219.素材部屋の片付け再び
ヒキツェウ鳥の捕獲は、アルバートがお休みの日の次の日になった。つまり、二日間お泊り決定。
その話がなぜかアルバートの同僚で、よく見かける精霊使いの来訪によって知らされ、休暇の延長がすでに得られていることを伝えられた。
朝、家の扉がノックされたので、シーナが出ようとしたら、アルバートが向かった。精霊の知らせがあったらしい。
ちょうど紅茶を淹れていたところだったので、淹れきってからお茶にお誘いしに玄関へ向かったら、すでに扉が閉められた後だった。なんだか複雑な表情をしていたが、これがフルオープンお付き合いによってもたらされたものなのだと理解してもらうしかない。
筒抜けなんです。
ヒキツェウ鳥の捕獲大作戦は大変なことになった。
一応、シシリアドに留まっている冒険者たちの見せ場でもあるわけだ。フェナは、前半はいつも通り凍らせるだけで我慢していたようだが、暇になってくるとヒキツェウ鳥を撃ち落とし始め、それを冒険ギルド長のビェルスクに怒られると、今度は冒険者たちを飛ばし始めた。そしてまた怒られていた。駆け出しの幼い冒険者たちは喜んでいたが。
もも肉でローストを作り、残りはアルバートが気に入った水餃子に化けた。好きなものを主張してくれるのは助かる。
そして、本日はベラージ翁の遺品大一掃大会だ。
今回は兄姉弟子も付き合ってくれることとなり、ガングルムはもちろん、商業ギルド長のイェルムまでやってきた。
多分みんなお宝鑑定のノリできている。何か珍しいものはないかな? というやつだろう。
「フェナ様の組み紐に使えそうなものは取っておきますけど、そうじゃないのはもっと必要な人へと思ってます。普通に手に入るような素材は、今必要な人へ売るのもいいかなって」
とにかく分類して、仕分けしたい。それがまったく知識がなくできないのだ。兄姉弟子も5人も来てくれているので、人数が多すぎる。応接間やキッチンの方も使ってわけていくことになった。パスの数が足りないので一時的に警備の魔導具を一階部分だけ切っている。玄関横のパスは二階へ片付け、階段に荷物を置いて物理的に通らせないようにする。
「この間整理した時に、素材として使うものはだいぶ持っていったのにまだあるわねぇ」
「ガラ、この石、綺羅星に似てると思うんですけど……」
「うわ……ホントだ。シーナこれ、一財産よ」
「そんなもん、王都の好事家くらいにしか売れねぇよ……フェナ様の糸に混ぜられんのか?」
「フェナ様の魔力、流れ星と相性が良かったから、綺羅星とはいまいちだと思うのよ」
「じゃあ売りましょう」
「王都でお高く捌いてきますよ、お任せください」
そんなやり取りが何度か行われ、かなりの数が片付いた。積み上がっていた埃を始末し、拭いていくとかなりスッキリする。
「こちらの机はかなりしっかりした作りですから、そのまま使用するのも良いと思います。椅子の革を張り替えましょうか?」
イェルムに言われて椅子を見ると、座る部分と背もたれの革が捲れてしまっていた。
「そうですね、お願いします。あと、この部屋のカーテンも他の部屋のものと同じものにできますか?」
積み上がっていた木箱を片付けたら窓が出てきた。表に面している部分は同じものに変えていたが、側面の方はすっかり忘れていた。
了解しましたとイェルムがメモを取る。さらに預ける素材の預り証にサインをした。ガングルムが見届人として一緒にサインをしてくれた。
「春になったらギーレさんに護衛を願いましょうかね」
商売が楽しいのかホクホク顔だ。
「そう言えばベラージ翁の書き物は?」
「あ、全部二階に持っていってるんですよ。見ます? すごく読みにくいそうですけど」
階段の荷物をずらしてノートの束を持ってきた。今空いてきれいになった素材部屋のテーブルに並べる。
「耳飾りに新しく採用できるものがないか探しているところなんですけどね〜。アルに訳してもらっているけど、なかなか進みません」
「これは……読めねぇなぁ」
「たまに読めないようにわざと読みにくく書く人がいるらしいですけど、クセの出し方が同じだから本気で……字が汚いんだろうって」
「こんなに汚ねぇなんて知らなかった」
「たまに書いてある絵と壁掛けの絵に同じものがあるからそこら辺を見てるところなんですけどね〜」
「まあでも、冒険者はみんな片耳に、金があるなら索敵したくなるだろ? で、あとは魔除け。身体強化と疲労軽減で終いだろう。今まで狩りに行くときは魔除けを外して索敵と身体強化なんかにしてたから、たまに魔物に連れてかれるやつがでてたのが、そんな事故が無くなっただけお前の功績は偉大なんだよ」
「役に立てているなら嬉しいですけどね」
そんな話をしていると姉弟子が木箱を持ってきた。
「作りかけの組み紐があったよ」
「作りかけ?」
「珍しいわね」
箱の中には薄ピンクと白で編まれた組み紐の作りかけと、その糸が入っている。
「この模様、壁掛けにあったやつです」
桜の花びらみたいで可愛いなと思ったやつだ。
「糸は、素糸みたいだな。あー、白いのはホラヤの糸か。まあ大した効能があるわけでもないやつだな」
「白とピンク可愛いなぁ」
「シーナ、あなたはもっと素材を見なさいよ」
「はぁい。まあ、だいぶ片付いてスペースできたので置いておきます」
多分途中まで編んで、手を止めて、箱に入れて棚に戻したらわからなくなったやつだ。そして忘れる。忘れても不思議でないくらい、たくさんの木箱が山積みだったのだから。
「何か欲しいものあったら言ってみてください。あんまりにも高価なら特別価格とかでお譲りしますの形式で。もちろん、売るんじゃなくて使う方向のやつです」
兄姉弟子がわらわらと木箱へ走っていった。
「師匠とガングルムさんもいいですよ〜、イェルムさんは――」
「私は良いお取引が出来ただけで満足ですしあとはこちらの商品をどれだけ高く売りつけるかですね」
商売が楽しい典型の人だ。
「私は、実はもう確保してるの」
「俺も目をつけたやつはある」
シーナの性格をわかってらっしゃる二人だった。
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夏休みが過ぎる( ー`дー´)
疲れたぁ〜
プールやべー。疲労度パネェ〜てなってます。




