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187.初乗馬体験

 最後に残りのクッキーをリュウの眼の前に瓶ごと置いた。

「これで全部なんで、あんまり日持ちもしませんけど、一気に食べてなくなってもおかわりはないですよ?」

『うむ、了解した』

「シーナ早くしろ」

 フェナたちはもう転移陣に乗っている。

「それじゃあ、さようなら」

『シーナ、召喚の組み紐(トゥトゥガ)は編めるか?』

『召喚!? そんな物があるんですか?』

『……失われたか。これはくっきいの礼だ』

 リュウがふうっと息を吐く。甘い香り、クッキーの香りだ。その中に混じっていた精霊の光が、シーナの耳飾りに纏わりつく。なんの力もないダミーの方の耳飾りだ。

『それにそなたの魔力を通せばすぐに向かおう』

「えっ?」

『困ったときに使うといい』

 とんでもない召喚獣ゲットだぜ、である。

「ありがとうございます……でも、地上に出てこられるとパニックが起こるからなかなか難しいかなぁ」

『そなたの好きに使うといい。しばらくはここでもうひと眠りしている』

 そう言って、最初と同じようにとぐろを巻いて目を閉じた。

「お前、何をもらったんだ……」

「ええっと、呼び鈴?」

「よび……使うなよ?」

「わかってますよ」

 それくらいの分別はついている。

 全員が陣の上に立つと、フェナが腕をふるった。青い光が地面から溢れ出る。

 ふらついたところをアルバートが支えてくれる。そして光が消えると、そこは街道の真上だった。すぐ先には大穴。街道が完全に途切れている。

 あたりはすでに真っ暗だった。どのくらいの時間をダンジョンの中で過ごしたのかはわからないが、昼食を摂ってそんなに時間が経たずに落ちたので、半日は経っているようだ。

「フェナ様!」

「アルバート!」

 真っ先に声を上げたのは、トールナーグとアルバートの姉、テレーリアだった。

「落ちる時に知らせを飛ばした」

 顔色の悪いテレーリアが、アルバートに駆け寄り抱きつく。兄弟がなんの準備もなくダンジョンに落ちたとなれば、その心労は推し量れるものではない。寿命が縮む思いだっただろう。

「フェナ様、本当にご無事で良かった」

 トールナーグも目に涙を溜めている。

 他にも騎士や精霊使いであろう人々が大穴の周りにたくさんいた。

「もうすぐ夜明けです。ここで朝まで過ごしますか? それとも、ソワーズへ向かいますか? 一応馬は用意しております」

 長男のハイルワードがフェナに尋ねると、後ろに座り込んでいるヤハトをチラリと見た。

「さすがに休みたい。ヤハトが魔力切れを起こした。待っていた者たちには悪いが、馬でソワーズまで先に帰ってもいいか? ダンジョンの生成は終わった。安定しているから入口を作るなら作っておいたほうが安全だ。この大穴はさすがにまずいだろう」

 ハイルワードは頷いて後ろの騎士に指示をしている。

「ヤハトは私の馬に、シーナは――」

「私が相乗りします」

 アルバートが申し出て、フェナが頷く。

「馬とか、乗ったことない……」

「大丈夫。私の前に」

 先に乗ったアルバートが馬上から手を差し伸べる。が、手はいいのだが足をどこに置いたら乗れるのかわからず、これは、馬に飛びつけばいいのか? とモタモタしていたら、体が宙に浮く。そして、ストンとアルバートの前に落とされた。

「行くぞ」

 馬に乗るにも技術がいる。後ろ側に座っていたらいつの間にか落ちてしまいそうだ。両側にアルバートの腕があるので安定していて安心だった。

「もたれていいからね」

「あ、はい?」

「乗り慣れてないから、ずっと緊張してたら疲れるよ」

「……はい」

 これは、想像以上に違う意味で緊張する!

 すぐ後ろから話しかけられると、耳元に声がダイレクトに届くのだ。

 ちなみにヤハトはフェナの後ろに乗っていた。前に乗せようとしたら、後ろで大丈夫だと自力で馬に登った。

 荷馬車は人の速歩き程度の速度だ。対して馬に乗ると駆けるのがかなり早い。荷馬車を引いているものとはまた違った種類のようだった。なので、午前中かけてきた道のりがあっという間で、かなり早くソワーズの街に着いた。

 門はもちろん閉まっていたが、フェナの姿を見とめるとすぐに開けてくれる。

「ご無事で何よりです。今の時間なら人も出歩いておりませんので、そのままでも大丈夫だと思います」

 門番から許可も出たのでそのまま馬で進み、屋敷へ行くと、すぐにソワーズ子爵と夫人が現れる。

「アルバート! フェナ様もご無事で本当に良かったです」

「心配をかけた。待ってくれていた者には悪いが、先に帰ってきた」

 馬からずり落ちるように降りたヤハトを受け止めると、そのまま荷物のように担いだ。

「お部屋の用意はできております。他に何か必要なものがあればお申し付けください」

「神官たちへ知らせをやってほしい」

 この場に現れないところをみると、どうやら神官たちは神殿へ行っているらしかった。

「シーナ、そのまま落ちてもいいよ。受け止めるから」

「フェ、フェナ様〜!」

 さっきみたいに精霊で下ろして欲しい。馬は案外背が高くて、本当にアルバートの上に落ちる形となりそうだ。太腿がぷるぷるする。あと、おしりの感覚が色々とヤバイ。

「遠慮するな。アルバートの上に落ちろ」

 そう言って、ヤハトを担いでとっとと屋敷の中へ入ってしまう。

「おいで、シーナ」

 とりあえずなんとか足を上げて片側に滑り落ちる体勢をとる。跨ったまま横にずり落ちる、一番ダサい結末は避けられた。

「うう……」

 後で考えると、後ろ向きになって滑り落ちるように降りればよかったのだが、初めての乗馬に完全にテンパっていたのだった。

 アルバートが右手をシーナの膝の裏あたりにいれて足を抱え、左手でシーナの右手を掴む。

 なかなか前に進まないシーナに笑いながらぐっと引き寄せる。

 ヒャァ〜と、声にならない叫びを上げる。

 そのまま抱き寄せられて抱えられた。

「あ、ありがとうアル、おろして……」

「たぶん、立てないと思うけど」

 流石にそれはないだろうと思ったが、いざ立とうとしたら足から力が抜ける。

「えええ……」

「初めての乗馬だろ? それで長時間乗ったらこうなるよ」

 そう言って再び抱きかかえられる。

「ふぁぁぁぁ……」

 まさかのお嬢様抱っこ。

「今日はもう洗浄して寝よう」

「はい……重いのに……」

「重くないよ」

 推しにお嬢様抱っことか、尊死の極み。

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


ブックマ評価ありがとうございます。


馬から降りるの、またがったまま真横に滑り落ちるの想像すると笑えてwww

私は本当の体験しかしたことないんですけど、お尻と太ももヤバそう。


昨日、とってもとっても素敵な絵を描いてもらえて、

ふぉぉぉぉ!!! てなりました。

幸せ。

尊いが過ぎた。

フェナ様もとてもキレイで美人だし、シーナ可愛かった。

文章で幼く見える幼く見えると散々書いているんですかが、ああ、これが……てなりましたね。そりゃ言われるよねって。

気が向いたらX見てみてください。

私のアカウントはsinraです。

このアカウントの短さ、ツイッタランド古参( ・ิω・ิ)

最近はもうBlueskyの民なので、企業RPが殆どでごめんねw

新クリスピーチキン当たったよ。美味しかったよw

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