26話 情報①
「『滅』について話せと言っていたが、何を聞きたいんだ?」
「全部だ。知ってる事を全て話せ」
どんな小さい事でも、知っておけば後々役立つかもしれない。
奴等を滅ぼすなら、情報の量は武器になる。
ただ、話を聞く前に一つやることがあるな。
「分かった。座って話そう長くなるだろうし」
そういうと、男とその仲間達がその場に座った。
俺は座る前に周りをぐるりと、見渡した。
「……」
「どうした?」
目を閉じ、周りの気配と物音を遠くの範囲まで探る。
近くから気配がするのは……動物だけだ。
人間は、いない。
「……大丈夫そうだな。悪い待たせた」
「何かあったのか?」
「いや……さっき『滅』の奴に、邪魔立てされたんだ。だから、一応近くに居ないか、確認した」
もう同じ轍は踏まない。
もし現れたら、話しながらでも確実に斬れる様に構えておこう。
「そうだったのか。アイツらの実働部隊は、いつ何処に潜んでいるか確かに分からないからな。俺達も周囲を警戒する様にするよ。しかし、不味いかもしれないな。『滅』の者に見られたのならば、ツルギの存在と、剣術の事は首謀者に報告されるだろう」
やっぱりあの場で斬れなかったのは、失態だったか。
こうなったら、仕方ねぇけど。
「多少動きずらくなっただけだ。俺のやるべき事は、変わらない。それじゃあ話してくれ」
俺もその場に座り、話しを聞く体勢を作った。
「分かった。まず『滅』の事を話す前に、俺達の事を話すよ。順を追って話した方が、ややこしくならないだろうから。俺達は、元三大の剣士が流派を問わず、國、都、この世界を守るとの大義により集まって組織された穏健派だ。俺はシュウゲツ・アキフユという。お前の名は?」
「ツルギ・イットウだ」
「そうか。ツルギは、都で今何が起ころうとしているか、知っているか?」
都が面倒くさい事になってるのは、カゼマルから聞いている。
「次の帝を決める為に、二つの派閥から後継者を立てて、貴族達がそれを使って権力争いをしてるんだろう? くだらねぇ」
俺の言葉に皆が、困った様な顔をした。
「はは……まさにその通りだな。やはり、下らない事だよな俺達もそう思う。こんな事で争う前に、治安の安定化や、食うのも困っている貧しい民達を救う等、先にやらなくてはいけない事は沢山あるというのに。本来ならば俺達や、貴族達がやらねばならない責務だ」
周りにいるシュウゲツの仲間達も、一様に頷いている。
確かにくだらねぇ争いしてるよりは、その方がいいと俺も思う。
「でだ。その次の帝を決める為の争いをしている一端が、俺達なのだが、そのもう一方が強硬派と呼ばれるさっきお前が戦かったスイダイ始め、『滅』の組織の者達だ」
出たな『滅』の名前が。
「強硬派は、『滅』の奴等が絡んでるんだよな? あいつらも、目的は権力なのか?」
「いや……強硬派の目的は帝に代わって権力を掌握する事だと、言われている。だが、『滅』の正確な目的はまだ不明なんだ」
何だハッキリしねぇな。
「言われている? 不明? 分からないのか?」
「……ああ。正直な話し、『滅』の狙いもだが、首謀者も特定出来ていないのが現状だ。強硬派に内偵を送り探りをいれているが、まだ情報を掴めていない」
「おい……何だよ。お前らも知らねぇのか。じゃあ、誰に聞けばいいんだよ」
「今は、まだ分からないという事だ。ただ、あれだけの規模の組織を動かしていく以上、かなりの権力を持つのが前提になる。そして、それが出来る者は限られる事から、怪しいと当たりをつけているのは五人だ」
「誰だ?」
「まず。火炎の剣神であるゴウカ・エンゴウ。これは、帝に近い権力を持ち、その剣術が化物じみているのもあるが、性格も豪快で、好戦的。また、より強い者が覇者となるべきとの、野心も持っている事から怪しいと踏んでいる。帝を陥れようと画策する事も考えられる」
