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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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その忠義心、見事なり、ですわ

「アメリアちゃーん、ザッシュ様ー、カズ・中…じゃなかったモナでぇーす」


 ボソボソ…。

 穴熊はカズに向かって交信内容を話す。もちろん、彼らの独自言語でだ。


(はあ!? カズ殿だと!? どういうことだ、なぜそこに!?)

(カズ様? まさか同席なさっていたなんて。お久しぶりでございます)


「うんおっひさー。だんちょーがねー? 穴熊のおっちゃん達のコト、勝手にウチにバラしちゃったんだぁ。だからダイジョーブ。だんちょーのせいだから」


 いや、何が大丈夫なんだろうか。


 ボソボソ…。


(ロット様のせい…。ザッシュ様、深く訊くのはよしましょう。それで、ミカお姉様とザコルはどうしましたの? ザコルが、凍傷ですって?)

(凍傷だと? ザコルがか? まさか。うちの兄弟に限って凍傷など負うわけなかろう)

(ですがこちらの彼が)


 もしや、あっちでは二人以上の穴熊が話し役に加わって状況を説明しているのだろうか。

 穴熊はオースト国の共用語が片言な上、習得レベルも穴熊によってまちまちらしいので、効率を考えて複数人で対応しているのかもしれない。


 私とカズには渡り人特典チートスキル『翻訳能力』があるので、彼らもオースト語を無理に話す必要がない。従って一人でも充分、と判断しているのだろう。


「んー、いちお凍傷だと思いますよぉー。なんかぁ、堀田先輩がダイヤモンドダストぶわー出してるとこに手ぇ割り込ませたらしくってぇ、手の平がめっちゃ腫れて真っ黒になってんの今まで隠してたぽいー。見ちゃったけどガチのグロ案件だったー。あれ我慢して隠して放置とかマジキチなんですけどー。サゴたそもそー思うっしょー?」

「うんうん思うーマジキチだよねー」

「サゴシ……」


 ギャル風味に頷く忍者に、ズッ友エビーが引いている。


(グロ案件…。ザコルの手が魔法にあてられてむごいことになっていた、ということで合っているのかしら。全くあの男は…。どうしてそう)


「ほーんと似たもの同士っしょぉー?」


(ええ、ええ。全く似たもの同士だわ! カズ様、ザコルにお伝え願えますでしょうか)


「うん、なーに?」


(よくやったと)


 ぱちくり。カズが瞳をまたたかせる。


「えっ、それでいーの?」


(いいのです。専属護衛としてよくぞお姉様をお止めしたわ。それに、よくぞ痛みに耐え、隠しおおしましたね。ひどい怪我を見てはお姉様もまた冷静を欠いてしまうところだったでしょう。流石はザコル。その忠義心、見事なり、ですわ)


 くるり、カズはザコルの方を振り向いた。


「ねー野生の人ぉー、なんかアメリアちゃんがあっぱれ! みたいなこと言ってるぅー」

「あっぱれ…? もしや、褒めてくださっているのでしょうか」


 ザコルは私を抱き寄せてよしよししながら返事した。


「うん、よくやった! って。あとよく痛みに耐えて隠しましたねって」

「恐縮です、お嬢様。あと数時間は隠しておくつもりだったのですが、ミカに勘付かれてしまいまして」

「あんなの数時間も放置したら手が取れちゃってたよおおおお取れちゃったのは治せないんだからああああ」

「はい、落ち着いてくださいミカ。別に、手の先くらい取れて落ちたとしても戦闘はできますから」

「できるかもしれないけどそうじゃないっ、ザコルならそうなっても普通に最強なんだろうけどそうじゃないのおお!!」


 はいはい、とザコルは適当に返事をして私を撫でる。彼の手の腫れや変色は既に引きつつあった。


「ねーアメリアちゃん」


 カズは騒がしい私達から穴熊に視線を戻し、また話し始めた。


(はい、カズ様。どうなさいまして?)


「先輩ってー、家族や仲間が傷つくとかそういうのにめちゃくちゃカビンじゃん?」


 その問いかけには、すぐに返答はこなかった。カズは構わずに話し続ける。


「今回、魔獣ちゃん達が死にかけてたせいでああなったんだけど、あの子達、サカシータの人達と昔一緒に暮らしてた子達で、オーレン様も会えるのずっと待ってたと思うんだぁ。古参って言うくらいだし、おじーちゃんおばーちゃんの魔獣ちゃんばっかりだったってのも、アレだったのかなーって。しかもあの子達、ザコル様の戦友でもあるんでしょ。ミリナ様も泣いてたし、絶対救う! ってなっちゃったかも。…ウチも、ちょっと気持ちわかっちゃうんだよね。多分だけど、また暴走とかしちゃうことあると思う。だから、許さなくていいんだけど、解っといてあげてほしいかも」


 カズのセリフから数秒、穴熊は受信中とばかりにふんふんと頷き、そして口を開いた。


(ええ、心得ましたわ。ザコルも、すぐに解決できる問題ではないと言っておりましたし、わたくしもそう思います。と、言いますか、いつでも誰かの揺らぎに寄り添い、理解し、心を慰めてくださるのはミカお姉様の方なのですわ。その慈悲に救われたわたくし達がその愛をお返しできずして何といたしましょう。今わたくし達にできることは。そんなお姉様の心の奥底に染み渡るまで、愛を繰り返しお伝えしていくことだけでございます)


「……うん。ありがとう、つかアメリアちゃん人生何周目? 先輩、色々あったみたいだけど、こんないい子がいるよーなお家に拾われたのラッキー過ぎじゃね。ポレック爺さんが言ったとーりだし」


 ぐすっ、カズは洟をすすりあげて「あは」とごまかすように笑った。


「ポレックス爺さんが? んなこと言ってたんすか」

「そー。なんかみんなに言ってるよぉ。ミカ様はいいお家に拾われたんだなあ、幸せだなあ、よかったなあ、って」


 ず、とエビーも洟をすすって「へへっ」と笑った。


「ポレック様とは、干林檎をくださったご老人ですね」

「うん。爺さん、毎年傷物林檎を引き取って作って、みんなにあげてるんだってー」

「ほう、聖人のようなお方ですね」

「あは、おれぁ聖人じゃねえおせっかいジジイだ! って言いそー。あーいうおじちゃんってどこの世界にもいんだね。こないだは先輩の真似か知らないけど『おれぁエコやってんだ、エコ』って言いながら干し林檎くれた。ウケる」

「はは、確かに。傷物林檎を加工してみなさまにというお考え自体がミカ殿の『エコ』と同じでございますからね、むしろ先人でいらっしゃいましたか」

「なんかシータイの人やたらエコエコ言うんですけどぉ、先輩のせいですよねぇ?」


 わざとらしく私に話を振るカズに、あはは、と皆が笑う。ザコルの腕が緩み、彼は私の顔をのぞき込んだ。


「ミカ、お願いですからもう泣かないでください」


 彼はそう言ってぐすぐすと泣く私の髪を優しく撫でる。




 その後、また言葉が解らなくなるなどの一悶着はあったが、平穏な午後は過ぎていった。




つづく

ミカ以外全員『全然平穏じゃない』

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