44話 穏健派の拠点
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「この先だな。 シュウゲツが言ってた廃村は」
闇市の中をサイカと共に歩いて行くと、明らかに人が寄り付かないであろう場所に辿り着いた。
道端には、荒れ放題な雑草が伸びきり、倒壊した建物の残骸が残されている。
そこに羽根を休める為に留まるカラスが、不快な鳴き声を上げた。
「うわぁ……ボロボロだね。建物も倒れてるし、人も居なさそう。こんな所に用があるの? お兄ちゃん」
サイカには、ここで穏健派と合う事はまだ話していない。
一応シュウゲツ達に確認してから、サイカとは会わせるつもりで連れてきた。
「多分ここで間違ってないと思うが。……奥から、結構な人数の気配を感じるし。とりあえず、お前はこの辺で大人しく待ってろ。場を整えたら呼ぶから」
「うん分かったよ。サイカ良い子だから、大人しくしてるよ。せっかくだから、お兄ちゃんに教えてもらった歩方を鍛練してるかな」
サイカはそう言って、右手を上げて了解の意を示す。
「良い子だ。それじゃあな」
「言ってらっしゃーい!!」と、手をブンブンと振られ見送られた。
※※※
「止まれ!! それ以上踏み込む事は、許さない」
サイカと離れ、廃村の中を進んでいた俺の前に三人の剣士が立ち塞がった。
三人それぞれの顔を見るが、俺はこいつらに見覚えがない。
たぶん、前にシュウゲツ達と話した時にはいなかったと思う。
「お前は、何者だ。何故ここに来た」
刀に手を添えると、警戒心をあらわにして聞いてくる。
「さて。どうするか」
今日ここでシュウゲツ達と約束している事を、説明しないといけないのだが。
そもそも、シュウゲツは俺が来ることを話してないのか?
話が通ってないって事はそうなんだろうけど。
そんな事を考えていると、
「待ってくれ。その人物は、敵じゃない。俺がこの場に呼んだんだ」
廃村の奥から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「シュウゲツさん。では、こいつが」
「そうだ。例の少年だ」
声の持ち主は、シュウゲツだった。
俺へと視線を向けると、声をかけてくる。
「ツルギ。暫くぶりだな。ここまで迷わなかったか?」
「ああ。特にはだ。見るからに、ぼろっちい場所だから、すぐ分かった。あと、俺が来るって話し通しておけよ。無駄な時間くらった」
「すまない。ちょっと立て込んでてな」
「ん? 何かあったのか?」
「いや。急遽ツルギに会いたいと仰った方がいてな。その調整で、ドタバタしてしまった。悪い」
「俺に会いたい……ね」
「とりあえず。予定よりも少し早いが、立ち話もなんだし奥に行こう。そこなら、建物もまともだからゆっくり話しも出来る」
先を歩きだした、シュウゲツの後をついて廃村を進む。
「確かに言うとおりだ」
シュウゲツが言っていた通り、奥に進むにつれてまともだと言える村の様相になっていった。
『滅』の奴等を欺く為に、わざと村の入口付近はボロくしているのかもしれない。
村の半分を過ぎ、おそらく奥側だろう場所には、綺麗に整備された建物があった。
屋根もあるし、壁も補修された跡がある。
どうやらここが拠点らしい。
入口にある暖簾の様なのを潜り、中に入る。
「そういえば、数日前に、バクガイ公が襲われたとの情報が都中を駆け巡ったが、ツルギは何か知ってるか?」
歩きながら、シュウゲツが聞いてくる。
「ああ。やったのは、俺だぞ」
「……やっぱり。ツルギが、やったのか?」
シュウゲツの顔には、「予想的中」と書かれていた。
「あのデブがやりたい放題だったから、やきを入れてやった」
「……ははは」
驚きの表情はすぐに、苦笑いへと代わり「ツルギらしいな」と呟く。
「そんな大それた事をするのは、ツルギしかいないよなと、仲間内で話してたんだよ。一応は、半信半疑だったんだけど……正解だったか」
「ちょっとお灸を据えただけだぞ? 大した事はしていない」
「それが、普通は出来ないんだけどね……。闇市の環境が激変したっていうし、バクガイ公もすっかり元気を無くしたって噂だ。人が中々出来ない事を平然とやってのけるのは、本当にツルギらしいよ」
やがて、目的に到着したらしい。
先を歩くシュウゲツが足を止めた。
「着いたよ」
案内された先にあったのは、大広間だった。
襖が閉じられていて中は見えないが、その奥に誰かが居る気配がする。
「連れて参りました」
シュウゲツがその奥の人物に声をかけた。
「お入りください」
それに答えたのは、女の声。
声質から、多分中年の物だと思う。
「失礼します」
シュウゲツが襖に手をかけ、ゆっくりと開けた。
徐々に見えてきたのは、畳部屋に正座をして座る二人。
さっきの声の持ち主だろう中年の女と、その右横に同じ様に座る若い女がいる。
歳は、俺と同じか少し歳上か。
二人とも、緑色の羽織袴を着込んでいるから、風雷の剣士だろう。
「カミナ様。お待たせして、すいません」
シュウゲツが前へと進み、頭を下げた。
「いいえ。気にしないでください。シュウゲツも、案内お疲れ様ですね」
優しい声の響きだ。
人の良さそうな微笑みを浮かべ、物腰が柔らかい。
だが、その中にも計り知れない物も含まれているのを感じる。
それに、この女。
かなり強い。
一見無防備に座っている様に見えるが、一分の隙もない。
「貴方が、ツルギさんですね?」
俺が目の前の相手を見極めようとしていると、女は視線をシュウゲツから俺に向けて、尋ねてきた。
それに倣うように、隣の若い女も俺を見てくる。
と、ゆーかこいつは、俺が部屋に入ってからずっと睨んできていたが。
睨み返してやると、ますます目尻を上げた。
強気な顔の通り、随分と勝ち気な女だ。
「ああ。ツルギ・イットウだ。あんたは?」
「ツルギ。この御方は、俺たち穏健派の旗頭であり、風雷剣神流の剣神でもあられる、カミナ・フウジン様だ」
改めて、カミナを見ると深い微笑みを浮かべた。
「よろしくお願いしますね? ツルギさん」