火炎の剣神。
名前は覚えてないけど、剣君は確かに好戦的だったな。
「次に、水氷の剣神であるトウカ・スイセイ。これは、同じく剣神としての、立場から名前が上がっている。性格は、理知的で計算高い所はあるが、野心を持つ人物ではない事から、可能性としては、一番低いと思う」
水氷の剣神ね。名前を初めて聞いた。
そういえば。
他の二人の名前が出て、風雷の剣神の名が出てないな。
「ちょっと待て。剣神が怪しいなら、風雷のはどうなんだ? 他と同じく怪しいんじゃないのか?」
「いや。カミナ様はあり得ない」
ずいぶんキッパリと、言いのけたが。
「何でだ?」
「それは……我等、穏健派の頭がカミナ様だからだ」
なるほど。
だからか。『滅』の奴等に風雷の剣士がいなかったのは。
風雷のを除いた二人の剣神……そいつらが首謀者の可能性は。
「……」
待てよ……思い出した。
「……そういや。前に火炎の剣君を斬った時に、そいつは、どうしても首謀者を知りたかったら剣神に勝つ事だって言ってたな。何でも強い奴の前になら、姿を現すみたいな事を言ってたが。嘘をつかれたかもしれないが、もし本当の事なら、剣神は違うしれない」
「火炎の剣君を。……名前は分かるか?」
「いや。興味なかったから、覚えてない。ムカついたから斬ったけど」
それにシュウゲツは、苦笑いをする。
「はは……剣君をあっさりと」
「ホントに強いんだな」
「俺達よりも、だいぶ年下だっていうのにな」
「ツルギは今、いくつなんだ?」
シュウゲツが聞いてきた。
「十五だ」
その事に今度は驚きの顔をする。
忙しいな。コロコロと表情を変えて。
「まだ元服したてじゃないか! ……ツルギには、本当に驚かされる」
「俺が強いのは、自分でも知ってる。強くなる為に鍛練やったんだから当たり前だろう? それよりも、あとの三人は誰なんだ?」
シュウゲツは「コホンッ」と、咳を一つして続きを話し始めた。
「話が逸れたすまない。あと三人は、常に帝の側にいる者達だ。一人目は貴族達を統括する立場にあり、都でただ一人公爵の位を持つバクガイ公。この人物は、闇市にも発言力を持ち裏で黒い行いもしていると、情報も来ている」
うーん。
聞いた感じだと、強そうに感じないから違うだろうな。悪党っぽいけど。
火炎の剣君も、あの御方だかは俺より強いみたいな事言ってたし。
「次に、帝の近衛隊を指揮しているゲンゴウ将軍だ。いつでもこの男の意のまま、隊を動かせる。力もあり権力も持ち、可能性に該当するという意味で名前に上がった」
こいつは何とも言えないな。
立場上、腕はあるんだろうが。
「最後の一人は、帝の兄であり、宰相であるコウガイだ。これは、現段階で帝の次に権力を持つ事から三人の内の一人として名前が上がっている。ただ、今まで長年に渡って帝と共に都を機能させてきたのに、今更暗躍するとも考えにくいがな。性格も温厚で、平和を望んでいる」
「何でそれで、三人の中に名前が上がるんだ? 怪しくないんだろう?」
「……これは、ある筋の情報になるのだが。昔、当代の帝を決める時に、いざこざがあったと言われている。その事から、可能性としては低いかもしれないが、一応名前が上がっているんだ。だが、さっきも言ったが今更反旗を翻すとも考えにくい。可能性の一つとしてだ」
昔にいざこざね。
こいつも、今の所推測しても分かんないか。
これで怪しい奴等の名前が五人上がった。
「……この五人の中に……」
他にいる可能性も捨てきれないが、この五人の中に、俺の仇がいるとみてよさそうだ。
ただ、これだけでは特定までは出来ない。
帝ならば、全てを知るとスイダイが言っていた。
やっぱり直接帝に会って問いただすしか、ないのかもな。




