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78.筋肉系料理長

 お昼ご飯を自室で頂いた。料理介助をしてくれようとするので、慌てて止める。貴族じゃないのよ。むしろそんな作法を知らない。食べ終わったら厨房へ自分で持っていくからと追い出して、ホッと一息だ。アルバートも自分の昼食を摂りにいった。後で厨房で落ち合う約束をする。

 スープと肉とパン。

 先日アルバートと昼食を頂いたときよりはやはりレベルは落ちている。まあ、領主とともに食べる予定だったのだ。当然だろう。つまりコレが日常だ。

 領主の屋敷の料理もこんなもんなのかと認識を改める。

 これは、パテラコロッケ、ピーネソースがけはかなり良いのではないだろうか。あの日の昼食会のメインも単なるソースのかかった肉だったのだ。ソースは肉の脂とチカの実漬けを合わせただけのものだった。タマネギもどきのキリツアのチカの実漬けソースとかにしたら美味しそうだと思う。それくらいなら提案してもよいだろう。フルーツなんかを事前に漬けておくのも良さそうだ。焼肉のたれのパッケージを思い出す。りんごたまねぎ桃なんかの絵も見えた気がする。はちみつとか入ってそうだし、割と簡単に作れそうなんだが。

 盆にテーブルの上のものをすべて乗せると、厨房へと向かった。


 昼食の提供を終えた厨房は少し空気が緩む……ことなく怒号が飛び交っている。

 片付け競争をしていた。なんだこいつら。

「まだフライパン洗ってるだとぉ!? 遅い遅い!! だからといって焦げ付き残すような手抜き仕事するなよ」

「皿洗いがまだ半分!? 食器が高ぇからって割れるのにビビってんじゃないだろなぁ!」

 ざけんなお前より先に終わらせてやるよなどと、罵り合ってるのは主に二人。他の人達は黙々と片付けをしていた。

 なんだこいつら。

「おう、嬢ちゃん! 食べたもんはそこに置いときな」

「よろしくお願いします」

 盆ごと差し出すと、すり抜けながら掻っ攫われた。口も動くが手も倍速で動いてる。

 身体強化の耳飾りをしていた。

 腕もゴツくてガチムチしてる料理人が耳飾りしているのはなんだか可愛かった。

「おう、これか? いいだろ。今までは手首にしてたんだが、どうしても水に濡れるんだよ。劣化が早くてなぁ。その点耳飾りは水に濡れることもない。良いもんを作ってくれたよな!」

「それはどういたしまして」

 料理人が疲労軽減でなく身体強化なのが謎なのだが。

 シーナの返事に、ん? と首を傾げるが、すぐさま煽りの言葉が飛んできてうやむやになる。

「喋ってて手がお留守になってるんじゃねぇのかぁ!?」

「はぁぁぁ? 見てみろこっちはもうほぼ終わりよぉ! お前の目はミルの種みたいに曇ってんじゃねえのか?」

 しばらくそんな彼らを眺めているとアルバートがやってきた。怒鳴り合っていた彼らもほぼ仕事を終えて、厨房はきれいに掃除されていた。

「アルバートの坊っちゃんじゃねぇか。ってことは、こっちがシーナか! お仕着せ着てるからわからねぇだろ!」

「よろしくお願いします」

 シーナに耳飾りを自慢していた筋肉ダルマがそう言うと、一緒に怒鳴り合っていたもう一人の筋肉ダルマも隣へ来た。

「なんでぇ、お前がシーナか。子どもの新しいメイドかと思った。俺は料理長のバルバトだ」

 子どもは余計だ。

「俺は副料理長のザッカス。他はまあいいだろ。未来の料理長の名前だけ覚えておけばな」

「俺がいる間はお前にゃ無理だ」

 仲が悪いような感じには見えなかったが、面倒なので無視して先に進めよう。

「夕食の準備を始めないといけなくなる前にせめて一品説明したいのでいいですか?」

 二人はピタリとやり合うことをやめ頷いた。

 やっぱりこれ、コミュニケーションの一種のようだ。


「今日はパテラを使ったコロッケを作りますね」

「まず材料を教えな、準備する」

 副料理長のザッカスが言う。

 ザッカスは黒髪で黒目。シーナの色合いによく似ていたが、顔が厳つく、ムキムキだ。可愛い耳飾りが正直浮いている。というか、料理人のくせになぜこんなにムキムキなのか?

 シーナが準備して欲しい材料を述べると、ザッカスではなくその他大勢の他のコックたちが目の前のテーブルに次々に並べだす。

「まずパテラを水洗いして、皮ごと茹でます」

 自宅だと茹でたあと皮を剥くのが熱くて嫌だったので、剥いてから茹でて、湯を捨てたあと再び火をつけて粉ふきいものように水分を飛ばしていたが、こんだけ手があるからいいだろう。

「次にお肉を切るんですけど、そっかどうしようかな」

「何がだ?」

 バルバトがシーナが悩んでいると豚系肉をどんとまな板に置きながら聞いてくる。

「ミンチにしないといけないんですけど、大変だから風の精霊で細切れにしてもらってたんですよ」

 ハンバーグのときみたいに、風を使う精霊使いを呼んでもらおうかなと思っていたら、筋肉系料理長は笑う。

「細切れにしたらいいんだろう?」

 包丁を二つ持ったバルバトの腕がバンッとまな板を叩くたびに、肉が弾ける。

 この人も身体強化の耳飾りをしている。

どんどんバンバン、まな板壊れる? と危ぶむ中、あっという間にミンチが出来上がった。

「さすが料理長ですね」

 アルバートが、ニコニコと褒める。

 シーナは、筋肉の意味を悟った。

 チャムに作ってもらったおろし金で固い白いパンをすりおろし、小麦粉、溶き卵、パン粉の入ったバットを用意し、キリツアのみじん切りとミンチを炒めておいてもらった。

「熱いですけど、パテラの皮を剥いたらキリツアとミンチに合わせます。塩コショウを忘れないでください。のちのち工夫を重ねてもらえばいいんですが、ここで香辛料を加えても美味しいと思います」

 ナツメグ系はまだ見つかっていない。むしろ料理人の腕に頼り入れたら美味しいものを逆輸入したい。

 よく混ぜ合わせたら成形して、衣をつけ揚げるだけだ。

「こんな大量の油に入れるのはやらねぇなぁ」

「油浴びたら大火傷なんで気をつけてくださいね。使い終わった油は、まあなにか炒め物などにも活用できますから捨てたらもったいないです」

「だなぁ」

「ちなみにパテラを皮ごと薄切りにして、揚げて塩振って食べても普通に美味しいです」

「ふぅん」

「さ、出来ました。どうぞ。味は薄めですが、濃いめにしてこのまま食べても美味しいですし、薄めにしてピーネなどでソースを作って掛けるのも美味しいです」

 出来上がった熱々のコロッケを、仲良くバルバトとザッカスが口に放り込んで火傷をした。




ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


いやー、メンテナンスお疲れ様でした。

なれるのに少し時間がかかりそうですがボチボチ。


ブックマークありがとうございます!


あと、花粉で死にそうになって、鬱憤ぶつけて発作的に書いた短編がこちらです。

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