表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/58

19話 穏健派と強硬派

ブクマつけてくださりありがとうございます!

 


 急ぎで黒煙の発生場所へと向かっていた。

 傾斜が激しい道を駆け、目的地へと近づくと空気に煙ったいものが混ざる様になる。

 更にその煙を追った先には真っ赤に燃える村があった。



「…………おいおい。まじでキナ臭い事になってんじゃねぇか」


 バチバチと音をたてる程に激しく建物は燃え、何人もの人間が血を垂れ流し息絶えている。

 どの死体にも炎症と凍傷の跡が見てとれた。


 更に村の奥からは、刀を打ち付け合う音と共に、悲鳴が聴こえる。

 そこに目線を向けると、襲撃したのが誰か分かった。

 この惨状を引き起こしたのは、山賊など低俗な存在ではなく、赤と青の羽織袴に身を包み、業物の刀を持つ三大の剣士達だった。

 刃を赤に染めて猛々しい炎で焼き払う者。

 刃を青に染めて周りを氷付けにしていく者もいる。


 何で、こんな何も無さそうな村を三大の剣士が……。

 それも一つの村を滅ぼすにしては、その人数も異常だといえる。

 こんな小さな村など、せいぜいニ、三人いれば滅ぼせるだろうに。

 それなのに、この場で確認出来る数は……ざっと十五はくだらない。


 そして、その明らかに過剰戦力といえる剣士達に、対抗する様に刃を交える者達がいた。

 そいつらは普通の村人達ではなく、一様に三大剣術を使い戦っている。


「……どうなってんだ。何で剣士同士が。仲間割れか?」


 でも襲撃されている方は、三大の羽織袴を着ていない。

 て、ことはカゼマルと同じく、()剣士とかなんだろうか。


「……もっと良く見ないと分からねぇな」


 ぐっと、足に力を込め、無傷なまま建つ平屋の上に飛び乗った。

 ここからなら村全体を見渡せる。


 ええっと。見た感じは……正規の剣士が優勢。

 三大の剣士十五人に対し、対抗する側は十……いや。

 今一人斬られたから九人になった。

 このままだと正規側が勝つのは時間の問題だろう。

 人数の不利もあるが、この場の一番の劣勢の原因は。


 一人一人の練度の差にあった。


「正規側は星三つ持ちか。いや……一人だけ星四つがいるな」


 三大剣術の剣士達は、星の数で強さが分かり、また強い者ほどその数が多くなる。

 星が一つ増えるだけで、その強さの差はかなり変わってしまう。


 つまり、今この場には一四人の剣達と、一人の剣君がいる事になる。


「それに比べて……」


 その正規の剣士達に対して、対抗する側にも剣達と同程度の力量を持つ剣士が何人かはいる。

 だが、その一人一人の強さには、ばらつきがある様に見える。


 でも、これでますます分からなくなった。

 正規の剣士がこんな小さい村を狙う理由はなんだ。

 それも、剣君や剣達まで出動させて。

 もし、村を滅ぼす任務があったとしても、星二つの剣範で十分だろうに。

 よっぽど確実に成し遂げたい事でもあるのか。

 いまいち状況が掴めないでいる俺の耳に、声が聞こえてきた。


「まさかこんな山村に隠れていたとはな。見つけ出すまで苦労させられたぞ。だが、今日ここで見つかったのが貴様らの運の尽き。謀反者には、大人しく斬られてもらおう」


 星三つをつけた一人の剣士が、相対する者に刃を向ける。


「ふざけるな! 強硬派が私利私欲の為に都を、この世界を手に入れようとしているのは既に掴んでいる。帝に対して弓を引こうとしているお前達こそが、本物の謀反者ではないか!」


 互いの主義主張を言い合いながら、激しくぶつかり合う二本の刀。

 振り下ろされる刀を弾き返し、またそれを弾く。


 対抗する側の剣士が言った言葉。

 謀反者?

 何言ってんだこいつら。


「もうそこまで情報を掴んでいるとはな。ならば話は早い。近々、帝にはご退場願う事になる。それが、()()()()()()()()()()()()()()


「お前ら! 帝に何をするつもりだ!」


「さてな。俺が知らされているのは、近々帝には消えて頂くということのみ。方法は、知らん。だがそうなるのは、必然と言えよう。

 この世界は力こそ全てそんな事は子供とて知る常識。ならばこそ、力ある()()()()が帝に代わり頂点に立つのが道理ではないか!」


「どの口が言うのだ! 人の事を謀反者だと良く言える!」


 ギィン、ギィンと両者が斬りつけ合う。

 使用する流派は、互いに火炎剣神流同士。

 三大の中でも威力重視の剛剣が、何度も刃を振るえば周囲に火の粉を撒き散らす。

 互いの肉を焼きながらも、仕掛けては防ぎ、また仕掛けられてはそれを防ぐ。


「……」


 何度かの斬り合いを見る限り。

 互角の攻防に見える。

 だが、僅かに実力は正規側の剣士の方が上だ。

 何度も刃を交える内に、形勢は対抗する側が不利な状況に傾いていった。

 激しく打ち付けられるその剛剣に対応出来なくなり、防御の構えを取る時間が増えてきた。


 何とか耐えているが、長くは持たないだろう。


 それから何度目かの斬り合いの後。

 俺の予想通りの決着となった。

 対抗する側の剣士は刀を弾かれ、左腕を斬られると体ごと吹き飛ばされた。


「ここまでだな」


「……ぐうううっ! ……おのれ……」


 左腕を押さえながら座り込む男に対し、剣士が近づきながら刀を向けた。

 次の一撃で、決着をつけるつもりか。


「心配せずとも、俺達強硬派がこの世界を正しく導こう。貴様はあの世で新しい世界を見ているがいい」


「……我々が、帝を守らねばならぬのに。こんな所で……くそー!!」


 男は右手で思い切り地面を殴ると叫んだ。

 全身で悔しさを表す。

 それを見た三大の剣士が、嘲笑う様な顔でカチャリと刀を上段に構えた。


「さらばだ。己の愚かさをあの世で悔いるがいい」


「……申し訳ありません。あなた様の刃として、『滅』を滅ぼし、御身をお守りしたかった……」



 おい。

 今何て言った?

『滅』って言わなかったか?


 何でこいつが知ってるのとかは、この際どうでもいいとして。

 俺が聞きたかった言葉。

 それが聞けた事に、俺は。



 口許が歪に、にやけているのが自分でも分かった。



「ははっ!! 見つけたぞ手がかりを!!」


 数日前に斬り殺した剣君からは、情報を聞き出せなかったが。

 こいつからなら情報を聞ける筈だ。

 だから。

 こいつは、死なせるわけにはいかない。



 死剣眼発動。



「死ねぇい!!」


 三大の剣士が全力で刀を振り下ろそうとした瞬間。


 ヒュン――

 すぐさま屋根の上から最速の一刀をお見舞いした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なにやらきな臭いですね。 強硬派と滅の関係性も気になるとこです。 そして帝を護る勢力と引きずり下ろそうとする勢力があるようですね。 まあそれはさておき、ツルギ、こんな奴等は切り捨ててしまえ!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