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45話 剣神カミナ・フウジン

GWということで、連日投稿です!

 


「とりあえずは、お座りください。わざわざこの様な辺境までお越しくださったのですお疲れでしょう? それに、お話も少々長くなるかと思いますので」


 そう言って、右手で自身の正面に置かれた座布団に座るように勧めてきた。

 それに倣い俺が座ると、ニコリと笑って言う。


「すぐに、お茶を入れさせますね。イオリ」


 カミナが、隣に座る若い女の方を向いた。


「はい。カミナ様」


 返事をしたのは、さっきからずっと俺を睨んでいた女。

 どうやら、こいつはイオリという名らしい。

 長い黒髪を後ろで束ね、女としてはかなりの美人に入るであろう顔の作りをしている。

 りつとは比べ様もなく、またユリよりもその度合いは上だろう。

 だが、角度がつくまでのつり目で俺を睨み付けてくるのが台無しにしているが。



「ツルギさんに、お茶を入れてください。あと、國から持ってきたお茶菓子も一緒に出してください」


「はい」と、立ち上がりかけるイオリに俺は言った。


「お茶だけでいい。甘いのは、好きじゃないからいらない」


「そうでしたか。甘すぎず、男性でも食べやすい我が國の特産物なのですが」


 カミナがしずしずとお勧めしてくる。


「いらないと言ったら、いらない」


 しつこいと思っていたからか、ぶっきらぼうな口調になってしまった。


 その俺の態度に、イオリが声を上げた。


「あんた。その言い方は、何よ。せっかく()()()が言ってくれているのに」


 その言い方は、視線同様に勝ち気だった。

 それにしてもこいつら、親子だったのか。

 そう言われると、二人の顔には似ている部分もある。


「いらないから、いらないと言っただけだろ」


「だからって、言い方があるじゃない。人がせっかくあんたでも食べやすいものをと、勧めてるのに。第一、お母様はとても偉いのよ? 剣神としてとても立派なの。そのお母様に向かって、あんたのその口調は失礼だわ」


「お前だって、そうじゃねぇか。俺は一応は客人なんだぞ?」


「客人だからって、失礼なのは許されないわ。それに、あんた何歳よ?」


「十五だが?」


「やっぱりわたしよりも、歳下じゃない。わたしは十六。つまり歳上なんだから、敬語使いなさいよ」


 何だ。

 こいつ歳上のくせに、こんな程度の低い言い方を自分だってしてんじゃねーか。

 ちなみに、俺は失礼な言い方をしているのは自覚している。

 直すのもめんどくさいから、やらないが。


「歳は関係ないだろうが。それにな、人の口調にとやかく言う前に、その人を見るなり睨み付けるのを止めたらどうだ? 俺はそこまで気にしない性格だからいいが、今の時代、それが原因で殺し合いになってもおかしくないのを知らないのか?」


「なによ。あんたにそんな事いわれなくたって、知ってるわよ!」


 言い合いが白熱していくうちに、イオリの顔が紅潮していく。

 勿論、怒りからで。


「何が俺は気にしないよ! 思いっきり睨み返して来たじゃない! そもそもあんたが、怪しいから睨んでやったのよ。大体ね――」


「御二人とも」


 言い合いを続ける俺達に、カミナが仲裁をかけた。

 静かな声なのに、場を静める効果でもあるのか、ただの一声で俺達は止められる。


「イオリ。やめなさい失礼ですよ」


「ですが、お母様!」


「イオリ」


「……はい。すいませんお母様。すぐお茶を淹れて参ります」


 カミナにたしなめられ、イオリは大人しくなる。

 そのままお茶の準備に行った。


「ごめんなさいね。あの子ったら、私の教育が悪かったのかあんな性格になってしまって。根はとても真っ直ぐで、優しい子なのですが、何故か私の事になると頑固者になるのです。公私をつける為に二人の時以外は、敬称で呼ぶようにも言っているのですが、感情が昂ると忘れてしまう様で」


 カミナは、右頬に手を当て「困ったわぁ」と言う。


「別にいい。それは気にする程の事じゃないだろう。まぁ睨まれたから、ムカついて睨み返したが」


「そう言って頂けると、ありがたいです。ただ、ツルギさんも少々言い過ぎではあると思います。まだ元服したてなので致し方ありませんが、普段からその様な態度では、周りを敵だらけにしてしまいますよ? これは、老婆心から来るものですが気に留めて頂けると」


 微笑みを絶やずに、俺を窘めてきた。

 確かに、売り言葉に買い言葉で大人げなかったかもしれない。


「……分かった。気を付ける」


 ここは、俺にも非があるから素直に謝った。

 何処かカミナには、逆らえさせない凄みがあった。

 こうして前に居ると、大きな海の様な存在感をカミナから感じる気がする。



「分かって頂いて、良かったです。……なるほど」


「何だ? 人の顔……いや、さっきから目をじっと見てきてたが」


 そう。

 挨拶をしてから、まるで俺を測る様な視線を向けてくるのに、気付いていた。


「すいません。不躾だと思いましたが、貴方がどの様な人間か、果たして私達の()()()()()()()を確かめさせて頂きました」


 知らぬ間に、俺は試されていたらしい。

 一見すると、優しく大きな包容力を持つ人物に見える。

 だが、それだけではないのは出会ってからのカミナの挙動で気づいている。

 深層で、何を考えているのか、それを掴ませない何かがあるのは間違いない。

 やっぱり、カミナは只者ではない。


「それで……どうだった?」


「貴方は、とても深い。そう真っ暗で深い底に何かを飼っていますね。普通はそんなものを人は持てない。でも、そうせざるを得ない事情が、ツルギさん。貴方にはあったのでしょう。そして、それと同時にとても暖かい物も持っているのが、分かります」


