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37.ギルド長たち

「ヤハト飲み物は?」

「んー、まだいい」

「私はせっかくだからこの世界の酒を試します」

 とんでもなく度数の強いものはないだろう。

 ドリンクは使用人の方々がアチラコチラお盆を持って歩いている。近場の人を呼び止めて、お酒をくださいというと三種類見せられた。

 果実酒ぽいやつと、少し泡の見えるスパークリング系と、低いグラスの氷と少しのお酒のもの。最後のは度数が高そうである。スパークリングのを頂いた。

 しかし、スパークリングがあるなら普通の? ワインもありそうなものだ。

 ヤハトのもとへ戻って、少し飲んでみる。そんなに度数は高くないがまあまあのお味。甘めだし、飲みやすい。もともと炭酸が好きなのでこれは嬉しい。

「よお! 結局来たのか。青がよく似合ってるな……その耳飾りは?」

 組み紐ギルド長のガングルムだった。衣装を褒めるところまでは合格だがすぐに耳元に気づかれた。

「可愛いだけの耳飾りです。糸も、単なる色糸です。可愛いでしょう?」

「ううんんん、組み紐ギルド長としては返答に困るな」

「索敵の耳飾りのような偶然は産まれませんよ。あれはたまたま本来の組み紐(トゥトゥガ)も真っ直ぐ糸の色を交互に編むだけだったから、そのままくるくる巻いただけなんですから」

 そうかと、ガングルムは唸る。

「あれくらいの効果がある物がもう一つ二つあれば、業界もぐっと賑わい出すんだが」

「多くを望みすぎるのもよろしくありませんよ」

 なんてことを話していると、後ろから声をかけられた。

 ガングルムの顔がきゅっと引き締まる。

「初めまして落とし子(ドゥーモ)のシーナさんでいらっしゃいますよね?」

 でっぷりとした人好きのする笑顔を貼り付けたおじいさんと言うには少し早いくらいの男性だ。頭髪がさみしげだが、口元には立派なポワロヒゲがあった。というか、まんまポワロのオジサマだ!

「わたくし、商業ギルドのイェルムと申します。いやぁ、索敵の耳飾り、あれは本当に凄い代物ですね。わたくしのところに護衛がいるのですが、魔力使用量の少なさに本当に驚いておりましたよ」

 ガングルムの表情の理由がわかった。これが噂の商業ギルド。

「この度のフェナ様の獲物も、シーナさんのためにだとか」

 そんな話になっているのか!?

「いやぁ、稀代の精霊使いとして名高いフェナ様の覚えがめでたいとは、素晴らしいですね。今後ともぜひぜひ新しい商品開発とともに、組み紐(トゥトゥガ)以外にも何か故郷での面白い商品アイデアがありましたらぜひぜひご相談いただきたいものです」

 この人、商売熱心さんだぁぁ!!

「索敵の耳飾りを褒めていただいてありがとうございます。あれは本当に偶然の産物で。故郷とは仕組みがかなり違うので、役にたてるものは難しいと思います」

 面倒くさいことはお断りである。

「そんなご謙遜を。フェナ様がシーナさんに料理を作らせているという話を小耳に挟みました。なにか素晴らしい調理法があったりするんですかねえ」

 だーれだ喋ったの。店の者か? いや、奴らマヨネーズ同盟は、卵の価格が高騰することを恐れていたから違うはず。あるとすれば、あの山のようなイノシシを捕まえたときか。そう言えばガングルムがフェナがシーナのために肉をとってあるとかなんとかそんな話をしていた。

「料理、ですか? こちらの世界の調味料や野菜は、私の世界のものとだいぶ違いますのでわかりませんね。鶏肉とウサギ肉に飽きたという話はしたことがありますけど」

 オホホホホと笑ってごまかす。どんな話をしたのかわからないから、もう無駄なのかもしれないが足掻きたい。目をつけられるのは困る。

「確かに、この時期にでもならないとなかなか鶏肉とウサギ肉以外は出回らねぇなあ」

 またもや、新しい人物の登場だ。

「おう、ビェルスク。今年は獲物が大量だってなぁ」

「この時期に名の通った冒険者がシシリアドに多く滞在していたから、ラッキーだった」

 解体の現場にいた冒険ギルド長だ。ガングルムもでかいが、ビェルスクもでかい。

「おめかししたらずいぶん印象が変わるなぁ。それなら酒のんでても問題ないな!」

「この世界の暦に換算して二十四なのでお酒はしっかり飲めますっ! むしろ好きです」

「こないだ門のところであったときは十三、四に見えたもんな」

 えええ、それはさすがに誇張が過ぎるだろう。

「お若く見える種族なのですねぇ」

 イェルムが羨ましいと笑う。

「そんな若く見える方が大金を手にしたと知れたら、心配ですねぇ。もしよかったら、商業ギルドで資産の運用などもしておりますから、気になりましたらご利用くださいね」

「おいおい、おめぇのとこのその運用が一番怖いんだって」

 ガングルムが言うとビェルスクも頷いた。

「儲かると手数料をしこたま取って、損したときにはご愁傷さまで済ませるってぇ噂だぜ」

「こちらも商売ですからねぇ」

 タヌキとキツネ、いや、タヌキとゴリラとゴリラが笑い合ってた。

 ふと、ざわざわと人の話し声が絶えなかったこの空間が、ピタリと時を止める。人々の意識がある一点を向いた。

 奥の扉が開かれ、男が現れた。

「領主様だよ」

 ヤハトの囁きが耳元でした。



ブックマークありがとうございます。



タヌキとゴリラとゴリラです。

わりと大柄な人が多い土地。

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