22話 鍛練②
ポイント、ブクマありがとうございます!
「こんなもんか」
敵の全滅を確認し、生滅刀を鞘に納める。
鍛練の一貫としては、中々だったか。
俺の足元に転がる五人分の死体。
地面に倒れ伏すそれらから視線を上げると、この戦いを見届けていた剣君の元へ歩く。
そいつは近づいてくる俺から目線を外さずに、構えも取ることなく佇んでいる。
最初は、恐怖で動けずにいるのかと、思ったが。
その顔は、驚きでも恐怖を浮かべた風でもない。
ただ目の前で起きた事象を分析でもしているかの様に、俺の眼から視線を外さずにいた。
「見てたと思うけど、お前の配下は全員斬った。そんで次はお前の番だが、死ぬ前に俺の質問に答えろ」
「……」
俺が話しかけても剣君の反応がない。
さっきまでは、片時も俺の死剣眼から目を離さずに見てきたのに、今度は何かを考え込む様に目を閉じる。
少しして何かに納得したのか、一つ頷いたあと目を開けた。
「…………本物か。ならば、配下が敵わぬのは道理。そして、その腕前の前には、俺もまた勝てんだろうな。だが……しかし。こんな小僧が死剣眼を何故持っているのかいまだに……信じられん……。もう少し、何者か見極める必要がある、か」
ボソッと呟くと、俺の赤い瞳を見つめながら探るように質問してきた。
「その眼を何故……お前が持っている? そもそもお前は何者なのだ。穏健派の味方とは思えないが」
「あ? 俺がどんな奴かはどうでもいい。そんなことより、質問してるのは、こっちだ。質問に答えろよ」
「……」
まただんまりかよ。
答える気がないのか。
さっきから会話が噛み合わないというか、反応がないコイツに俺のイライラは蓄積されていく。
「おい! 聞こえてんのか?」
「……」
「お前……いい加減にしろよ。何度も何度も」
尚も反応が薄いコノヤローに、殺気が溢れる。
腹立つ。斬っちまうか。
生滅刀を振ろうとすると、漸く反応をみせた。
「…………よかろう。お前が何者か分かるかもしれん。なんだ? 何を聞きたい?」
俺の殺気に反応したのか。
何なのかは知らねぇけど、やっと話す気になったか。
「はぁっ……やっとかよ。まぁいいや。お前も『滅』なのか? さっき助けた男がお前達を見て、そう言ってたが」
『滅』の言葉にピクリと頬が動くのが分かった。
さっきまで俺の言葉には無表情に近かったのに。
「…………なるほど。小僧……貴様は、あの御方に敵対する者だったか」
また出たよ。あの御方。
誰なんだよいい加減知りてぇ。
「そうだ『滅』も、お前らが云うあの御方も敵だ。で? あの御方ってのは、誰なんだ?」
「何故……貴様は、あの御方に敵対するのだ?」
さっきから、俺の質問には答えねぇで質問ばかりしてきやがる。
何なんだこいつ。
「お前……俺の質問には答えねぇくせに。質問ばかりすんじゃねぇーよ! 俺は気が短いんだ。答える気があるのか? 無いのか? 話すのか、死ぬか。どっちか選べ」
男に生滅刀の切っ先を向けた。
最悪、こいつから聞き出せなくても、あの男から聞けさえすればいい。
ただ、なるべくならこいつが知ってる情報があるなら吐かせたい。
「……俺とて、剣君を授かる一人。このまま敵に何もせずにする事は出来ん。例えお前に敵わぬとも己が信念の為に、逃げる訳にはいかん。まして、敵に情報を渡すぐらいなら、死を選ぶ」
左腰に刺さっている鞘から、長刀を抜くと構えを取った。
「あっそ」
こいつも話す気がない、と。
だったらさっさと斬るしかないか。
いや、でもな。
前もこうして火炎の剣君を斬ってしまって、せっかくの情報を聞き出せなかったんだよな。
確かにあの男から聞ければいいんだけど……勿体ねぇか。
何とかして聞き出すなら、斬るわけにはいかないよな。
「我は、水氷剣神流。位は剣君。名はスイダイ・コウゲツ! 貴様の名は何という」
俺がどうやって手加減するか考えていると、名乗りが終わっていた。
あ、やべ。聞いてなかった。
「なんだって? 考えごとしてて聞いてなかった」
「……貴様! 剣士の流儀は持ち合わせてないのか! 一対一の決闘の時は、名を明かすものだろうが!」
そんな事言われたって。
そんな礼儀なんて、教わってねぇから知らねぇーし。
「……ツルギ・イットウ。これでいいか?」
「ではもう一度だ。水氷剣神流。位は剣君。名はスイダイ・コウゲツ! いざ尋常に勝負だ!」
何か締まらない形になったけど。
まぁ。いい。
こいつにも、俺の鍛練の肥やしになってもらおう。