「……」


「それがどの様な物なのか私には分かりませんが、それを話して頂ける程に、私達はまだ信頼関係を築いていません。ですが、これからその絆を深めていく事は出来る方だと、思いました。ツルギさんは、共に力を合わせ戦う事が出来る人だと」


「……大したもんだな。流石は、剣神ってわけだ」


「ふふ。お褒めに預り、ありがとうございます。ただ、もう一つ確認したい事があるのです。これから先は()()()一番必要になります。――――それでは、失礼しますね?」



 フオンッと、室内で風が吹いた。

 窓は閉められ外気は入ってこない部屋。

 一陣の風が吹くと、カミナが正座の姿勢から立ち上がり、次の瞬間には俺の目前に立ち刀を振り下ろしてくる。



 ガキイイインンンンンンンンンンン!!!!!



 激しく刀がぶつかり合う音が、建物全体に響き渡った。

 それからやや遅れて寸秒。

 ぶつかり合った二つの力の余波は、室内を駆けめぐり襖と障子を揺らす。



「……流石、剣神って所なのか? 三大剣術でも速さが売りの風雷の頂点に立つのは、伊達じゃないってか」


「ふふ。ありがとうございます。ですが……貴方は、規格外ですね。私の動きだしに反応しただけではなく、斬撃を防いでみせた。しかも、それだけではなく、ツルギさん貴方はその気になれば私を殺せましたね?」



 俺は今、生滅刀でカミナの剣を弾き返した所で、構えを取っていた。


 カミナが物凄い速さで立ち上がり、一足で俺の前へと進み出るのを察知して、死剣眼を発動しカミナの一刀を弾いたが。

 カミナが敵ならば、そこから更に一刀を撃ち込んでいた。


 そうなれば、カミナが言うとおり首と胴体はバラバラに分かれていただろう。


 ただ、今おこなったのは云わば模擬戦。

 カミナも技を使わなかったし、実際の殺し合いになれば、結果はどう転ぶか分からない。

 それだけ、カミナは強くその強さこそが剣神と呼ばれる由縁なんだろう。


 カミナは、間違いなく俺が戦った相手としては過去最強だ。



「敵ならば、そうなってただろうな」


「ふふ。ツルギさんのお陰で、命を拾わせて頂きました」


 ニコリと、微笑みを浮かべ感謝される。


「それで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「はい。シュウゲツからは貴方の事を聞いておりましたし、先程の件で信用に値いする人物なのは、確かめさせて頂きました。ただ、実際に()()()()を知らないままでは、作戦に支障をきたしますので確認致しました。ご無礼をお許しくださいね。それにしましても」


 じっと、俺の()()見て言った。


「……本当に死剣眼をお持ちとは。剣君を簡単に倒せる腕前だと聞いて、まさかと思っていましたが……」


 そう言ったカミナの顔は、複雑なものだった。

 同情とも取れるし、期待の色も含まれている様に見えた。

 カミナは、死剣眼の事をこれに関わる事実を知ってるのだろうか。


 石碑に書かれていた一族だとかの内容は知らないにしても、継承権を持つ事は知っているのだろうか。

 その上で、俺に何を期待しているのか。



「……嘘。お母様が、負けた?」


 ちょうど茶を入れて戻ってきたイオリが、愕然と声をこぼした。

 俺がカミナに斬りかかられる前に戻っていた気配を感じていたから、一部始終を見ていたのだろう。


 それは、当然カミナも分かっていただろう。

 もしかして、反抗的なイオリに俺の事を認めさせる為にやったとか?

 ……そうだとしたら、食えない人物だな。


「イオリ。お茶は淹れてきてくれましたか?」


「は、はいカミナ様」


 イオリは、慌てた様子で俺の近くへと寄ってくると、


「……ふん!!」


 やや乱暴に、湯飲み茶碗を置く。

 離れる際に睨みながら鼻を鳴らす事も忘れずに。

 俺は、大人だから気にしない。

 睨み返しながら、ドカッと座布団に座り直した。


「シュウゲツ」


 そんな俺達のやり取りを見ながら、カミナは俺の左横に呆然として立つ、人物へと顔を向けた。


「……ハッ」


「呆けてないで、話を進めますよ」

 

「申し訳ありません!」


 慌てて頭を下げる。


「そういや、さっきから随分と大人しかったな」


「……いや。二人の打ち合いの凄さに、愕然としてしまっただけだよ。俺では、剣撃を見れなかった」


 なるほど。

 シュウゲツは、位でいえば剣達ぐらい。

 剣神クラスの剣撃は、見えなかっただろうな。


「シュウゲツも、まだまだ鍛練が必要ですね」


「……はい。精進致します」


 苦い顔をしながら一礼した後、シュウゲツも座った。


 全員が座るのを見届けてから、一度室内を見渡したカミナは、「コホンッ」と、喉を鳴らし宣言した。


「それでは、準備も整いましたので、今後の大陸の平和の為のお話しと参りましょうか」

はい。

GWいうことで、数少ないストック解放しました。

また頑張って書きたいと思います。

また書け次第、投稿させて頂きますので、またよろしくお願いします!

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