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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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泣くな。誰のせいだと思っている

「ミカ、ミカ!」


 がし、魔力を放出していた手を強く掴まれた。


「どうして止めるんですかザコル、まだ…」


 グウグウ、ミイミイ、キキイ、キュルルウ!

 気づけば、魔獣達が私に向かって一斉に鳴いている。


「? みんな、言葉はどうしたの?」

「ミカ、〜〜〜〜、〜〜〜〜!」

「あれっ、ザコルも何言ってんむっ、んむっ!? んーむーむぅー!!」


 …………ぷはっ。


「ふぇっ、何するんですかぁ…!」


 急に濃厚に口づけられた私は涙目になった。


「このクソ姫が!! 昏倒するまで続けるつもりか!? 自分が膝をついているのに気づいていないのか!!」

「えっ、あ、本当だ、いつから座ってたんだろう」


 よいしょ、と立ち上がったら視界が傾いた。


「はれ…?」


 倒れる前にサッと横抱きにされ、ジロリと睨まれる。


「一瞬、言葉も解らなくなっていたでしょう」

「あっ、えっと……はい、すいません。魔力分けてくれてありがとうございます」

「ミリュー、お前もミカに魔力をやれるか?」


 ザコルは馴染みの水竜に声をかけた。


 キュルル…。

 少し。王宮、水没。飛ぶ。力、失う。


「ミリュー、王宮を水没させてきたの!? 無理しないで!」


 キュルルッ!!

 無理、ミカ!!


「ひぇ、すいません!」


 怒られた。確かに、無計画にダイヤモンドダストを発生させまくって無理したのは私の方だ。


 キュル、キュキュー。

 ミカ、くれた、返す。


 ミリューは他の魔獣に比べればまだ余裕があるらしく、私から受け取った魔力をそのまま返してくれた。


「そういえば、ミリューって肌とか体液とか介さなくても魔力分けられるんだね」


 グウグウ…。

 強力な魔獣ならばできないこともない。膨大な魔力を無理矢理浴びせるという力技だ。お前が今したのと同じでな。


 足元にいた大きな亀、玄武に冷静な口調で突っ込まれた。彼の言う通りだ。ダイヤモンドダストがその力技の最たる例で間違いない。少し考えれば分かることだった。私はアホなのだろうか?


 思えば、私という歩く非常識は、その辺に魔力を垂れ流して人々に元気を与えている存在であった。魔力視認能力のあるシシは、決してその辺の人に私の魔力の色が混じっているわけではないと言っていたが。


 というか今、ナチュラルに玄武から『強力な魔獣』扱いされたな…。


「ミカ様、ミカ様…っ」


 側で泣きじゃくるミリナに気づく。声をかけようとしてふと周りを見ると、泣いているのは彼女ばかりではなかった。というか、ドームの内側や近くにいた人間はほとんど泣いていた。

 …これって、全員が単に感動して泣いているという解釈でいいんだろうか。それにしても泣きすぎでは…?



 私は眉間を揉んだ。


「何を呆れているんですか」

「自分に呆れているんです」


 こんなに大勢の人が泣いている中で、平然と魔法を使い続けていた自分の神経が信じられない。

 のめり込むと何も見えなくなる癖は、いい加減に直した方がいいなとつくづく思った。





「ごめん姐さんごめん、気軽に頼んだ俺が馬鹿だった…っ」

「もう泣かないでよエビー、何も考えずに魔法ぶっ放しまくった私が悪いんだからさー」

「違う!! 誰かの命救うためだったらアンタが残量とか何も考えずにぶっ放しまくるなんて判り切ったことだったんだよおおお」


 はああ、とタイタが溜め息をつく。


「エビーを責めたくはないのですが、全くその通りかと。ザコル殿が近くに控えてくださっていて本当によかった。はああ」


 二度も溜め息をつかれた。タイタに呆れられるのは地味に精神がえぐられる。


 姫様のアホォー!!


 遠くからサゴシの声が聴こえる。この辺り一帯、私が作り出した細氷が降り積もっているせいで近寄れないらしい。後で穴熊達やペータにも小言をくらいそうだ。メリーはまたトランス状態になっているのだろうか。


 ミイミイミイミイミイ…!!

 ミカのアホアホアホ…!!


 ミイは私の頭に乗り上げ、ずっとペシペシと頭頂部を叩いている。他の小中型の魔獣達も辺りを囲んで叱責とも悪態ともつかないことを言い募っている。私自身を心配して叱っているのか、ミリナの有力な下僕として自覚が足りんと怒っているのか、どっちなんだろう。


「この世のものとは思えぬ奇跡! 公式聖女様はまことの神、やはり神の隣には神…!」

『おおおおおおお』

「そっちの同志は儀式始めないでください。神じゃないんで!」


 マネジと、いつの間に列を抜けてきたのか、サカシータ騎士であり同志でもあるローリとカルダが天に、ではなく、私に向かって祈りを捧げている。真剣にやめてほしい。


「…ていうか、見てませんでしたよね?」

『何のことでございましょう!』

「……………………」


 見てなかったよね、と言われたらまず、あのダイヤモンドダストのことですかと確認するのが自然な回答ではないだろうか。声が揃っているのもおかしい。


「…ふえぇっ」

「泣くな。誰のせいだと思っている」

「私のせいですよおおおおおお」


 よりによって。

 よりによって、濃厚な口づけシーンを同志を含む大勢の前で晒してしまったのだ。ワンチャン、魔獣達や高密度のダイヤモンダストに阻まれて見えなかったという結果を期待したのに。


「エリア統括者殿っ、どうして泣かれてしまったのでしょう、自然な感じで否定したというのに!」

「ふっ、ローリ殿。君はこの程度のごまかしが神に通じると思うのかい?」

「なるほど流石は神ですな!!」


 あの人達、せめて内緒話するくらいの気遣いはないんだろうか。


 


 だが、このザ・マイペースな同志達や、私に怒っている護衛や魔獣達の反応はまだマシな方かもしれない。

 私は、感動しているのか何なのか、まだ泣いている人々の方を伺った。




つづく

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