14話 帝の容態
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「派閥同士がぶつかる云々は、うざいが正直どうでもいい。帝は病魔に侵されてると、言ったな? 死にそうなのか? 後継者を立てないといけない程に」
俺は帝が『滅』の首謀者の可能性もあると思っている。
だから俺が殺す前に病なんかで死なれると困るんだ。
こんな事で死なれたら、俺が自決するのを踏み留まってまで鍛練に費やした二年間が、無駄になっちまうじゃねぇーか。
でもカゼマルの話しを聞く限り、事態は俺が思っている程、単純ではないのかもしれない。
じいちゃんの手紙にも帝の近くにいる奴が首謀者ではないかと書いていた。
じいちゃんは、俺よりも『滅』の事に詳しいのに、何で帝が首謀者だと疑わなかったんだろうか。
そこに何か引っ掛かりを感じる。
もしかしたら、まだ何かがあるのかもしれない。
いずれにしても、ここで都の情報を聞けたのは大きい。
可能性の一つとして、帝を斬る事になったとしてもそれを成す為には情報は必要だ。
帝という立場上、多くの配下もいて警備も万全だろう。
状況的にも、それを成す機会を作るのは難しいことも予想される。
だからこそ、あらかじめ内情を少しでも知っておけば、その混乱に乗じて動きやすくなる。
この情報が吉と出るか凶と出るかは、分からないが。
一つだけ確かなのは、例えそいつがどれだけ偉い奴だろうと、じいちゃん達の仇なら関係ない。
俺から全てを奪ったんだ。
そんな奴は絶対に生かしておかない。
必ずこの手で斬る。
帝の容態を聞いた俺の質問に、カゼマルは答えた。
「ツルギ殿申し訳ない。僕では帝の容態までは……情報統制もされているみたいで分からないのです。それに、僕がここまでの話を知れたのも風雷剣神のカミナ様のお陰なのです」
「カゼマル殿が言われる通り、ここまでの情報は流れていません。わたしも商売柄、情報や噂が降りてくるのは早く、都が慌ただしい事は知っておりますが、帝の容態を聞くのは、初耳ですので」
シュウドウじいさんは商人でも、有力だと言ってた。
それが知らないって事は、そういうことなんだろう。
「なるほどな」
俺が応えるとカゼマルは一つ頷き、続きを話し始める。
「話を戻しますね。勿論、正義の心を持ち真面目に職務に励む貴族達もいるのですが。どうしても、発言力があるのが今の強硬派ですのでこういう事態になっています」
そういう権力を持つのが傲慢になると、理不尽を生み出すもんだ。
しかし。
「本当にくだらねぇ……」
俺のこぼした言葉に、困った顔をしてユリが教えてくれた。
「あ、でも。國によっては治安は変わってきたりもするんです。良識を持っている豪族もいて、私達の様な力を持たない人達を守ってくれる方もいるんですよ。そういう方達が集まるのも、それぞれの國を治める剣神の人柄によって國の在り方も変わって来たりもするんです。三つの國は、それぞれに特色を持っていますしね」
三人の剣神に三つの國か。
さっきカゼマルからは風雷の剣神の名前は出たな。
どんな奴等かはどうでもいいな。
興味はない。
敵対するのなら、斬るだけだ。
それからは、ユリと用心棒が話し込んでいたが、俺は加わる事なく暫く馬車に揺られた。
そして陽が落ちた頃。
ユリから到着を知らされた。
「ツルギさん。着きました。宿場町ヤスマです」
ユリの声に顔を向けると、町名が書かれた看板が立っている。
一応地図で確認すると、俺が来たかった所で間違いない。
馬車の荷台から降りて町を見てみる。
そんなに大きい所じゃないな。
商店街や、宿場、剣術道場の支部があるぐらいだ。
一応それぞれの國には、その國以外の剣術道場がある。
火炎剣神國には、水氷と風雷の道場がある様に。
本部はそれぞれの國にあるが。
俺としては、必要最低限の物が手に入れば文句はない。
そういえば、シュウドウじいさんが商店に話しを通してくれるみたいだから、少しぶらっとしてから買い物だな。
「世話になった。じゃあな――」
ユリ達に声をかけ、町に入ろうとすると呼び止められた。
「あ! ツルギさん! 待ってくださいまだ先程のお礼をしていませんよ! ほらほらおじいちゃんも!」
ユリがシュウドウじいさんの側まで寄りその背中を押した。
「ああそうです。ツルギさん少しお時間を頂きたい。痛たた……荷台に乗ると、腰が」
シュウドウじいさんが腰を叩きながら、俺の所まで歩いてきた。
「ツルギさん。おじいちゃんが話を通したら、一緒に商店を回りましょうね」
ユリが余計な事を言い出した。
「いや。買い物は、俺一人で――」
俺は一人で買い物した方が気が楽だ。
だから断ろうとすると、カゼマルが話を被せてくる。
「僕も一緒にいいですか。必要な物を買いたいのですが、一人だと寂しいなと」
「ええ。それでは皆で行きましょう。まずは蔵までいかないとですね。荷を置いて、改めてお二人にはお礼をさせて頂きますね」
「……いや。だから俺は一人で――」
「ありがとうございます。僕も荷物を卸すのを手伝いますね。先程の失態の汚名返上です」
聞いてねぇーし。
勝手に話しが進んでいくし。
「カゼマルさんありがとうございます。あ。ツルギさんは気にしないでくださいね。私達でちゃちゃっと終わらせますので。少しだけお待ち頂ければ」
「……」
「ほら! ツルギさん! こちらです! いきましょうよ!」
またユリに右手を引かれる。
「……ああ」
まぁ。
いいか。
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