17話 山移動
よろしくお願いしますヽ(〃´∀`〃)ノ
「ちっ。雨が酷くなってきやがった」
都へと続く山道を移動中に、容赦ない雨に襲われた。
ついさっきまで雲一つない快晴だったのに、あっという間に黒い雨雲が山を覆うと、ポツポツと水滴が空から落ちてきた。
それは数分もしない内に一気に勢いを増し、ザッーと激しい雨となってその下にあるものを問答無用で濡らしていく。
「……山は好きなんだけど、この天候が変わりやすいのだけは、嫌いだっ」
そんな気まぐれでわがままな天気に思わず文句を言いながら、何処か雨宿り出来そうな所を探す事にした。
全力で駆けるその足に、地面の窪みに溜まった泥水がかかった。
「うわっ! ……くそっ……最悪だ」
もはや滝の様な雨量と、耳障りな雷が鳴る中を、尚も走り全身がぐしょ濡れになる頃。
ようやく雨をしのげそうな廃屋を見つける事ができた。
急いでその下に駆け込む。
「……所々、屋根に穴が開いてるが……外にいるよりはマシだろう。とりあえずは、ここで勢いが弱まるのを待つしかないか。しかし、動物の群れに襲われるかと思えば、雨で濡れるしで……今日は本当、ろくな日じゃねぇ」
己の運の悪さに思わず嫌気がさす。
「あーあ。酷ぇなこりゃ……ぐしょぐしょじゃねぇーか。はぁ……俺が何をしたってんだ……」
改めて雨の被害を見れば、髪からは滴がしたたり落ち、身に纏う物は悉く雨を吸い込んで肌に貼り付いていた。
皮袋から乾いた布を取り出しゴシゴシと頭と体を拭いていく。
当然ながらどれだけ拭いたところで、衣類は乾かない。
それでも。まだ湿ってはいるが、水気を取り除けたから拭いた甲斐はあったか。
「……うーん……」
濡れた事により、強制的に通気性が良くなった羽織袴。
雨と共に強くなっていく風。
「……やっぱり、少し肌寒いな」
雨で体温が下がった体が、温めろと言っているかの様に少し寒気がした。
季節柄、このままでも風邪は引かないと思うけど一応火をおこしておこう。
服も乾かしたいし。
「こういう時に、三大剣術が使えれば楽だよな。ちょっと刀を振れば火も水も出せるんだし」
そうすれば濡れたこの服も簡単に乾かせるのに。
「まぁ、三大剣術の才能が無い俺が言っても仕方ねぇけど」
皮袋から薪用の道具類や専用の布を取り出し、火をつける。
パチパチッと、赤く燃える火を見てると、嫌な事を思い出した。
「……そういえば。あの火炎の剣君から、『滅』の情報を聞き出せなかったのは失態だったな。惜しいことした」
ヤスマでユリ達と別れ都へと向かった俺は、火炎剣神國の領地で火炎剣神流の奴等に絡まれた。
そこそこの大きさの町で夕飯を食ってると、そこにやって来た剣範の集団に下らない事でいちゃもんをつけられた。
所詮は弱者の遠吠えと、バカどもの相手をしないで無視してると、俺が剣を持っている事に気づいた連中が剣術の話しを持ち出した。
流れで俺が三大剣術を使えない事が分かると、その場にいた全員で才能無し、剣士の恥だとバカにしてきた。
そういうのに慣れていた俺は、適当にあしらっていると、その態度が気にくわないと今度は殴りかかってきやがった。
それをかわして、ブサイク面を殴り返すと、鼻血を出しながら刀で斬りかかってくるというクズっぷり。
命は惜しくないが目的を果たす前に、しかもこんな奴等に、素直に殺される気はないので、自衛でそいつらを斬ったら剣君まで出てくる始末。
俺は悪くねぇと、言ったんだが。
衛兵も呼んで捕まえようとしやがった。
それでも逃げつつ、雑魚を始末して剣君と戦う事になった。
剣君の…………何て名前だったか忘れたけど、そいつは『滅』の首謀者を知ってる風だった。
教えろと言っても教えてくれないし、挑発されるし、勝負を挑まれるしで、思わず斬っちゃったけど。
「……あれは、失敗だったな」
やっぱりあの時、殺さないで拷問でもすれば吐いたのかもしれない。
今更悔やんだところでもう遅いが、もっと上手いやりようがあったと思う。
昔から俺は、売り言葉に買い言葉でケンカになるな。
いちいちそれじゃあ、駄目かもしれない。
もっと堪え性になれる様に頑張らないとな。反省。