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前世を思い出すとか、冒険者やってりゃ割とよくある話では。  作者: は
冒険者アレックスは前世の記憶を思い出してしまった。
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第1話 地球人→ミジンコ→プラナリア→ドクツルタケ→カナブン→アレックス

世間ではコミックマーケット。

しかし人前に出るのはコワイ。

せや、この時期に合わせて作品を発表して同人誌気分を味わえばいいんや!


「せやろか?」


せやで(胡散臭い笑み)






 死んだらしい。

 心当たりは幾つもあるので、仕方ない。

 ついでに言えば、転生したらしい。宿の共用炊飯所で小麦粉を練りながら思い出すのは果たしてどうかとも考えたが、自分らしいとも言える。


『聞いているのか、主殿、いや魔物使いアレックスよ』


 前世の記憶に混乱していると、目の前に立つ美女が苛立たし気に声を上げた。

 この辺りでは見かけない派手な色彩の――それこそ娼館でも高位貴族相手の商売でなければお目にかかれない衣装を身に着けた美人さんである。

 彼女の手には、引きちぎられた腕輪。

 従魔登録の際に冒険者組合で支給される安物の首輪が握られていた。

 猛禽を思わせる鋭い眼差しに色彩豊かな背中の翼、そして馬のような尻尾。とある仕事の報酬として譲り受けた牝馬が、どうやら先祖返りなのか鷲馬ヒッポグリフへと転じたようだ。


『我は力を得て上位種の魔物に成った。汝との契約を吹き飛ばすほどの力をな。この意味が分かるか?』

「……とりあえず、上位種への転生おめでとう。以前は黒砂糖とか好きだったけど、祝いは何がいいかな。ええと、これ林檎飴」

『ふおおお、カリカリのパリパリのサクサクである』


 収納空間に保存していた林檎飴を差し出せば、鷲馬の美女は目を輝かせて奪うように受け取ると幸せそうに飴掛け林檎に齧りつく。


『あまーい、すっぱーい、おいしー!』

「上位種への転生どころか人化できるようになったら、そりゃあ家畜用の従魔契約なんてあっという間に破棄されるよね。残当、残当」


 宿の外が随分と騒がしい。

 そりゃそうだ。長期護衛任務の途中、馬車こそ牽かなかったものの護衛メンバーの荷物を背負って同行していた牝馬が突然鷲馬になって更には美女となったのだ。物資補充のために宿場町に立ち寄ったのは不幸中の幸いか。

 いや、護衛チームになんて説明すればいいのやら。


「それで、契約解消ね。了解。よりよき主人を求めて転職活動したいと」

『――う、うむ。我は上位魔獣であるからして、相応しき乗り手を選ぶ自由がある。力を振るうべき戦場を求める心がある』


 林檎飴を食べ終えた鷲馬娘は少々バツが悪そうに、ちぎれた腕輪をこちらに手渡した。


『わ、我はな。向上心というか野心ある主と冒険したい。英雄と呼ばれる者を背に乗せて戦場を駆け抜けたい』


 うん、それウチでは無理だよね。

 今請け負ってる仕事も、穀倉地帯の通称小麦子爵家の皆さんを王都に送り届けるための護衛だし。護衛なのに宿で食事作ってるしね、自分。

 しかも子爵家の皆さんがそれを喰うという。

 英雄症候群に罹患した中位魔獣の鷲馬、いや人化できるので上位魔獣の彼女には到底我慢できない「ぬるい」仕事に違いあるまい。


「大きな街で冒険者組合で従魔手続きの解消をしよう。騎獣募集の申し込みもしておかないと、野良の魔獣として討伐されてしまうからね。それまで待ってくれるか?」

『ならば、王都で! 其処ならば優れたる騎士や戦士もいるであろうか』

「そういう巡り合わせは運次第じゃないかな」


 魔法による契約は切れているが、彼女はこちらを攻撃する意思はないようだ。

 それだけでも魔獣使いとしては報われた気がする。


『ところで元主殿、汝は何を作っているのだ?』

猫耳朶マオアルドウという麺料理」


 せっかく前世の記憶を取り戻したので、団子汁を振舞うよりはマシであろうよ。

 馬では消化できない飯も、今の身体なら平気だろうしね。

 元主として、材料費だけの特別サービスで提供するよ。


『まて元主殿。汝は飯代を取るというのか?』


 徴収しますとも。

 従魔契約を一方的に解除されたんだもの、飯代も宿代も君は自腹だよ。

 あと外で鷲馬形態に戻ったら問答無用で討伐対象だからね。人化できれば冒険者登録も不可能じゃないけど。

 ちなみに一泊2ノーブルで朝晩の飯付というのは街道の宿としては極めて破格。

 前払いね。


『……元主殿、相談があるのだが』


 王都まで予定通りなら一週間だよ。よかったね。




 ちなみに。

 夕食で提供した猫耳朶麺は好評を博した。

 好評過ぎて前世に目覚めたのも速攻でバレてしまい、冒険者としての活動を当面休止する羽目になった。無念。




全五話+登場人物紹介という構成です。


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