21話 鍛練①
俺一人対、剣達八人の戦いが始まった。
まずは、仲間を斬られ人一倍怒っていた三人だけで戦うつもりらしい。
前に進み出てくると、俺を囲い込む様な陣を敷いた。
仲間を斬られたのが余程許せないのか、三人のその顔は真っ赤に紅潮させ、俺を睨みつけるその目は「ぶっ殺してやる。くそガキが!!」と言ってる気がする。
肌を刺す殺気と剣気を放出させると、ジリジリと草履の底を擦りながら、周囲を回り出した。
それに対し俺は、右手に生滅刀を握り、自然体でコイツらが仕掛けてくるのを待つ。
構えも取らない俺に舐められていると思ったのか、更に眼力を上げると、目を血走らせて睨み付けてくる。
意気揚々と出てきた割に、すぐに仕掛けてこないのは、死剣眼を警戒してるんだろう。
こいつらからすれば、この眼は得体の知れない物の筈。
俺が三大剣術以外の未知の剣術を使っている事は、分かった筈だから慎重に仕掛けて来ようとしてるんだろう。
相手の顔を見て、更にはその目を見れば何を狙ってくるのかも自ずと分かるものだ。
俺の性格としては、こっちから攻めていく方が合っている。
でも、それじゃ一瞬で終わってしまうし、何よりつまらない。
一人での鍛練は嫌と云うほどにやってきたし、一対多の鍛練は、こんな機会がないと出来ない。
だから経験を積ませてもらう為にも、こいつらには俺の鍛練に付き合ってもらう事にした。
そんな俺の意図を察したのか、やがて我慢ならなくなったのか分からないが。
二周程した後。
一気に仕掛けてきた。
「死ねぇぇぇい小僧がぁぁ!!」
「コウダイとカイエンの痛みを思い知れぇぇ!!」
「お前にも同じ痛みをー!!」
全員が刀を変色させると、一斉に振りかぶった。
確認出来たその色は赤と青。
斬った者を燃焼させる剣術と、凍結させる剣術。
それが三方向から迫ってくる。
「……」
それらを死剣眼でグルリと、視界の最大稼働範囲で見る。
そこには、死線が浮かび上がり、またそれぞれの剣の軌道が見えた。
すると、この状況下で、どう動くのが最善で最速なのかが死剣眼を通して、頭に映像として流れてくる。
その映像のまま、三方向から迫りくる剣撃を掻い潜る様に動き、それぞれに、正確に且つ、高速の一刀で斬りつけていく。
まずは一番近くまで踏み込んでいた男の刀を、頭を下げて回避。
ヒュン――
一人目に向けて一刀。
「――速い!! ごあああっ……!」
宙に舞い散る鮮血の中、その場で反転。
ヒュン――
二人目に一刀。
「――な、何で……がはああぁぁ!!」
顔付近にまで迫っていた刀を右横にずれて回避し、
ヒュン――
三人目に一刀。
「――そ、そんな……こと……があああ……!!」
ドサリッ
ドサッ
バタッ
同時に倒れる三つの死体を一瞥し、残りの男達に目線を向けると、皆が間抜けな顔をして呆けていた。
口をあんぐりと開け、目を見開き、実に滑稽な表情をしている。
暫く場が静まり返っていたが、やがて時が動き出す。
「一撃だ……と……」
「……何なのだ……小僧のあの動きは。我等とは、どれも異なる剣術……」
「どうやったら死角からの剣をかわせるんだ!?」
「ええい! 小僧があっ! 得体の知れない剣を使いよって!」
「全員でいくぞ! 五人ならば、今度こそ仕留められる!」
目の前で仲間を斬られようが、どいつもまだ戦意は衰えていないらしい。
言葉の通り、今度は五人で来るみたいだ。
何人で掛かってこようが、結果は同じだけどな。
この死剣眼は、死線を正確になぞらえられれば一撃で相手を殺せる。
その事は、二年前に覚醒した時に理解した。
だが、鍛えていく内に気付いたが、この眼の効果はそれだけじゃなかった。
視界は普通の人間よりも広範囲となりそこから得られる情報は増え、またその情報を正確に処理し、そこからさっきの様に、囲まれていようがどう動けば回避が出来るのか。
それが理解できる。
この目を通しての情報量が平常時と比べると、段違いになり、思考速度も上昇する。
どれだけ速い物体の動きも、眼で追えるし。
一対多など、不利にもならない。
まぁ。百人とかになると俺も自信ないけど。
「五人でも、十人でも結果は変わらないぞ。お前らじゃ俺には勝てない」
男達は、俺の言葉に更に怒りを濃くすると、顔を茹でタコの様に真っ赤にする。
頭の天辺からは、まるで湯気が出ているみたいだ。
あれで湯が沸かせるじゃないか?
「小僧がぁ! 知った風な口を!」
「貴様こそ、この状況が分かっておらんようだな!」
「舐めた口を叩いたこと、後悔させてやる!」
「我等を心底怒らせた罪を、死を持って償え!」
「あの世で悔い改めろ!」
図星を言われたからって、そんなに怒らなくてもいいのに。
ますます殺気を増すと、鬼の形相で同時に仕掛けてきた。
「まぁいいや。お前らにも、鍛練の肥やしになってもらうぞ」
五方向から挑んでくる敵を、迎え討った。




