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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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僕のだから嫌です!!

「ほら、あまり魔力をあげるとザコルまで昏倒しちゃうかもしれないじゃないですか」

「僕はあなたの魔力を相当溜め込んでいるはずです。簡単に昏倒するはずがありません」

「でも、ザコルも闇の力が減ってるってジョジーも言ってましたよ。その闇を補うために魔力使い込んでるかもしれませんよね。だから私に」

「フン、そんなに言うならこの場で僕に補給でもしたらどうですか」

「もー、またそんな強がり言って…。別にいいじゃないですか手くらい」

「嫌です。ミカに握らせるくらいなら僕が昏倒すればいいんです」

「昏倒なんかしたら問答無用で公開補給しますからね? それでいいんですね?」


 ずい。


「か、構わないと言っているでしょう! 近い! 離れてください!」

「いつ昏倒するか分からないからここで控えてるだけですよ。離れたら意味ないでしょ?」


 ずいずいぐいぐいつんつんつん。


「ぐうやめろ頬をつつくな離れろと言っているだろうが!」

「ほらほら寝てる人の横でイチャつくのやめろって。真面目に心配する気あるんすか?」

「ザコル殿、俺が代わりましょう。ミイ殿のお見立てでは俺も神徒の素質があるとのこと。光の力とやらをお分けできるかもしれません」

「確かに! でも大丈夫かなあ、タイちゃんの魔力量的なものもよく分かんないし…」

「タイタを昏倒させるくらいなら僕が昏倒します!!」

「もー、兄貴はそればっかじゃねーか。もう何時間手ぇ握ってんだ、いいから姐さんかタイさんに代わってもらえって」

「嫌です!! ミカもタイタも僕のだから嫌です!!」


 ぐふう。タイタが昏倒した。


「ねえ父様が代わろうか?代わろうか?」

「ジーロ兄様を巻き込んだのは僕ですから。父上はあっちに行ってください」


 すーん。


「なんでだよお! 僕なら元気だしきっと魔力もたくさんあるよお!」

「そう思うなら母上の手でも握ってやればいいでしょう。あっちは父上と違って消耗しているでしょうし。父上と違って」

「うわああんどうして二回も言うんだよお!」

「大事なことなので」


 トントン、ガチャッ。


「ジーロ様!」

「あれ、ミリナ様。お風呂に案内してもらったはずじゃ」

「ジーロ様が倒れていただなんて聞いておりません!!」

「えっと、それどころじゃないかと思いまして…。とりあえず気分転換にお風呂かなと。お風呂上がりには蜂蜜とホットミルクもお持ちしますからね、ぜひイリヤくんとゆっくり」

「…前々から思っておりましたが、ミカ様は私に過保護になさいすぎます! 大体ミカ様だってお疲れでしょう!? あなた様こそ先に入浴なさるべきです!!」

「私なんて別に大丈夫ですよ、一日や二日、清拭で十分」

「何をザコル様のようなことをおっしゃっているのです! ミカ様がご用意なさったお風呂ですのよ!? 全く…ほら、みんな、入ってちょうだい」


 ぞろぞろ、魔獣達とイリヤがジーロが寝かされている部屋に入室してきた。一気に部屋が狭くなる。


 ミイミイ!


「あっ、ミイ! ねえ少しは回復してる? ザコルが何時間も手を握ってるんだけど、一向に目を覚ます様子がなくて」


 ミイミイ、ミイミイ…

 ザコルと浄化、相性悪い。ちょっとは回復してるけど、何日もかかる。


「相性って言った? やっぱり相性とかあるんだね? じゃあ私は?」


 ミイミイ…

 ミカも浄化のと相性悪い。ちょっとずつしかやれない。体液介しても朝までかかる。


「そっか…」


 ジョジーは魔力はあげられる、と言っていたがそれは嘘ではないようだ。単に超低速充電なだけだ。チープな手回し充電器でスマホを充電する並み、といったところか。


 相性が悪いだけで効率がそこまで落ちるのであれば、コマが魔力移譲現象について『魔力の高い人間と魔力を引き受けられる器を持った人間同士なら稀にある』と言っていたのもあながち間違いではないのだろう。

 貴族を除けば魔力の高い人間や引き受けられる器を持った人間は巷にそう多くない上、相性が悪ければ何日も手をつなぐか、体液を介する方法でも長時間つなぎ続ける必要がある。そんな行為を意識せずに行うことは実質不可能だ。


「えっ、じゃあ、みんなで手を握る…?」


 絵面は看取りみたいになりそうだが、と考えていると、ミリナがミイと私の間に入ってきた。


「ミイ、この中で、ジーロ様に魔力を差し上げられる子を選んでちょうだい」


 と、ミリナは連れてきた魔獣達を示した。


 ミイは、該当していると思われる魔獣の上をピョンピョーンと渡ってみせ、そしてイリヤとタイタの頭にも順番に飛び乗った。


「えっ、僕もですか? タイタも?」

「ええ、イリヤ様。我々は似た系統の魔力を持っている、ということでございましょう」

「まあ、人の中からとは言っていないのに、ミイったら」

「ねえねえ父様は? 父様は?」


 ミイは絡んでくるオーレンの方は特に振り向かず、魔獣達の中から選んだ鹿型魔獣ナラの背に飛び乗った。

 ナラは心得たようにベッドの側に行き、布団の外に投げ出されたジーロの手に頭を擦り付けて止まった。


 ミイミイ…


「ミイが言うには、相性が良くても、肌を介しての譲渡では目を覚ますまでに一時間くらいかかるそうです」

「そうですのね。では、ナラとミイ、そしてイリヤ以外の子は部屋に戻ってちょうだい。後で順番にブラッシングしてあげますからね」

「あ、待ってください。ジョジーの話も聞きたいのですが」

「ではジョジーも残って」


 ぞろぞろ。それ以外の魔獣達は大人しく退室していった。




つづく

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