43話 答え合わせ
「改めて自己紹介するね。サイカは、帝の娘で次期帝候補者の、サイカ・テンオウです。よろしくねお兄ちゃん!!」
出会ってから最高に眩しくて満面な笑顔。
人懐っこさ全開なその顔で、十一歳の少女は名乗りを上げた。
サイカは、やはり俺のにらんだ通りの人物だったわけだ。
幼い割に、剣の腕が達者だったのも帝の子供ならば納得する所だろう。
じいちゃんも、帝は強いと言っていたし。
「やっぱりお前が次期帝候補だったわけか」
「うん。でも良く分かったね? 名前は名乗ったけど、サイカの事を知ってるのは、上の人達だけの筈だよ?」
首を右に傾げて不思議そうな顔をする。
「都に来る前に、お前の存在の事は聞いていたからな」
俺にそれを教えてくれた、カゼマルやシュウゲツの顔が思い出される。
「ふーん。そうなんだ。それなら納得だね?」
今度は左に首を傾げて「誰から聞いたのかな?」と、言う。
「答え合わせも済んだし、素性が判明した今なら答えられるだろうからもう一度聞くが、何であの時に闇市なんかに居たんだ?」
一度はぐらかされた質問を繰り返した。
「父様や、城の人から聞いたの。都で良くない事や悪さしてる人がいるって。だから、そんな人がいたら成敗しようと思ったんだよ。何か、都のふんいきも悪いとか聞いたから、サイカの目で見てみようって」
帝城でもそう言う話はするんだな。
てっきり下々の民の事には、無関心を決め込んでると思っていたが。
穏健派とかもいるし、案外そうでもないのかもしれない。
「そうしたら、あのバクガイのおじさんが原因みたいだって分かって、闇市を調べていたら」
「俺を見かけたと」
サイカは頷いた。
「うん。何だか良く分からないけど、お兄ちゃんは闇市に出入りする人達とは違うなって感じて。びこうしてみようって思ってたらあの親子の事件が起こったの」
あの時あの場に居たのは、サイカなりの正義感から動いていたからなのか。
まだ幼いのに、大したもんだ。
俺なんて同じぐらいの時は、ただ強くなる事しか考えてなかったのに。
結果は散々だったけど。
「あの時、咄嗟に飛び出してたもんな」
「もう間に合わない! って焦ったよ。でも、お兄ちゃんが止めてくれた。それでこの人強い! 戦ってみたい! って思ったの」
「それで、決闘か。なるほど」
この短絡的な考え方は、まだ子供だな。
「でもでも! サイカの見る目は正しかったよ。お兄ちゃん凄く強いもん。下手したら父様よりも強いんじゃないかな?」
帝の強さは気になる。
テンオウ一族って事は、俺と同じ死剣眼を持ってるかもしれないし。
「まぁな。強くなる為に、死ぬ気で鍛練したからな」
鍛練に費やした二年間を思い出す。
その間は必死だったが。
いま振り替えると、凄まじい地獄を乗り越えたと思う。
「凄いなー! そんけいするよ! サイカも、もっともっと強くなりたい!!」
両手を胸の前に組んで、俺の周りをちょこまかと動き回るサイカ。
「ひとまず、お前が都の為に行動してるのは分かった。でも何で、そこまでして強くなりたいんだ? もう十分強いと思うが」
サイカは俺の質問に、「よくぞ聞いてくれました!!」と言うと、またも目をキラキラとさせた。
「サイカはね夢があるんだぁ! 剣の腕を上げて、剣神を越えて、父様よりも強くなって、世界で一番の剣士になりたいの!!」
「……世界で一番」
ここまで大きくはないが、俺もじいちゃんが生きていた時に同じ様な夢を抱いていた。
強くなって偉くなって、金を儲けてじいちゃんに恩返しをする。
そんな夢を。
それなのに、それを俺から奪った奴が――――
「お、お兄ちゃん? どうしたの? 急に怖い顔をしてるよ? また眼も赤くなって……」
「…………ああ、悪い。これは、気にするな」
じいちゃんが殺されたあの時の事を思い出したからか、無意識に死剣眼が発動していた。
最近、前よりもこの眼が発動しやすくなっている気がする。
感情の起伏で、簡単に。
仇がすぐ近くにいるからだろうか。
「……ふう」
落ち着け。
焦るな。
もう少しだ。
もう少しで、仇を討てるとこまで来ているんだ。
それまで激情は取っておけ。
「もう大丈夫だ。とにかく夢は大事にしろよ。人生は何が起きるか分からないし、頑張れる時に頑張っといた方がいい。これは、俺の経験則から来る話だ」
サイカには、是非俺の代わりに夢を叶えてもらいたい。
その気持ちを込めて、サイカの頭に手を置いた。
「……うん。分かった。サイカ頑張るね!!」
俺の気持ちを知るよしも無いだろうが、サイカには何か伝わったらしい。
力強く返事をする。
目にも力が入っているのが分かった。
「よし」
頭から手を離す。
「で、お前は次期帝候補な訳だが、そんなしょっちゅう城から抜け出して大丈夫なのか?」
身分的にも、サイカはかなりの重要人物だ。
そんなのが、帝城から抜け出して大丈夫なんだろうか。
「そんなの、ちょちょいのちょいだよ。一応サイカがお外出るときは、近衛隊の人が何人か着いてくるんだけど、堅苦しいから途中でまいちゃうんだ」
簡単に言っているが……。
そういや、ここ三日間。
近衛隊の奴等の姿を見ていない。
決闘をする度に、都のあちこちで騒ぎにはなっていたとおもうんだが、駆けつけて来る事もなかった。
……気にはなるが。
今は、いいか。
「……さて。そろそろ向かおうと思うが。ついでだから、サイカお前も一緒に連れていってやる」
「本当? やったぁ!!」
サイカは、両手を天に掲げ万歳した。
これからの話をするんなら、こいつの存在は重要だろう。
シュウゲツ達と会わせるかはどうかは、確認すればいいし、面白そうだからサイカに同行を許した。




