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【書籍化】精霊樹の落とし子と飾り紐  作者: 鈴埜


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220/280

220.テルタの食べ方

 組み紐(トゥトゥガ)師としてはわりと順調だった。流れの冒険者が多くなっているということもあり、新しい顧客を得ることができた。

 冬の流れの冒険者相手の組み紐(トゥトゥガ)師というのも、悪くないかなと思い始めている。

 気づけば十二月も終わりに差し掛かっていた。

 チャムの工房から例のものが出来上がったとの連絡をもらって、届け先をどこにするか悩んだ。

 以前、食器を届けてくれた時は、一緒に食器を探しに来て、アルバートのカップまで買っているからこれはもう付き合っているのだろう。ならばアルバートがいたら部屋に入っても問題ないと考えた店の人は家の中まで届けに来てくれた。

 しかし、そうでないとなると、シーナの家の中まで商品を届けてくれる者は皆無だ。皆玄関先で話を終わらせる。

 今回チャムの工房に依頼したものは、多分結構重い。

 結局試すのはフェナの屋敷なのでそちらに届けてもらうことにした。

 そして、それに必要なものを確保に走る。冬のこの時期に漁に出る漁師はゼロとは言わない。だが、釣果は言うほどない。そんな中にもシーナはアレの姿を見つけたのだった。


「おじゃましまーす!」

「いらっしゃい、シーナ」

 シアが出迎えてくれた。

「チャムがこちらに届けてくれてると思うんだけど……」

「黒いあれ? あんまりにも重くてお庭に置いたまま」

「んん? そんなに重いの?」

「私は無理だった」

 まあ、シアでは無理だろう。

 庭に置いたままのもの。シーナが思っている以上に大きい。

「これは厨房でできないか。コンロ壊したらやだし。フェナ様ぁ〜!」

 フェナの部屋に突撃だ。

 で、美味しくできるかもしれないからとなだめすかして庭に土魔法で窯を作ってもらい、さらにこの重たい、たこ焼き器を乗せてもらった。

 そう! 今日はたこ焼きを作る!

「何この重たいやつ」

「私もこんな重くなるとは思いもしませんでしたよ……」

 持ち上げられるけど、運び続けるのはごめんな重さだ。

 そんなこんなで下ごしらえを始める。

 まず、テルタを塩でよく揉んで洗い、足の部分だけを茹でる。よく食べてたタコは赤くなったが、テルタは白いままだ。

 また、自宅から煮干しを粉砕したものも持ってきた。あとはリーキに似たシャム。紅生姜がないのは残念だが仕方ない。

 粉と水、卵で生地を作り窯に火を入れて始める。

 油敷きなんてものはないので、もったいないけど布を使う。【洗浄】があるのが本当に助かる。油汚れだろうがきれいになるのだ。

 家から持ってきた菜箸を使って、きれいに油を塗り、まずテルタやシャムを適当に入れる。五✕五の二十五個分なので、左側二列は薄く切ったソーセージを入れた。テルタ嫌がる子がおりますので。

 そこへレードルで生地をざばっと流し込む。これも豪快に。それがたこ焼き。

 その上に煮干しの粉を振りまいた。本当はカツオの粉だがまあよし。

 一緒に作ってもらった千枚通しを使ってくるくると丸める頃にはヤハトがワクワクを隠せなくなってきていた。

「俺もやりたい!!」

「じゃあ次ね。ここで、焼きムラができないように場所移動させるんだけど……テルタとソーセージ混ざったらダメだからここの二列とこちらの三列を混ぜないように気をつけて……こんなもんかなぁ〜」

 お皿に取ると、準備してもらっていたソースをかけて出来上がりだ。

「味見しますね〜、熱っ!! あーでも美味しい。口の中火傷するので、真ん中割って食べたほうが良いかもしれないです。それか、少し冷めるのを待って」

「この間のオコノミ焼きに似てるけど、ソースも美味い」

「本来はオコノミ焼きもソースで食べるんだよ。コストであの味付けになっただけ。好みでマヨネーズもつける」

 シーナとヤハトのやりとりにすぐ声を上げたのはフェナだった。

「バル、マヨネーズを!」

「わかりました」

 マヨラーたちが大変そうだ。

「ワリルさんたちも食べます? テルタが入ってる方ならすぐ食べられますけど」

 ソニアの息子夫婦たちにも勧めてみる。子どもは、今すぐ食べられるテルタに手を出した。

「美味しいです!」

 親は無理っぽいからヤハトにソーセージで作ってもらおう。チーズも入れてみることにした。アレンジが効くのもいい。ベーキングパウダーがないから、カステラや人形焼みたいにはできないかなぁなどと考えていると、ヤハトがこちらを見ている。

「何か入れてみたい食材がある?」

「いや、アルは呼んでやらなくていいのか?」

「あー、今度、孤児院でこれやってみようかなって。ソースは無理だから、チカの実漬けを出汁で割ったものにつけて食べさせようかなって。その時呼べばと。アル、テルタ食べられるかなぁ。このたこ焼き器運んでもらえる? 重すぎる?」

「風で運べばいけるけど、俺、土ないから竈作れない」

「おお……結局フェナ様か。お願いするしかないねぇ」

 冬の間に、外は寒いけどイベントとしてぶち込みたい。

 娯楽が山ほどあった世界からやってきたので、正直暇が過ぎる。

「ねえ、ヤハト……ここら辺でデートってなにするの?」

「でぇと?」

 うん、これは知らないやつ。

「恋人同士がお出かけしたり遊んだりする場所とかイベントのこと」

「え、俺に聞いてもわかるわけなくね? 一緒に飯食うか、ヤルか」

「二択……!」

 聖地でリバーシ大会はそれなりに楽しかったし、そこら辺の娯楽ゲームを揃えるか?

 このままでは毎回ベラージ翁の手記解読になってしまって申し訳ない。

 あとはアンジーやヒラウェルに聞くくらいなのだが、あそこらへんはからかわれまくる未来しか見えない。

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


ブックマーク、いいねありがとうございます。

……プールとか作ったら楽しいのに……って、流れるプールで流れながら考えてました。

日焼けはやけど。

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