同志の人らだけならまだしも、馬車引き連れてるでしょーからねえ」


 私の口調に合わせて間延びしたように答えたのはエビーだ。


「ふふっ、毛糸の追加持ってきてくれるかなあ」

「そりゃ絶対すねえ」


 シータイ産の毛糸や原毛は使い尽くした頃だろう。領内の他の町や、モナ領で隣町のパズータ、モナ領領都チッカにまで仕入れの手を伸ばしていると聞いている。


「きっと、たくさんの土産品を持たされてございましょう。皆様ミカ殿とザコル殿のことを案じておられますから」


 タイタの言う通り、きっと食べ物なんかも積まれてくる。もう真冬だし無理はしないでほしいところだが…。


 そういえば、町医者シシも馬車に詰め込まれてドナドナされてくる予定だ。一緒に来る可能性もある。到着すれば賑やかになるだろうな。


「今日は卒業式でもありますが、入塾式でもあります。えー、新塾生、サンド様、マヨ様、あとロット様…と、カズ」


 わー、パチパチパチパチ。


「なんでカズまで」

「いーじゃないですかぁ。ちょっと日本感じたいんですよぉ。あとだんちょーのオモリでーす」

「ちょっ、お守りなんていらないわよっ、さてはあたしが真面目にやらないと思ってるわね!?」

「思ってまーす」

「きいい、絶対一番にマスターしてやるんだからっ!!」

「ロット坊ちゃん頑張りましょうね…!」

「仲間見つけたみたいな顔してんじゃないわよマヨ姉!!」


 ガチャ、突然扉が開く。


「すまんすまん、遅くなって。俺もやるぞ」

「ジーロ様、ソロバン塾へようこそ」


 わー、パチパチパチパチ。


 彼らがどこまで真剣にやるつもりか知らないが、やるからには商会女子と同じくらいのスパルタで行こう。時間は有限である。




「ジーロ様もお守りに来たんすか」

「まあな。これ以上ホッタ殿に丸投げでは申し訳がたたん」

「ジーロ様って腹黒なのに律儀すよねえ」

「腹黒とはなんだエビー殿」

「エビーでいいっす」


 エビーはジーロと仲良くすることにしたらしい。彼はコミュ力高めのチャラ男だが、あれで敵味方を判断するのには慎重な方である。


「もう、泣かないでよみんな」

「だっ、だって」

「これでまたしばらくミカ様に会えなくなるかと思うと…」

「さみしすぎて…っ」


 わあっ。


「楽しい思い出いっぱい作ってもらったね、みんなのドレス姿、本当にかわいかったよ」

「ふべえ…っ、やめてくださいよもっと泣いちゃうじゃないですかあ…!!」

「ちょっと大丈夫、すごい顔だよピッタ」

「泣き方までミカに寄せているんですか、流石の意識の高さですねピッタ。ハンカチをどうぞ」

「ちばいばずげどありばぼうぼございばず」


 違いますけどありがとうございます、そう言ってピッタはザコルからハンカチを受け取る。


「いいか。俺は変なやつだ。そこんところよろしく」

「ゴーシ兄さま、サンドおじさまもおもしろい人なんです。いつもナゾのおめんをかぶってあらわれます」

「へー…。そのおめんとかみがたはかわってますね」


 サンドは同席していたゴーシに変な人アピールしている。イリヤが持っている面はサンドの領都土産だろうか。


 ゴーシもここに滞在中は私達と一緒に勉強することになった。まだ文字習得中のゴーシにはまだソロバンは早い。ただ、数字の書き取りが済んだら、足し算引き算の概念を教えながらソロバンも同時に使っていこうかと目論んでいる。


 ララとルルはザラミーアに連れられ、ザラミーアが借りたという子爵邸近くの一軒家を見学に行った。

 私やメイド達がリコを預かろうとしたが、今回も失敗した。生まれてこのかた母親の目の届かない場所には行ったことがないらしいリコに、これからゆっくり仲良くなりましょうねとベテランメイド達が声をかけていた。




つづく

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