109.石造りの家
こちらに落ちる前、ワンルームマンションに住んでいたシーナだが、ガラの店の一室を借り、フェナの屋敷にシーナの部屋ができつつ、そしてとうとう家を持つ。
何がどうしてこうなったんだろうと思うが、自分の家というのはかなり心踊る。
そして、家の前にくると、その大きさに、ビビった。
「や、やっぱりこれはちょっと貰いすぎじゃ……」
正直坪とかヘーベーとかわからないのだが、でかいというのはわかる。普通のベッドタウン分譲一戸建てだと、その四軒分くらいありそうなのだ。ここはギルドが集まっている広場だ。ギルドは基本でかい。そこにならんでいるから一見して小さく見えるが、錯覚だ。
「ほら、とっとと入りなさいよ」
ガラに急かされて、入り口を開けてくれたアルバートにお礼を言って中へ足を踏み入れた。
ちなみに今日はフェナはもちろんヤハトとバルもいる。あとはガラとガングルムだ。
玄関は広い。ただ、土足なので玄関マットと椅子とコート掛けがあり、廊下として続く。三和土がないのだ。右手に一部屋。ドアにはすりガラスがはまっていてなかは見えないが光は漏れてきている。左手の手前と奥が素材が詰め込まれていた部屋だ。
真っすぐ行った右手にそのまま階段があり、二階へ行くようになっていた。階段を登らずに真っ直ぐ行った奥に扉が見える。天窓からの光で玄関は明るい。
正直素材はわからないのでガラに最初任せて部屋の中を見て回ろうかなと思ったところをフェナに首根っこを掴まれた。
「皆は待ってなさい」
そう言ってフェナはシーナを連れて左手手前の部屋に入り扉を閉める。
先日よりすこしすっきりしたように感じるのは、形見分けで物が減ったからだろうか。
「何が見える?」
「あー、キラキラですか? 今は特に何も見えません」
するとフェナが腕を振るった。その途端、光のキラキラが部屋のあちこちに集まりだす。
「わー……あっちとそっちと……」
「わかった。やはり精霊の集まり具合が多くなると見えやすくなるみたいだ。……高価な素材もガラに渡していいのか?」
「私じゃ使いこなせなそうなので、あと、保存の仕方がわかりません」
前に、適切に保存しておかないと劣化する素材があるという話を、店の在庫を整理しているときに聞いた。
「まあ、了解した。私もここを見るから、シーナは部屋を見てくるといい」
はーいと返事をして部屋を出ると、ガラとガングルムを招き入れる。
「奪い合いの喧嘩はしないでくださいね」
まさか、そんなと言っているが、ガラの気はすでに部屋の中へと向いている。
普通に取り合いしそうだ。
「ヤハトもなにか欲しいものあったらいいよ?」
「俺素材に興味ないし?」
「ヤハトの専属組み紐師に素材渡したりしないの?」
うーんと唸りながら首を振る。
「どれがいい素材かよくわかんないからいいや」
この弟子、大丈夫か?
「じゃあ私はお家の中を探検します!」
「一応こちらの予定している改装の話もしよう」
「お願いしまーす」
入ってすぐ右の部屋へ入る。絨毯が敷いてあり、大きな一人掛けのソファと、二人掛けのソファが二つ。真ん中にローテーブルがあるだけだった。窓は正面に向かってと側面に。ドアがもう一つ家の奥に向かってある。
シシリアドの家は基本石だ。枠組みを木で作り、壁は石を積み上げ隙間を漆喰で塗り固める。枠組みも覆い隠す感じで、さらに土魔法を使って強度を高めるのは、金持ちの家だ。そしてここは、金持ちの家である。
木の部分は扉やドアと、その枠部分。2階へ上がる階段の手すり、それくらいだ。床ももちろん石でできている。ベラージ翁は薄い色の木が好みだったようで、内装に使われる木の部分も同じ色の薄い木が使われていた。室内が明るくていい。
窓は通りに面している部分は大きいが、隣の家との壁の方はちょっとした風を通すためだけの小さな上げ下げ窓だった。
「お客様をお通しする部屋かしら?」
「そうだね。この部屋は今のままかな。この奥の部屋が少し小さめの部屋なので、そこと更に奥のキッチンをつなげてしまおうと思っているからそちらを見てもらえるかな?」
こちらの扉にはガラスははまっていなかった。ドアを開けるとたしかに狭い。いや、十分に広いが周りと比べると狭い。八畳くらいの部屋だった。
「こちらにあったテーブルは傷も多かったので先に始末させてもらった。故人が一人食事を済ませるための部屋だったようだ」
この部屋へのドアは、先程の部屋からと、更に奥の部屋へと行く分だけだ。
そして奥の部屋はキッチンである。
「オーブンを入れると手狭になるからね。やはり先程の部屋とつなげてしまうのがいいと思うよ?」
窓に向かって、流し台と作業できる場所があり、さらにもう一方の窓に向かって竈があった。この竈、フェナの家にあるようなオーブン付きのタイプに変更したい。
「わかった。ここに合うような色のものを作らせよう」
「あと、作業台をもう一箇所、テーブルよりもしっかりしたものがほしいです。この、空いている真ん中のスペースに」
アイランド型作業スペースが欲しい。基本一人だし、領主やフェナのお屋敷のように複数人で作業をするつもりはないから、自分が通れれば問題ない。
そして潰した部屋のあたりに食事用のテーブルを置こう。
これ、考えるのが大変だけど楽しすぎる。
キッチンは、入口から向かって右奥で、左手の壁あたりにはちょうど階段があるあたりだ。なので出入り口はやはり先ほどの前の部屋からと、部屋奥に一つだ。
ドアは内開きで、開けると目の前にドア。さらに左手階段下には地下へ降りる階段が続いていた。
「地下は貯蔵庫だね。冬の食料などを備蓄する場所だ。夏はあまり使わないかな。前のドアはトイレだ。ここを今は素材が詰まってる隣の部屋と合わせて浴室にしようという話になっている」
「お風呂〜めっちゃ嬉しいけど贅沢ですね……でもお願いします」
風呂があるから家をいただく決心をしたのだ。
「一階はこれくらいだね。次は二階だ」
ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。
いいねありがとうございます。
おうちをゲットからの家具考えるのとかめっちゃ楽しいだろうなぁとうきうきして書いていたら、保存失敗してごそっと消えてたのがここいらあたりからなので、なんか変なこと言い出してないか不安。
話の前後が違うとか……ドキドキ




