15話 恩返しと買い物①
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カゼマル達と共に、外堀にくくりつけられた木戸を抜け、宿場町ヤスマに入った。
石畳で出来た歩道が奥まで続き、長屋が建ち並んでいるのが見える。
額に布を巻いた職人が、掛け声をかけながら木材を協力して運んでいた。
「小さい町とはいえ、中はちゃんと舗装されてるんだな」
道の両脇には、木造の建物が並び、少なくない人々がいて中々賑わいがある。
屋台等も並び、売り子が客引きをしていた。
「ツルギさん。この先に商店街があります。蔵もその一画にあるので、すいませんが先にそちらに寄らせてもらいますね」
「……ああ」
結局。
俺の意思は反映されずに、あの場にいた全員で行動することになった。
俺は一人の方が気楽だし、群れて行動するのが苦手だ。
だから俺一人でと断ったが、『恩返しさせて下さい』としつこい。
この女は、自分が年上で俺が年下だからか、甲斐甲斐しく何かにつけて世話を焼きたがる。
それでもいらないと断ると、涙を溜めた眼差しで見つめられた。
突っぱねるのも後味が悪いし、諦めた。
「この町はですね。小さい所ですが良い人ばかりで、それに品揃えも結構いいんですよ。それにですね――」
今もユリが町の説明をしてくれているが、それを聞き流しながら歩いていく。
すると、民家の補修をしていた職人達が、デカイ声で話していた。
その話の内容が聞こえてくる。
「最近商売の方はどうだ? 儲かってるか?」
「う~ん。あんましかな。注文は変わらず来るんだがよ……材料が高くてあんまし利益に繋がらねぇわ。お前んとこはどうだ?」
「俺のとこもだよ。急に物価が上がって、仕事やっても金にならねぇ。こんな状態になったのも、確か数ヶ月前ぐらいからだよな?」
「やっぱりかどこも同じなんだな。そうだ確かにそれぐらい前からだわ。都で何かおきてんのかな」
「あそこで何かあると、俺達の商売も影響出るからな。何があるか知らねぇが、早く元に戻って欲しいもんだぜ」
おっさん達が話している内容は、さっき俺が聞いたのと関係あるんだろうな。
貴族達のくだらねぇ権力争いの影響が出始めてる。
俺と同じく足を止めて聞いていたユリが、職人達を見ながら話し掛けてきた。
「こんな辺境の地まで、影響が出ているんですね。これ以上被害が大きくならないといいのですが……」
その顔には心配だと書いている。
「そうですね。これも、貴族達が動いているからでしょう。もし争いが大きくなって武力でぶつかり合う様になったら……怪我人や犠牲になる人達も出そうで心配です……」
カゼマルは、暗い顔をしていた。
事情をこの中では一番知っているからこそ、その度合いも高いんだろう。
「用心棒や護衛の数を増やしたくても、カゼマルさんの様な方も少ないですしな。何か手を打てればよいのですが」
シュウドウじいさんも、顎髭を撫でながら思案する仕草をした。
皆が不安になるのも分かる。
俺にも世の中がキナ臭い方向に向かっているのは、伝わってきていた。
***
町の所々でも不安がる声が聞こえる中、ユリ達が所有する蔵の前に着いた。
カゼマルが張り切ってせっせと動き、荷物を卸す。
それから商店街で買い物をすることになった。
シュウドウじいさんとは、ここで別れユリとカゼマルと三人で店の方に来ていた。
「ツルギさんは、衣類を一式買い揃えると言っていましたよね?」
「ああ」
「それでしたら。これなんてどうでしょうか?」
商品棚に置かれていた、一着を手に取り俺にあてがって見せる。
「ツルギさんにはこの白色の羽織袴が似合うと思いますよ。ツルギさんは、眉目秀麗ですし、それにその黒髪と、蒼い瞳には白が似合うと思うんです。ツルギさんは、どう思いますか?」
そんな意見を聞かれた所で、俺の答えは一つだ。
「……俺は何でもいい」
衣類等は、着られる物であれば何でもいい。
似合う、似合わないとかもどうでもいい。
第一、俺に何が似合うとかそんなの分かんねぇし。
「そうですか? ツルギさんは、もっと色々とその容姿を生かした方がいいと思うんですけど。よし! それではこれに決めちゃいますね。次は――」
この様に。
この店に来るまでに、ユリは俺に合いそうな商品を見繕ってくれた。
生き生きと自分の買い物ではないのに実に楽しそうに。
しかもユリの感想付きでだ。
「……」
俺としては衣類なんて何でもいいと言ったし、ユリが勝手に決めてくれて構わないとも言っている。
それなのに、一つ一つの商品を見つけては、意見を聞いてきた。
正直。
それもうざいんだが、ユリが笑顔で聞いてくるのでおざなりに出来なかった。
しつこい様だが、別に肌につける物なんか、きちんとさえしてれば何でもいいんだが。