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249.フェナとの再会

「次は俺も出るからシーナと一緒にいられないけど、フェナ様すぐ帰ってくるだろうし、フェナ様のお部屋でシーナも一緒にいたらいいよ」

組み紐(トゥトゥガ)も編まないとだしね」

「ヤハト!」

 軍議に来ていたアルバートが近寄ってくる。

「みんな怪我はないか?」

「おう! 俺は全然平気。魔物相手だし、素材取りでもないから手加減する必要ないしな」

「シーナはフェナ様かヤハトと一緒にいてくれ。私はヴィルヘルム様と行動するから」

「うん、気をつけてね」

 本当は行かないでくれと言いたいが、そんなわけにはいかないのはわかっている。あとでラコにふりふりしてもらおう。

「ヤハト! どんなもんか教えろ」

 ダーバルクが、ヤハトを手招きするので、シーナも行こうとしたら止められる。

「シーナ、君はフェアリーナが来るまで私といなさい。どうしても経験のあるヤハトたちが皆に情報を与え、次は出撃することになる」

 とにかく邪魔になるのは嫌なので、言われた通りに動く。

 まずは四交替で余裕を作り、敵の目的と魔物の動きの仕掛けを探るための別動部隊を作ると言う。

 部屋の中で相談が終わったところから、部屋へ移動していた。

「疲れているだろうが、フェアリーナが帰ってくるまでは我慢してくれ。食事が取りたければ【万緑】と【常緑】の食堂が開放されているが、君は私の食堂で自分で作るならそれでもいい……まとまったなら部屋に戻る」

 エセルバートやヤハトは元気だったが、他の神官はかなり疲れているように見えたし、状況が思わしくないのはよくわかった。二交替で魔物を迎え撃つのを、半月近く行っていたのだ。

「よし、サンドウィッチ作ろうかな」

 エセルバートの食堂を借りて、マヨネーズをたっぷり使ったハムタマゴと、照焼チキンサンドだ。葉物は不足しているらしくここにはなかった。

 皆自分の仕事を持っているので、一人黙々と作り続けた。魚があればタルタルも作ってフィッシュサンドも美味しかったろう。あとは甘いもの。材料があって簡単にできるのは、プリン。喜ぶだろうし作ることにした。

 割れてもいいカップを借りて、蒸しあがったところに、厨房の向こうの食堂が騒がしくなった。

 ん? と思うとラコがシーナの肩に乗り、頬ずりしてくる。

 食堂に顔を出すと、フェナとエセルバート、そしてジェラルドがいる。

 揃い踏み過ぎて出て行くのが躊躇われた。最初に気づいたのはフェナだった。たぶんシーナの魔力で気づくのだろう。

「なんだかいい匂いがする」

「サンドウィッチ作ってました。プリンもできましたけど、まだ冷えてないです」

「私が冷やすから持ってきなさい」

 これは全員食べるやつだ。

 神官たちが運ぶのを手伝ってくれた。プリンは五つ作ったが、フロランタンを美味しいと言ったならジェラルドも食べるだろう。

 トレーにお皿とスプーンとプリンを三つ乗せる。

「こんなに早く、またサンドウィッチを食べられるとは思わなかった」

「初めての味だ……フロランタンといい、シーナは――」

「フロランタンとは!?」

「なぜジェラルドがフロランタンを食べている」

 大人が食べ物で揉めている。

「とりあえず食べきってください」

 話が進まない。

 エセルバートとジェラルドにはサンドウィッチをとったりするお付きの人がいる。フェナにはいつもバルがついていたが、今は出ているのでシーナがやろうと側に行けば、顎をぐっと掴まれた。

「眠れてないな?」

「まー、眠れませんね」

「困ったものだな……シーナは食べたのか?」

「残ったら食べるからいいですよ」

「座って食べなさい。タムル、お茶を」

 当然のように命じて、それに従うタムル。神官に囲まれて並んで食べるのは慣れだが、軍の騎士たちに囲まれ、なんだこいつはの視線にさらされながら食べるのはちょっと嫌だ。

「いや、後で……」

「いいから座りなさい。他の者は下がるように。ジェラルド、お前の周りのも出て行かせろ」

 一方的な命令にムッとする騎士たちだが、ジェラルドが手を払うと大人しく出て行った。

 お腹は空いてきていたので、遠慮なく食べることにする。

「で、そろそろ説明が欲しいな、フェアリーナ」

 チラリとシーナの肩を見る。

 ラコのことだ。まあ、ジェラルドに気づかれたのだから、エセルバートも当然気づくだろう。

「これは、精霊の塊だ。見たことないか? 森の深いところにたまにいるんだが……まあ二人はそんなところには行かないか」

「見たことはないな」

「書物では読んだことはあるが、見るのは初めてだ」

 ジェラルドとエセルバートの周りをふよふよと飛んでいるラコを、二人は目で追う。

「別に害はないからいいだろ」

「あのシミを作る魔物、ばくっと食べてましたけどね」

「あの大きさのものを食べるのか。すごいなラコは」

 ちょいちょいと手招きをして、フェナはラコを撫でくりまわしている。

「魔物を食べるのか?」

 便利だなと呟いている。

「食べる? 精霊の塊なんだよね? それが食べる??」

 エセルバートの方がまだ納得がいってないようだ。

「それで、どちらの精霊なのだ?」

 ジェラルドがとうとうその質問を投げかける。

 シーナはチラリとフェナを見て、フェナはシーナをじろりと睨む。エセルバートは頭を抱えた。

「君は一体どれだけ特殊なことをすれば気が済むのだ……」

「まあ、道中シーナについていたのだから、シーナのものだろうな」

「どうやって手に入れたかは黙秘します! あと、できれば内緒で……私は平和にシシリアドで暮らしたい」

「フェアリーナが触れるのはシーナと魔力の色が同じだからか?」

「たぶんな。まあ、シーナの守りにもちょうどいいだろう。それより、今後の話だ。魔物とやり合っていると、たまに人を見つけることがあるんだ」

「人だと?」

「たまに、だがな。あんな魔物の群れの中にいて生きていられる人間なんて、怪しいことこの上ない。捕まえようにも魔物が多すぎてな」

「ならばまずはそれの捕獲だな。人員に余裕ができた。フェアリーナが出るときに詰めよう」

「少し様子を見て、明後日の夜あたりかな」

「ではそのように。シーナ、プリンおかわり」

「私も是非いただきたい」

「シーナ、私にもね」

 フェナにジェラルド、そしてエセルバートまでお代わり要求とは。どうしたらいいのだろう。

「えー、と。あと、二つしかありません……今作るので待っててください。二つは置いておきます。少しの間くらい待てますよね?」

 ね、にだいぶ力を込めたら、三人は大人しく頷いた。

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


ブクマ、いいねありがとうございます。


久しぶりのメンツと合流。


9月始まりました。

やっと書ける〜一人きりの時間が2時間くらい欲しいんですよね〜昼間に。

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