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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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あ、ダダ漏れてますよ

 道場に着くと、ゴーシとイリヤはなぜか正座をして待っていた。


『ごめんなさい!! はしらこわしました!!』


 びたん。二人は揃って頭を床に当てた。ミイはイリヤの頭上で一回転する。

 あらあら偉いわ、とザラミーアはますますご機嫌そうに笑った。


「もう! ダメじゃないの! 壊したならせめてその場にいなさい!!」

「はい、ごめんなさい母さま…」


 ミリナも声を荒らげて怒ることがあるんだな、と変な感想を胸に抱いていると、ララも同じようにゴーシを叱り出した。


「今、穴熊の皆さんが直してくれているわ、二人とも後でお詫びとお礼に行くのよ? いいわね」

「はい、ミリナさま…」

「母さま、あなぐまさん、おこってましたか…?」

「…お、こってはいなかったわ。なぜか嬉しそうだったというか。でも、ちゃんと礼は尽くしなさい。これからもお世話になるのですから」

『はい。わかりました』


 ゴーシとイリヤは揃って頷いた。


 ザコルが出てきて、二人の手を取って立ち上がらせる。


「許してもらえてよかったですね。これからも悪さをした時は報告と謝罪を先にした方がいいですよ」


 うんうん、と何か満足そうに甥達に教示している。


「兄貴はいっつも叱られ待ちじゃねーすか」

「そーですよ確信犯じゃないですか!」


 あれ、サゴシがいる。あやつ、私についてたんじゃないのか。何で先に着いてるんだ。


「僕は誰彼構わず叱られたいわけではありません。ミカが叱ってくれるからいいのです」

「…そんなこと言ってると次から放置プレイ決めますからね?」

「なぜ!!」


 なぜもなにもない。これ以上変態プレイになど付き合っていられない。


「ははミカ殿、そうおっしゃらずに。一言『めっ』と言っていただければ我らが英雄の心が一つ癒されるのですよ」

「めっ!? 何ですかそのオイシイ感じのシチュは!?」

「どうして廊下でやってくださらないのですか公式聖女様!!」

「同志はまた意味分かんないことで私に期待しないでください」


 執行人にローリとカルダが加わって騒ぐので適当にあしらう。


「…なんか、ザコルおじさまっておもったよりマジメじゃない…?」

「先生はまじめでやさしいです! でもたまに『わるさ』してたのしそーにしてます!」


 ちょっぴり呆れ顔のゴーシに、なぜか得意げに叔父を語るイリヤ。そんな彼らに『一方的な謝罪に誠意は宿らない』などと言ったことも忘れたんだろうか。


「ほらあ、青少年の教育に悪いじゃないですか。悪さしてもいいけどみんなが見てないとこでやってくださいよね」

「優しいですねミカ」

「なっ、何が」


 ザコルがほのかに笑う。悪さ自体を禁止にすべきだったか…。


 くすくす。ピッタ達も笑っている。


「何だか安心するわね、お二人がいつも通りで」

「猟犬様は相変わらずね」

「うんうん、相変わらずの変態発言、いっそ癒されますよ」

「ミカ様も本当に猟犬様に甘いというか何というか」

「変態でも何でもお好きなんだもの、仕方ないわよ」


 英雄が散々な言われようである。

 ザラミーアが非常に残念そうな顔をしているが、私にフォローされても嬉しくないだろう。


「いーな、俺も女子にヘンタイ扱いされてー」

「お前は真性のドヘンタイだろが、バレてんぞ」


 エビーがすかさずズッ友サゴシに突っ込む。ドヘンタイも元気になってよかった。


「はーくやろ!! はーく!!」

「はいはい、リコもこう言ってるしちゃっちゃと始めましょう。他に誰か参加します?」


 少年少女に加え、ローリとカルダが名乗りを上げた。名乗り上げないサゴシを無理矢理メンバーに入れ、私は再びドレミファソラシドと歌い始めた。






「ミカ様の美声…! 千回でも万回でも聴いていたかったです!」

「ピッタは何言ってんの。ドレミファソラシドって言ってただけだよ。もはや歌でも何でもないし。というか四百回以上は私の喉が無理だってことがよく判った」

「最後は歌というか、まるで早口言葉のようでしたね」

「本当に。あれ以上は口が回らないんだよ」

「流石はサカシータのお子ね、まだまだ余裕がありそうだわ」

「今度は楽器を使ってみてはいかがでしょう」

「いいですね、何かないか聞いてみてもらえますか」

「もちろんですとも」


 女子達と執務メイド達は楽しんでくれたようだ。

 四百回まで残っていたのはゴーシとイリヤだけだが、ローリとカルダも二百回以上は走れていた。流石は同志でサカシータ騎士団現役、全然常人じゃない。


「サゴちゃんはどした、寝込んで体力落ちた?」


 百回ちょっとで脱落し、隅の方に転がる影を服の上からツンツンしてみる。

 まあ、百回ちょっとでも別に悪い成績というほどではないのだが、彼の実力ならもう少しいけるかと思っていたので心配になってしまった。


「す、すみません、思った以上に消耗してたぽくて」

「いいんだよ、無理に走らせてごめんね。そうだ、ザコルと毎日握手しなよ。回復早まるんじゃない」

「やだ! それ最終手段にしたい! 俺、姫様には嫌われたくないもん!!」

「やだって…。私は別に、救命措置に目くじら立ててたわけじゃないんだよ」


 急に駄々っ子ムーヴをかまし始めたドヘンタイに私は溜め息をつく。


「そういえば前も無理して走ってたでしょ、ペータに張り合って。いい? 手遅れになったら私が困るんだからね。体調悪い時はちゃんと言いなさい」


 めっ。


「……はい」

「よろしい」


 いーこいーこ、と頭巾の上から撫でておく。

 直接肌に触ると魔力を中和してしまうらしいので、私の方でも気をつけてあげないといけない。


 ゴゴゴゴゴゴゴ…。


「あ、ダダ漏れてますよザコル」

「誰のせいだと」

「俺を積極的に当て馬にしていくスタイル、惚れます」

「やだなあ。本気で心配してるって」


 むくりと起き上がったサゴシの背後にザコルがシュッと回った。そしてぴと、と首筋に手を当てた。


「え、えと。何のおつもりで」

「供給してやろうかと思いまして」

「どうして急所から」

「いつでもヤれるでしょう?」

「あーっ、そこ俺のポジだぞサゴシ!」

「…俺が言うのもなんだけどお前も結構なヘンタイだからなエビー。あ、タイさんはこっち見ないで! 俺なんもしてませんから!!」


 男子がみんな仲良しで何よりだ。


「ミーカ、まだはしる!」

「リコは途中でどっか行っちゃったじゃない」


 結論から言うと、二歳児にシャトルランは無理だった。体力以前に、ルールや目的を理解する力と集中力が足りない。見事なスタートダッシュを決めたものの、すぐに遊び走りし始めてしまい、脱落したリコである。


「じゃあ一回だけ私と競争しよっか。あっちからあっちまで。終わったらお昼ご飯ね」

「うん! しゅる!!」

「おれもやる!!」

「僕も!!」


 子供達がわらわらと集まってきた。


 そらミカ坊が走んぞと揶揄われつつ、私はチートな子供達と遠慮忖度なしのかけっこに興じた。




つづく

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