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228.神殿教室見学とヘアクリップ

 冬のこの時期に指名依頼をして狩りに出ることは異例で、隠していても人の口に戸は立てられない。しかも、指名がフェナたちに加えて【暴君】と【青の疾風】、さらに流れのわりと有名な冒険者に領主の精霊使いとなれば、街中で連日噂がされている。

 街がざわついていて、あまり外出をしてくれるなとわざわざ冒険者ギルド長のビェルスクが家にやってきて、さらにガラまで言うので、しばらくは家に籠もることにした。

 そんな中、久しぶりの神殿教室である。今回はお休みするつもりだったのだが、マリーアンヌの側仕えが同行してくれないかと頼みに来たのだ。

 流石にこれは断れずに、マリーアンヌの護衛の一人を追加した三人で神殿教室に向かった。

 側仕えがローディアス宛の書状を、教室にいた神官に渡すと、やがてローディアスも現れる。

 授業中は彼らは部屋の隅の方で見守っていた。

 ちなみにシーナは聖書は読めるようになった。丸暗記だが。発する言葉と文章が紐付けられないのは本当にキツイ。

 単語を覚えることに始終していた。

 計算の時は教師と一緒に教える側に回る。街からやってきている子どもも多く、彼らも真面目に取り組んでいる。

 食事の時間になったら、側仕えたちは部屋を出ていく。ローディアスに手招きされて、一緒に神殿の奥に誘われた。

「領主夫人が神殿教室に興味を持たれるとは、驚きでした」

「今後のシシリアド発展を見据え、平民の力を底上げするための一助になればとのお考えです。ただ、まったく手探り状態でして、そんなときシーナさんから神殿教室の存在を漏れ聞いたのです」

 なんか上手い風にまとめられていた。

「まずは情報収集をすべきかと思い、シーナさんに同行していただきました」

 今までのやり取り全部なくなってる。まあ、そんなものか。

「そうですか。素晴らしい志でいらっしゃいますね。神殿としても、我々の力の及ぶ範囲でお手伝いさせていただきます」

 さすが元お貴族様だ。

 力の及ぶ範囲でしか、しかも、お手伝いしかできませんよって牽制してる。

「規模とかで、神殿のここだけでは賄えなくなりますよね〜」

「そうですね。収容人数は、詰めて座っても百人くらいが限度です。さらにその場合は教師役を増やさねばなりませんね。あとは、昼食を出すまでがこの神殿教室ですので、食料の備蓄や、調理の人員の確保でしょうか」

「新しく場所を作るのも大変でしょうね。シシリアド今空いてる場所ってないでしょうから」

「人が集まりすぎると対応に困りそうです」

「今シシリアドにいる子どもって何人くらいなんでしょうね」

「戸籍の管理は領主様の領域ですから……それに、子どもの出生登録をしていない者たちもたくさんいることでしょう」

 ここの税収は基本売買があった場所、家賃収入なども含めて、とにかく金を稼いだところからというわかりやすく、そして杜撰な方法だった。

 ただ、税金の支払い時には、嘘をつけないよう魔導具で嘘をついたらわかるようなものがある。【審判の業火】のもう少しマイルドなものだ。ガラも月の売上報告のときにそれに触れて嘘偽りがないことを証明していた。

 そこまで穴だらけではないようだ。

「もう少し詰める必要がありますね。もし神殿教室をするとなったとき、必要な備品は石板と計算機、聖書などの手本ということでよろしいでしょうか?」

「そうですね。とりあえずは。なにぶんシシリアド中のすべての子供たちといったような大人数を相手したことがありませんので」

 子どもって、何人くらいいるんだろう……おしゃべりできるようになっている四歳からとして、八歳前までの四年間だ。

「何年か先に実現したいといった計画ですので、また何度か教室を見にお伺いすることがあるやもしれません。その際はまたよろしくお願いします」

「読み書き計算は出来て損はありません。事業が上手くいくことを願っております」

 これは、ローディアスが何枚も上だろう。

 そのまま護衛含め三人で神殿を辞して、シーナは午後から商業ギルドだ。

 ヘアクリップができたらしい。

「シーナさんいらっしゃい! 職人たちも揃っていますよ」

 二階の会議室に通される。

「こんにちは、シーナさん」

「また新しい流行になりそうですね」

 五人の職人たちがヘアクリップを前に組み紐で作った飾りを並べていた。

「さあそれでは始めましょうか」

 本当にもう、プロたちによる商品開発会議のようになっている。

 正直シーナはいらない状態だ。

「手始めに売れ行きのいいウメ飾りの色展開をメインにしようかと」

「クリップなので、この垂れ下がる系とは少し相性が悪そうです。どうしても指でつかむ部分には装飾ができませんから」

「花の部分を大きくしたり複数つけて、この指で触る部分も覆い隠すようにすればいけませんか?」

「そうなるとコストがかかりますね」

 物怖じせずに案が次々出てくるのは良いことだ。

「髪の長い女性の方が多いので個数は絞るべきですかねぇ」

 イェルムのセリフに頷く面々。だが、シーナはすかさず反対した。

「これも複数付けですよ、イェルムさん!」

「はっ!! 簪2本差しのときの!」

 百聞は一見にしかずだ。自分の頭でやってみる。

 見本においてあった簪を自分の髪の毛にくるりと差し込む。更にクリップを真上からつける。

「ほら、可愛いでしょう?」

「ああ、我が商売の女神よ!!」

 両手を握りしめてイェルムが感動している。

「小振りなものと、クリップ一つで十分なものとを作るのもいいかと。クリップの方が簪より値が張りますか? やっぱり」

「そうですねぇ、簪よりも技術料が高くなっておりますね。この、紐を通す二つの穴を事前に作っておいてもらうところとか。ただ、シーナさんのその髪型はとても可愛らしいので売れると思います。クリップを小さなものも作ってもらいます」

「まず、フェナ様にプレゼントしましょう! あと、この案が出るきっかけになった、【青の疾風】のナナさんにプレゼントしたいです」

「緑色の髪色の、ショートヘアの方ですね。髪色に合うものを準備いたします。春まで短い期間ですが、また今回も王都で一気に流行を巻き起こして参りますよ!!」

 春になったら出発は決定らしい。元気な人である。


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ブックマーク、いいねありがとうございます。

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お盆ですね……暑い!!

少しマシなとこに来たつもりですが暑い〜!実家で書くのはなかなかハードルが……


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