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18話 予感と胸騒ぎ

誤字報告頂きました。

ありがとうございますm(__)m

ブクマも増えて来て、本当に嬉しいです!

 


『滅』の首謀者が誰なのか。

 それを知るためには。

 やっぱりじいちゃんの師匠が遺したとかいう、手がかりを探すしかないのかもしれない。

 どんな方法でもいいから、そろそろ情報が欲しいな。


「……あー。でも今は、いい加減風呂に入りてぇな……」


 いちゃもんをつけられた町を最後に、もう三日も風呂に入れてない。

 現在俺は、ヤスマから五日程移動した所にいる。

 火炎の奴等を斬った後は、都まで続く山道を黙々と一人移動していた。

 道は、深い森林と高低差が激しい山で、徒歩だとそれなりの距離と苦労がつきまとう。

 そこを突っ切っていかないと、俺が住んでた所からは都にいけないから仕方ないが。

 せめて馬車とかの移動方法を調達すれば良かったかもな。


 元々山籠りを何年もしていたし、山での生活は慣れている。

 道具もあるから飯と寝るのにも問題ない。

 ただ、一つだけ困った事があるとすれば。

 風呂に入れない事だ。

 川を見つけては、小まめに水浴びをしたり、なるべく小綺麗にする様にしてたんだがなぁ……。


「……臭ぇ……な……」


 その匂いは、自分でも不快に感じるまでになっている。

 だから早く風呂に入りたい。

 無い物ねだりをしても、仕方ないのは分かってるんだが。


 まぁ……でもこの移動も、あと少しで終わる。


 皮袋から地図を取り出し都までの道のりを確認する。

 町で買い物をしている時にユリからは、ヤスマから都までは六日程の距離だと教えてもらった。


「……だいたいこの辺りまで来てるから……あと……一日って所か」


 地図で都までの距離と、ここまでの移動に費やした日数を計算すると、そのぐらいで到着することが分かった。


 都に着いたら、まず風呂に入ろう。

 復讐と風呂は関係ないが、やるのなら万全の準備をして望みたい。

 旅の疲れで手元が狂うなんて事になったら目も当てられない。

 俺にとって、最悪なのは復讐が失敗に終わること。

 それだけは、何がなんでも防がないといけない。

 そうならない為にも、やり残しがないようにしないとな。


 廃屋にあった壊れかけの椅子を引っ張り出し、そこに座って雨が弱まるのを待つ事にした。


 一時間程だろうか、ボッーとしていると雨の勢いが弱まってきた。

 次第に分厚い雲は消え、陽がその姿を見せる。


「……雨はもう、大丈夫そうだな」


 衣類は依然まだ湿ってて気持ち悪いけど、仕方ない。

 廃屋から出て空を見ると、陽はギラギラと燃えている。

 少ししたら乾くだろう。生地は薄いし。


「よし。あと一日だ。頑張りますか」


 気持ちを切り替えて、雨で柔らかくなった地面をまた歩きだした。


 周囲の気配を探ると、動物達もまだ巣に籠ってるのか気配がしない。

 この分なら、いい感じだ。

 あいつら、俺を見ると集団で襲いかかってくるから。

 無駄に死体を増やすだけなのに、バカな奴等だ。

 普通、野生の動物なら危機管理能力とか高くて強者には近づかない筈なんだが、何度も仕掛けて来やがって。


 もしかして……。

 俺って弱そうに見えるんだろうか。


「……もっと威圧とか出した方がいいのか? こう……睨む様に相手を見るとか」


 真面目に俺にとっては重要な事を考えながら山道を歩く。


「もっと鋭く……こうか? いや……こうだな。鏡ねぇから良く分からねぇな……。ん? これは……」


 廃屋からある程度進んだ先で、出来て間もないたくさんの足跡を見つけた。


 ここは都と他の町とを繋ぐ参道だから人の往来が激しい場所だ。

 人間の足跡があるのは、当然だろう。

 だが、雨宿りしていた時に俺の前を通ったのはいなかった。

 ということは、都から来た人間の足跡って事になる。


 普通に考えれば、別におかしな事ではない。

 山に登るのは人それぞれに理由はあるもんだ。

 商人達が大勢で山菜を取りに来たり、狩猟に来る事だってあるだろう。

 これらから特段不思議な事ではないと、思うことは出来る。


 ただ。

 足跡が続く先から立ち上る黒煙や、何かが燃える匂いと共に悲鳴が聞こえなければだが。


「……また山賊でも暴れてるのか?」


 さっき地図で見た感じでは、煙が上る辺りには小さい村があった。

 可能性としては、山賊の奴等が村を焼きはらったのかもしれない。

 俺には関係ない事で、気にせずにこのまま都に向かってもいい。


 だけど。


「……何だろう。この胸騒ぎは」


 歩きだそうと思っても、何故か足が重い。

 それに、俺の勘が告げている。

 そこに行けと。

 行かないと後悔するぞと。


「……気になる。仕方ない」


 早く都に行きたい心を堪えて自分の勘に従い行動することにした。

 もう一度黒煙の行方を確認すると、二又の右側の道から煙が立ち上っている。

 勘の正体を気にしつつ、急ぎ駆け出した。

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