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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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殴り込みに行きましょう

すみません…

投稿予約一日間違えて設定しておりました

ちょっと遅くなりましたがご査収ください


毎日読んでくださってる方々へ

いつもありがとうございます!

「では、食後は父の元へ殴り込みに行きましょう。全員で」


『は?』


 ザコルの提案に、全員の声が見事にかぶった。


「えっ、全員で? ていうかイアン様じゃなくて?」

「誰がそんなことを言いましたか。というか長兄の尋問は打診はされましたが、受けてやる義理などありません」

「またそんなこと言って。困ってるんだから助けて差し上げればいいじゃないですか」

「大方、母もあのダイヤモンドダストで調子を崩しているだけでは?」

「あっ、確かに…」


 もしもだが、サゴシと同じように闇の力だけが巡っているような体質であれば当然ダメージはあったはずだ。接する限り元気そうには見えていたので瀕死というわけではないだろうが…。


「母? ザラミーア様がどうかしたんすか」

「ご体調を崩されているのですか?」


 エビーとタイタが反応する。サゴシはどうしたもんかという顔で黙っている。


「僕の闇の力は、母から継いだもののようなのです。ミイもそう言うなら間違いでしょう。魔獣は基本的に嘘をつきません」


 ザコルは直接魔獣達と言葉は交わせないが、私と違い、彼らとは長い付き合いだ。戦線を共にする中で、彼ら魔獣の性格や振る舞い方はよく知っているのだろう。


「ザコル。ザラミーア様のことまで言わなくてよかったじゃないですか。テイラー勢には関係のない個人情報ですよ」

「大アリです。僕の力を知っていて黙っていたとすれば、父はもちろん母も同罪です。周りを巻き込む可能性のある力を持った者を、事前の告知もなく国の機関やテイラー伯に押し付けたんですよ。配慮などしてやる段階を超えました」


 ゴゴゴゴゴ…。遠慮忖度配慮なしの殺気がダダ漏れている。


「思えば、義母が実母に対しあれほどまでに過保護にする理由も分かった気がします。それでいて僕ら双子を野に放っていた罪は追及すべきだ」

「ちょちょ、待って待って。ザラミーア様は無自覚だっていう可能性もあるでしょう、イーリア様だって元々アレな感じですし。ほら、まずは冷静な話し合いを」

「僕は冷静ですよ」


 ニコォォォ…。ダメだ、全然冷静じゃない。


「ザコル」

「何ですか」


 若干語気を強めれば、若干つっけんどんな返事が返ってくる。


「あなたの苛立ちは理解しましたけど、みんなを巻き込むのはナシです」

「なぜですか。これは僕個人の問題にとどまりません。場合によっては僕に対しても何らかの処断が必要です」

「テイラー側の証人として同席させるつもりですか? それでもこんなには要らないでしょ。明らかに人見知りなお父様に対する嫌がらせですよね」

「いつまでも子供じみたことを言って礼を失している方が悪いんです」

「そう思うなら同じレベルに成り下がらないでください」


 む、ザコルがこちらを睨む。


「一人で行ってきなさい」

「ですが」

「聴こえませんでしたか。まずは一人で行って、ちゃんと親子喧嘩してきてください。私達がいては、あちらも話せないことがあるでしょう。私達に明かすかどうかは、あなたが後で判断すればいいことです」

