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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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炭火しか勝たんって感じでしたぁ

 結論から言えば、その場の八割はタレ派になった。一部、甘じょっぱい味付けが苦手そうな層もいたのでそんなものだろう。


 塩味は、シンプルに塩を振っただけのもののほか、刻んで叩いたネギを使ったネギ塩ダレも作ってみた。ネギ自体に苦手意識のある人も多い中で、これなら食べられるかもと言ってくれる人も多かった。


「母さま、つぎは僕にやかせて!」

「イリヤ! おまえのぶんもタレぬっといてやるよ!」

「リコもリコも!」

「じゅんばんな」


「次は何の味にしようかしら!」

「ネギ塩ダレは試した? ネギって苦手だったけれど、あれは癖になりそうよ」


 七輪の番は大人気になり、私は早くもお役御免になった。はしゃぐ子供達の後ろにも列ができている。自然と、自分の分は自分で焼く空気になり、皆もそれを楽しんでいるようだった。



「俺は断然タレ派だなー」

「いつからいたんだよサゴシ。少年とメリーちゃんは?」

「あっちで食ってる」


 サゴシは薮の方を指した。焼いて持っていってやったのだろう。意外に面倒見のいい男である。


「俺はこのネギ塩ダレというのに魅せられてしまいました。ミカ殿のお作りになるものはまさに魔性の味わいだ」

「へへっ、魔性の紳士のお墨付きすね」

「魔性の紳士?」


 エビーの言葉にタイタが首を傾げる。


「僕は最初の甘いタレも好きですし、ネギ塩ダレも好きです。というかミカが作ったものは全部おいしいです」

「ふふっ、ザコルは私と味の好みが合うんでしょうねえ」


 料理人達はかまどでスライスしたパンやソーセージを焼き始めた。この地方で食べられているのは雑穀やライ麦などが入った黒パンだ。カリカリに焼いてバターを落とした黒パンは格別である。


「聖女様。鶏ガラで出汁取っときましたぜ」

「えっ、本当ですか!? わあ、すごく綺麗なスープ! しかも寸銅鍋いっぱいある! やったあ」

「何をお作りになるんで? あの甘い卵料理ですか」

「それも作りたいんですけど、まずはこれでネギスープ作ってみようかな。あったかいもの飲みたいし。干し肉とかあります?」

「干し肉もありますが、サンド様とマヨ様がお買いになってきた燻製肉とチーズもありますぜ」

「燻製肉! いいですね、マヨ様に使っていいか聞いてこよっと」


 マヨはなんでも丸焦げにする自信しかないとかで、ミリナに焼いてもらった焼き鳥を美味しそうに頬張っていた。燻製肉は好きなだけ使っていいとのことだったので、ありがたく切り出させてもらうことにした。


「ふふふーこれ絶対おいしいやつー。あ、卵も溶いて入れようかな」


 鶏ガラスープを手頃な大きさの鍋に移し、刻みネギとベーコンを入れて魔法をかける。沸騰したら味見しながら塩を足し、溶き卵を回し入れて再び魔法をかけてひと煮立ち。以上である。


「ネギとベーコンの卵入り中華スープいかがですかー」

『飲みます!!』

「ふふっ、はいどうぞオーレン様、ザコル」


「パンに燻製肉とチーズ乗っけてかまどで焼いたやついかがっすかー」

『食べます!!』

「ふはっ、どーぞ子爵様、兄貴」


 その日、スープとエビーのベーコンチーズパンもよく売れた。







「父様っ!! なあんであたし達を呼ばないのよお!」


 パーティも終盤、片付けを始めたところでロットとジーロが乗り込んできた。


「今日はソロバン塾の慰労会だからね。君達も食べたかったらまた明日以降にやろう。炭はもうないけど」

「スミ!? スミがないとどうなるの!? ね、ね、どうだったのカズ! そのタレのヤキトリってやつ!」

「もーね、炭火しか勝たんって感じでしたぁ」

「スミがないとヤキトリは無理ってこと!?」


 ガビーン。


「まあまあ、オーブンでも似たものはできるのでは、ロット様」

「マネジあんたソロバンなんてやってなかったじゃない何ちゃっかり呼ばれてんのよっ」


 ブンブンブン。


「やめ…っ」

「やめなさいロット。彼も大事な客人だよ。何せ、彼の差配がなければ彼女達の商会とは縁がなかったんだから。お客様優先だよ」


 どうやら、炭の在庫が多くないためにゲスト優先で人数制限を行っていたらしい。マネジはどこにいたのか記憶にないが。


「まあまあロット様。ネギとベーコンの卵スープならまだありますよ。飲むならよそいますけど」

「ネギぃ…? あたしネギ苦手なのよねえ…」

「加熱してあるものなら食べやすいと思いますよ」

「俺は飲むぞホッタ殿。貴殿の作ったものならきっと美味いだろう」

「飲まないなんて言ってないわよ早くよそってちょうだい!」

「はいはい。エビー、ピザパンの材料はまだあるでしょ、出してあげて」

「へいへい。その辺座って待っててくださいよ」


 ピザパンとスープを美味しそうに食べる食いしん坊兄弟をみんなでほっこり眺める。



「あ、そうだ。後で魔獣舎に行きたいんです。オーレン様、許可をお願いできませんか」

「もちろんいいよ。僕もついていこう」

「よろしくお願いします。ミリナ様と穴熊さんも連れて行っていいですか? 例の件を説明しておきたくて」

「ああ、いいよ。イリヤはどうするんだい?」

「彼の意向に任せようかなと。ゴーシくん達と遊びたいかもしれないですし」


 ゴーシ達はしばらく子爵邸に泊まるとのことだった。ララとルルの縫い物関係の仕事が一段落したのでゆっくりできるようだ。また、造花作りの仕事が本格化すると子供達を預けなければいけない場面もありそうなので、今のうちから子爵邸に慣らせる意図もあるらしい。


「穴熊隊長さん」


 うぉう。


 薮から穴熊。ずっとそこにいたらしい。手に串を持っている。サゴシが彼にも配っていたのだろう。


「そんなわけで、コード・エムの続きです」

「ぎょぃ」


 シュバ。彼は薮に戻っていった。




つづく

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