41.おプレミアムなビールです
まずは自分で試してみて、味がおかしくないか確認だ。
タオルで缶を拭いたら自分のグラスへ注ぐ。
「色は問題なさそうですね」
「エール?」
ヤハトの質問に頷く。プレミアムなやつはエールだ。
「そうですね。ただ、この世界のエールといっしょにしないでくださいね〜この間酒場で飲んだのなんて飲めなくなりますよっ! 味が変わってなければ」
匂いを確認していざ参る。
「……これだぁ」
「シーナ! 早く私にも!!」
急かされて350ml缶を四等分した。
「カンパ~イ」
シーナの号令を待てずに、三人は口をつけていた。逃げないのにな。
一口飲んで唐揚げをパクリ。もう一口飲んでトンカツをがぶり。
「ビールには揚げ物ですよ〜これでもう、ぷれもるちゃんと、会えなくなるのか」
悲しくなってきた。
もうひと缶は置いておこうかと思いもしたがあまり長いこと放置すると味が落ちるだろう。そろそろ限界だ。今日飲み納めてやるのがよいだろう。
「どうですか、異世界の酒は」
「とても旨い」
「めちゃくちゃ旨い!」
「もう一本ぜんぶちょうだい」
「もうこれしかないから、みんなで分けましょう」
ええーと不満を述べるフェナを無視して二本目をブシュッといく。
「今まで飲んでいたエールは何だったのか」
「故郷はこういった嗜好品にも気を回せるくらいの平和なところなんですよ。魔物がいないってのがやっぱり大きいですかね。街を壁で囲う必要がないんです。この缶もないでしょ? 保存技術とか、すごく発達してるんですよ。発達しすぎてみんな作り方知らないんです。お店に行けば買えるので」
わりと手作りしてみようというのが好きだったから、実際やったことはなくても本で読んだり工場見学したりで知ってることもある。ウスターソースなんかがそれだ。
それでもさすがにビールの作り方は再現できない。
「終わっちゃった」
フェナが空のグラスを覗き込みながらトンカツを食べている。あまりにも悲しそうで笑ってしまう。悲しいのはこちらだ。日本のものがまた一つ減った。
「フェナ様、私、お酒が飲みたいです! トンカツに合いそうなお酒ないですか?」
「そうねぇ、バル、何か持ってきて」
ビールが終わった悲しみを消すために、今日はとことん飲んでやる!
そんなわけで完全なる二日酔いです。
客間を借りている。ただ、一回目と違い、二回三回と回を重ねるごとに部屋の備品が充実していっている。たまに借りるお部屋でなく、シーナの部屋になりつつあった。部屋はいっぱい余っているらしいし、いいのだろうが、外堀を埋められている気がする。
ワインみたいなのが来るかと思ったら、ウイスキーみたいなやつがきた。
「甘くない酒も飲めるんでしょう?」
むしろ大好物ですなので、お願いしました。そして、ビールの空き缶を慈しみながら、トンカツと唐揚げとポテトとウィスキーみたいなお酒をロックで回しまして、世界が回りましたとさ。しこたま飲んだ結果で、覚悟していた結果だが。
「あらあらシーナさん、どう? 起きられる?」
ノックに応えるとソニアが入ってきた。
「ちょっと無理かもしれないです」
頭まですっぽり布団をかぶった状態で応える。
「じゃあお水と、教えてもらったトンカツを野菜と一緒にパンに挟んだものよ。ここにおいておくわね。フェナ様たちはとても喜んで食べてたわよ」
「ソニアさんは?」
「ん?」
「ソニアさんはどうでした? トンカツ」
「ああ! とっても美味しかったわぁ。お肉の周りのはパンで作ってたじゃない? アレも初めてよ。でもそれより、ソースね。あの茶色いソースがトンカツにぴったりで。また今度作り方を教えて頂戴。多分フェナ様に頼まれるから」
お願いねと言って部屋を出ていく。昼前に出ればいいのでもうひと眠りだ。
ちょっと調子に乗りすぎて、飲みすぎた。
二度寝したらだいぶましになった。サイドテーブルにあった水を飲み、トンカツのパン挟みを食べる。
うむ、やはり旨い。パンに挟むと冷めても美味しい不思議。
ベッドをきちんと整えて、キッチンへ向かう。
「おはようございまーす」
「あら、もう起きたの?」
「はい。ごちそうさまでした」
そのまま流しで皿を洗った。ソニアは昼食の準備をしていた。
「そろそろお暇しようと思ってるんですが……」
「フェナ様はお庭にいたわ」
お礼を言って庭へ向かう。フェナは長椅子に寝そべって日光浴中だった。気温は低いが日差しが暖かい。
「フェナ様ー、私そろそろ帰る時間です」
「え〜もうー?」
ごねてるけど無視だ。
「それで、ウスターソース半分置いていこうかと思ってるんですが」
「えっ! いいの?」
ガバっと身を起こす。現金だなぁ。
「結構作ったけど、あれ、そんなに長持ちしないです。今月中に使い切ってほしいし」
「やったぁ! 代わりに肉半分持っていっていいわよ」
「え、半分でもかなりありましたよ……食べきれません。魔物肉とはいえ、さすがに日持ちしませんよ」
「じゃあ、うちで頼む冬支度用の加工屋に、一緒に頼んでできたやつ届ける?」
「それでお願いします!」
ハムとかソーセージとかベーコンだ。嬉しい。加工代もフェナ持ちのやつである。
「ヤハトに送らせる」
右手をクルクルと回すと、フェナの手元から赤いキラキラが飛んでいった。前に声だけシーナに届けたような魔法なのだろう。
すぐにヤハトはやってきた。バルも一緒だ。
「おはよう、シーナ」
「お前飲みすぎ」
ヤハトくん、ごもっともです。
ソースを分けて、トンカツサンドを土産にもらい、肉も少しだけもらった。残りは冬用だ。さらに瓶の酒を四本。至れり尽くせりであった。
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プレモルの工場に何度も遊びに行きました。工場見学は楽しいですね。フェナ様の家にある酒は基本プレゼントだと思います。冒険者だけど深酒しないタイプたち。




