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4話 世界の勉強

説明会です。


 


 夕飯の後は、座学の時間だ。

 俺は今まで学舎に行った事がない。我が家にはそんな余裕はないからだ。

 畑を耕しているから、食べていくのは問題はないが、他の事にかけるお金はない。


 だから以前少しでも生活の足しになればと、俺でも出来る簡単な仕事をやろうともしたが、じいちゃんに反対された。

 何でも子供にそんな事させたくないのだとか。

 じいちゃんの様子を見ると、理由はそれだけでもない気がするんだけど聞いても教えてくれなかった。

 だから、いつもじいちゃんに世の中の事を教えてもらっていた。

 俺としては、分かりやすく様々な事を教えてくれるので満足している。


「この世界は、(みかど)がいる都を三つの(くに)が囲んでいる。その三つとは、水氷(すいひょう)剣神國、火炎(かえん)剣神國、風雷(ふうらい)剣神國をいう。國名が三大剣術の名前にもなっているのは、こないだ教えたな。その國をそれぞれ治めるのは、三人の剣神達。この世界で最強の剣士達だ」


 俺は頷いて理解している事を示した。


「うむ。そして、剣士には位がある。下から剣雑(けんざつ)剣範(けんはん)剣達(けんたつ)剣君(けんくん)剣神(けんしん)の五つだ。上の位になるほどに剣士としての実力は高い事を示す。剣神は三人のみで、剣君は九人といったように、上の位になるに従ってその人数は少なくなる。剣士が自身の位、平たく言えば身分を表すのに星が刻まれた羽織袴を着ているが、その星の数は剣神は五つ、剣君は四つと位が上がるほどにその数は増える」


 俺は質問した。


「なあじいちゃん。剣神達は三人いるんだろう? 三人の中では誰が最強なんだ?」


 じいちゃんは、俺が熱心に勉強しているからだろうか。

 嬉しそうな顔で答えてくれた。


「うむ。良い質問だ。三大剣術には、それぞれに相性というものがある。火炎剣神流は、風雷に強く、水氷に弱い。水氷剣神流は、火炎に強く、風雷に弱い。風雷剣神流は、水氷に強く、火炎に弱い。まさに三竦みじゃな。だから、誰が最強とかは無いだろう」


「それなら、三大全てを極めれば最強になれるのか?」


「いや。残念だが。それは無理だろうな。人は、一人につき一つの剣の適正が備わり、それを二つ、三つの適正を持つ事は出来ないとされている」


 一人につき一つの適正か。

 あれ?


「それなら、俺は? 俺は三大全てに適正がないと認定されたけど。それにじいちゃんはどれに適正があるんだ?」


 俺の質問にじいちゃんは、少し含みを込めて答えた。


「……いや。()()()()()()()()()()の適()()()()()


「ん? 何でだ? 一人につき一つあるもんなんだよな?」


「お前の父。ケンシロウもそうだったが、わし達の家系は少々特別でな。三大の適正は無い代わりに、ある特殊な剣術の才がこの血に流れている」



 特殊って……。



「マジかよ……そんな力が。すげーな!! だから俺には三大の才能が無かったのか。それでそれでその剣術の名前は? どんな力なんだ?」


 俺は剣術の才能が無いと言われ、剣士になるのも無理なんじゃないかと半ば諦めかけていた。

 そんな時にようやく聞けた才能という言葉に、逸る気持ちを抑えられない。


「それはもうちょっと修行を頑張って、ツルギが元服した時に教えよう。今それを教えても理解出来んだろうからな」


 そう言ったじいちゃんの眼は、いつもの優しいものとは違い、研ぎ澄まされた刀みたいなギラリとした眼光だった。

 俺は、始めてみるじいちゃんのそんな表情に少し恐怖を感じた。


「……そ、そうか。それなら修行頑張らないとな。よし! やる気出てきたぞ!」


 そんな俺にじいちゃんは、いつもの呆れた表情を向けて言う。


「お前は現金だな。剣術とは、もっと意識を高く持ってだな真剣にだな――」


 じいちゃんの小言は長い。

 それは約十三年間一緒に生きてきて学んだことだ。

 だからそれ以上言わせない様にしないと。


「あーはいはい。分かったから。続き教えてくれよ。続き」


「……お前は……ほんに……仕方ない奴だのう。おっほん! そして、この剣神達が治める三國は都にいる(みかど)を護り、帝の為に存在していると言ってもいい。今の世界は帝が世界の覇者で、三國は帝を護る仕組みにもなっておる」


 俺はじいちゃんに質問した。


「帝は、剣神よりも強いのか? 一番強い奴が権力を手にいれるんだろう?」


「帝の強さについては、秘匿にされておる。おそらく知っておるのは、上の位の者だろう。まぁ剣神達を従わせておるのだ、強いのは間違いないだろう。ただ、帝は絶対的な権力を持つ象徴でもある。だから本人ではなく、周りが強い可能性もあるがな」


 帝か。

 剣神をも従わせる存在。

 どんな奴なんだろうな。


「帝ってさ、強い奴なら誰でもなれるのか? 例えば俺もなれるのか?」


「いや。帝は古今から世襲と決まっておる。どれだけ力があろうがなれるのは、剣神までだろう」


「ふ~ん」


 何か狡い(ずる)な。


「さて。もうだいぶ良い時間だな。今日はここまでにしよう。うーむ歳だな教えるのも疲れるわい。ふう」


 肩と腰を叩き、息を一つ吐いた。


「ありがとうじいちゃん」


 ここは素直にお礼を言っておく。

 強さだけではなく、こうした常識もいずれ役に立つ。

 それを教えてくれるじいちゃんに、いつも面倒を見てくれる分も込めて。


「お前もようやくやる気を出した事だし、明日からは更に沢山の事を教えるからな。日課の量も増やすぞ」


「げっ!!」


 ヤバい。

 量を増やすという言葉。

 今まで何度も聞かされてきたが、いきなり日課が倍になった事もあった。

 嫌だと言ったってじいちゃんは言い出したら聞かないし。


「そ、そんなに頑張らなくてもいいって。程々にしようぜ。な? やりすぎは良くないって」


「お前はすぐサボりたがるな。そんな事では強い剣士になれん。お前にはまだまだ教えねばならぬ事が沢山あるのだから、しっかりと精進せい。お前には夢があるのだろう?」


「ある。俺は必ず強くなって偉くなるんだ」


 俺の言葉に満足したのかじいちゃんは一つ頷く。

 お陰で小言は軽く済んだ。


「ならいい。よし、今日は風呂に入って寝るぞ。疲れたわい」


 じいちゃんが先に入った後、交代して山小屋の外にある風呂に入る。

 湯船に浸かり星空を見上げながら、今日あった出来事を思いだしていた。


 今日も修行を頑張ったな。

 腹立つ事もあったけど、やる気が出る話しも聞けたし。

 何よりも嬉しかったのは、俺にも剣術の才能があったことだ。

 これで、これからの頑張りようで俺は夢の実現に近づける。


 昼間俺をバカにした男の顔が星空に浮かんだ。


「どうだ! 俺にだって剣の才能はあったぞ! 散々俺をバカにしやがって。強くなったら、お前なんかぶっ倒してやるからな!」


 昼間に面と向かって言えなかった鬱憤をこの場ではらすと、胸がすかっとした。

 俺の未来は明るい。

 明日からは、本気で修行頑張るぜ!!

ちょっと色々と情報を詰め込み過ぎたかもしれません。



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