「しかし」

「あなたはもう子供じゃないでしょ。いい大人のつもりなら聞き分けなさい」


 めっ。

 人差し指を彼の目の前に出す。


「……………………」


 ザコルは黙ってしまった。


 ちょっと偉そうに言い過ぎたかな、と後悔したが発した言葉はもう戻らない。

 だが若い子をぞろぞろと引き連れて親に物申そうなんて普通に変だ。オーレン達はもちろん、連れて行かれた方も困る。


 ぎゅ。


「?」


 なぜか、差し出した人差し指を握られた。


「愛おしい」

「なっ、何が」

「分かりました。聞き分けます。ミカは部屋に帰って先に寝ていてください」

「あ、はい。分かりました」

「では行ってきます」


 ザコルは私の指を離し、立ち上がる。そして振り返ることなく部屋を出ていった。





 後には私と若い子達だけが残された。


「いやー、マジ猛獣使いですね姫様は!」

「何が…。やっぱ偉そうだったかな」

「全然、言ってくれてよかったすよ。こんなワケ分からん状況で連れてかれても困るとこだったんで」

「ザコル殿、嬉しそうでいらっしゃいましたね」

「なっ、何が」

「姐さんに叱られるために悪さしてるようなもんすからね、あの人」

「すげえな、今の全部ブラフ? マジもんの変態は仕込みが違うわ」

「違う、そんな罠にはかかってない、かかってないよ私は!」


 変態プレイに付き合ったつもりはない、と何度も釈明したが、生ぬるく笑われるだけだった。





 ◇ ◇ ◇





「で、君だけで殴り込みに来たのかい」

「ええ。一人で行けとミカに叱られましたので」

「そう。何か、嬉しそうだね」

「良識ある人に躾けてもらえる機会は貴重です」

「……僕達に良識が無いと言いたいのかな」

「ええ。だから殴り込みに来たのです」


 僕は真っ向から父を睨む。


「えっと、冷静に頼むよ」

「僕は冷静です」


 いきなり殴りかからなかっただけマシだと思って欲しいくらいだ。

 父は執務室に一人でいた。何か仕事をしていたわけでもないようで、一人でただ茶を飲みながら座っていた。

 昨日、ミカが都合のいい時に話を、と申し込んで父が指定したのは二日後、つまり明日の夜だ。正直忙しそうにも見えないのに、どうして時間を置く必要があるのか。全くもって理解ができない。


「で、君は何が聞きたいのかな」

「僕とザハリの躾に関して。具体的には、僕らが継いでいる闇の力、精神に感応する能力の扱いに関してです。どうして管理を怠ったのかを聞きに参りました、父上」

「管理か…。自由に育ててもらってラッキーだなんて、君は思わないんだね」

「思いません。僕という危険人物を領外に放った理由をお聞かせ願えますか」

「危険人物として領内に閉じ込めておけば君は満足だったのかい?」

「論点をずらさないでください。何のつもりですか? 今は個人的な満足度の話などしていません。僕がいつ周りに迷惑をかけるとも分からない力を秘めていることくらい、父上には判っていたことでしょう。何せ、全て数値で視ることができるのですから」

「……やっぱり、君は知っているんじゃないか。知る必要がないなんて言っていたくせに」

「仕事で出入りする場所は隅々まで確認しておくのが僕なりの流儀です」

「そうか…」


 父は観念したように、執務室の机に肘をつき、組んだ手に額を乗せた。


「ミカさんには、機を見て明かそうと思っていたよ」

「先に知れてよかったです。これ以上彼女に僕の管理を押し付けるのは心苦しいですから」

「彼女は、魔獣から聞いたことを君にそのまま話したんだね」

「僕が吐かせたのです。彼女としては、闇の力の何たるかを充分に理解できるまでは僕にも黙っておくつもりだったようです」

「慎重だね。君を刺激したくなかったのかな」

「まさか。彼女は僕の利になるかどうかを見極めようとしていただけです」

「彼女は君の親でも何でもないんだよ。どうしてそう言い切れる」

「信用度が違います」


 一瞬、父が黙る。


「…君は、生まれた時から一緒にいる僕らよりも、会ったばかりの異世界人を信じるんだね」

「年月だけを見ればそうとも言えるかもしれませんが、今までに僕と話した単語数で言えばミカの方が多いくらいではないですか。それくらい、彼女は僕を含むこちらの人間ときちんと向き合っています」

「まるで僕が家族や民と向き合っていないかのような言い草だ」

「そうとしか見えないのでこうして話しに来ました。対してミカの方は接していれば非常によく解りますから。当たり前のように人を守ろうとし、自らが動くことも、身を差し出すことも一切厭わない。行動には一貫性と礼節があり、無駄に秘密は持たず、無駄に人を詮索もしない。僕に限らず、彼女が黙るのには理由があると誰もが理解しています。だからこそ、シータイは数日で彼女の手に落ちたのですよ」

「僕はね、慎重なんだよ。信用できるかどうかなんて、数日では決められない」

「数日、ですか。父上にとってはそうでしょうね」


 僕は軽蔑を眼差しに込めた。


 ミカがこの領に入って、もう二ヶ月近くにもなる。交流の期間が短いのは自分が避けていたせいだろう。


「その目、やめてくれない…?」


 身勝手な抗議には無視で返す。僕は息をついた。


「で、話を戻しますが、僕は父上がミカに慣れたかどうかの話をしに来たのではありません。どうして、僕ら双子の能力を知りながら放置していたのかを訊きに来たのです。ミカの護衛としてではなく、第一王子殿下直属組織、暗部における幹部の一人として」



 父は再び黙った。




つづく

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