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112.正しいベッドの作り方

 二階の土足禁止を話して、階段を登りきったところを一段下げるお願いもした。

「絨毯はどうしましょうかねえ。全部緑色で統一しますか?」

「さすがにそれは、あと、季節で色は暖色系と寒色系か白にしたいなぁと」

「そうですね、冬の絨毯は重い色のほうが良いでしょうね。緑ならば濃いものの方が。寝具を緑色にするならば、茶色の濃いものでも良いかもしれませんね。夏はクリーム色に緑色の模様を入れて爽やかにしたり」

 イェルムの提案は的確だった。

「緑の模様で、爽やかに……いいですねぇ〜」

「内装を考えるのは楽しいですよね! 家具は正直足りないものを都度作っていくのがいいと思いますよ。長く使うものですからね」

「あ、ベッドを、ベッドは、フェナ様のお家にあるフカフカのが欲しいんです!」

 あのフカフカ、低反発なんてないはずなのに、体の線にフィットする感じで最高なのだ。家をくれると言う話が出たときからベッドだけはあれだと決めていた。

 しかし、シーナの言葉にイェルムの顔から笑みが消えた。

 そして、ゴクリと唾を飲み込む。

「え、待って……そんなヤバイものなんですか」

 いや、王室御用達で一般庶民が注文するなどおこがましいとかそんなタイプのものだったら諦め…………たくない。それくらい気持ちよく眠れるのだ。正直、悪夢を見たあとまた眠ろうという気になるのはベッドが気持ち良すぎるからというのもある。

「ホェイワーズのベッドを望む覚悟があるというのですね!!」

「いやごめんなさい、説明がほしいです!」

 イェルムの勢いが怖い。

「え! ホェイワーズ狩り出来るの!? いやったぁぁぁぁ!!! 俺あれ大好きっ! シーナ、指名依頼にしてよ! フェナ様に出してよ!」

 隣で聞いてるだけだったヤハトが突然興奮しだす。

 狩り?

 バッとアルバートを振り返り助け舟を求める。彼はシーナから少しだけ離れて同じソファに座っているのだが、苦笑いをしていた。

「ホェイワーズは魔物だ。かなり強いが、その毛皮は分厚く、弾力が強い。厚さがかなりある。そう、ベッドになるくらいね」

「もっこもこのボインボインな毛皮……」

「ベッドにする場合その毛皮をなるべく傷つけずに狩りをするため、精霊使いは緻密な罠を作ってそこに誘い込むそうだ。私は見たことがないが、ヤハトはその狩りが好きなのだろうな」

「フェナ様の罠がすごく、すごく美しいんだ……」

 今まで見たことのないヤハトのうっとりとした表情。フェナは一体何をしたのだ!?

「シーナさん、ホェイワーズ狩りの依頼は、大金貨五十枚は必要な依頼です」

「ぉぉ……」

 数字がヤバイ。

「ただそれはあくまでホェイワーズを狩り、それを得る代金ですね。加工費がまた別にかかります。ただ、ホェイワーズの素材などは全部依頼主のものですので、余った他の素材を売り出せばその分は賄えます。ホェイワーズ一匹から最低でも三つ分のベッドが作れますから」

 大金貨五十枚。シーナの日本円換算式からすると、大金貨は百万円。つまり、五千万円のベッド。

 索敵の耳飾りが金貨六枚と銀貨八枚である。シーナは一つ売れるごとに一割を貰う。十本で金貨六枚と銀貨八枚。千本売れたら大金貨六八枚。

 実はそれくらいすでに売れている。なんなら倍売れている。いけるが、他の家具やらなんやら色々買うのにベッドにお金を注ぎ込んで大丈夫だろうか!?

「ホェイワーズのベッドは百年保つと言われております。シーツなどのリネン類を取り替えていけばずっと使っていけますよ?」

 この、商売上手め……。

「依頼を、出します……」

 絞り出したシーナの言葉にヤハトがやったとソファから立ち上がりくるくる回った。

「狩り場までは大急ぎで三日でいけるけど、そこからフェナ様が罠作りに最低五日。追い込むのに運が悪ければ二日。運ばせて十日から十五日。準備合わせて一ヶ月見ておいたほうがいいから、今日にでも指名依頼よろしく!」

「早くて十月頭ですね! ではそこまでに枠組みと、他の部屋を仕立てましょう。もちろん今年の冬はこちらで過ごすんですよね? 仕事部屋の方は後回しにして、キッチン寝室浴室、この三部屋を仕上げることにしましょう。冬の間に他の場所のクッションや絨毯は作ればいいのでね。冬物を先に、と」

 冬支度!! 一人でできるだろうか? 急に不安になってきた。

 それ以上に金が急に不安になってきた。

「イェルムさん! 組み紐髪飾り、一緒にドカンと売りさばきませんか!」

「シーナさん!! それはぜひとも私の方からお願いしたいことです!! 素糸による組み紐の髪飾りは王女殿下の許可待ちだと聞いております。許可が出たら、ぜひとも、ぜひとも私にもお手伝いさせてください!!」

 慎ましくしていれば一生金の心配がいらないと思っていたら、途端に不安になった。家はお金がかかる! 髪飾り売るぞぉぉ!!!

 絨毯は材料を集めさえすれば一月あればできるそうだ。冬用なので、落ち着いた濃い茶色におすすめの模様を入れてくれるらしい。

「職人に頑張ってもらいましょう! それでは見本ができたらお店かフェナ様のお屋敷に伺いますね。忙しいでしょうが、仕事の合間に詰めていきましょう。シーナさんの安住の家になるよう、最大限のお手伝いをさせていただきます」

 細々決めることはたくさんあるだろうが、楽しみだ。

「私も時折チェックさせてもらいますね」

「はい。アルバート様にも進捗はお知らせいたします。領主様にもお知らせ願います」

 今後のスケジュールを話し合い、家に戻るとガラたちも大体まとめ終わったところだった。

 売るものと、店で使ってしまうものをまたリストをよく見てきめてから持ち出すことにする。

「それじゃあ私は店に帰るわ」

 ガラが手を振り去る。シーナも冒険者ギルドへと向かった。初めての指名依頼である。

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


ブックマークいいねありがとうございます。

最近ベッドのマットレスを変えました。前のは十年は使っていたんですが、後半真ん中が凹んで壊れてて、新しいマットレス最高……

ホェイワーズベッドはベッド界の最高峰です。

シモンズとかそんな感じで。

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― 新着の感想 ―
お金を稼ぐ系の話しだと途中からお金を増やすだけ増やして、あまり使わない主人公にもやもやする事も多いので、ドカンと足りないくらい使ってくれてすっきりしました! ドカンと欲しいものを買って、またガリガリお…
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