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13話 カゼマル・ゼンドウ

よろしくお願いします!

 


 依然として、馬車に揺られながら町へと向かっていた。

 ユリから都の情報を聞くと、今度は用心棒が話し掛けてくる。

 入れ違いの様に直ぐ様話し掛けてきた所を見ると、話しに加わりたくてうずうずしていたみたいだ。


「ツルギ殿。僕も一つお尋ねしたいのですが」


「……なに?」


 今度はお前かと、こいつの顔を見る。

 俺は人と話すのが好きではない。

 いや、なくなったというのが正しいか。

 二年前までは、人と色々な話しをするのが好きだったのだが、じいちゃんを失ってから、こういう事も何もかも面倒くさくなった。


 どうせ俺は目的を達成したら自決してじいちゃんの所へ行く。

 だから、他人と仲を深める事や人と接するのが煩わしい。

 出来れば話しかけてこないでくれると助かるんだが。

 それが思いっきり顔に出ている俺に、こいつはまったく気にした風もない。


「あ! 僕とした事が名乗ってませんでしたね。これは失敬。僕はカゼマル・ゼンドウといいます。よろしくお願いします」


 俺の拒絶を気にもとめていないように頭を一つ下げた後、更に距離を詰めて質問してきた。


「いや~ツルギ殿の戦い見させてもらいましたが、さっきの剣術凄かったですね! 僕では傷しかつけられなかったあの甲冑を、あれだけ華麗に、一撃でバッサリとするとは!! 素晴らしい腕前!! 見た所、火炎剣神流でも水氷剣神流でも、風雷剣神流でもなかった気がするのですが凄い剣術ですね。もし問題なければ僕にも教えてもらいたのですが!」


「……」


 何か裏があって近付いてきたと思ったが。

 こいつの目は、濁りの無い澄んだ物だった。

 キラキラと光っている様にさえ思える。て、ゆーか眩しい。

 悪意の様な物も感じないし、俺が死剣眼を使える事に、探りを入れている訳ではない……か。


 だが。

 正直に教えてやる義理もない。


「……悪いが」


「あ! すいません。ぶしつけでしたね。初めて会う人にしつこく。僕は強い剣士を見ると、どうもワクワクしてしまって。好奇心を抑えられないといいますか。でもあれだけお強いなんて凄いなぁ。歳も僕よりも若いのに」


 やっぱりこいつからは、悪意や殺意の類いは感じない。

 まだ油断出来ないが、悪党ではないのは分かる。

 もし、不穏な動きを見せたり、『滅』の者なら即刻斬るけど。


「……そういえば。お前は風雷剣神流か? 刃が黄色に変色していたが」


 俺も気になっていた事を聞いてみた。


「そうです。今は正式な剣士ではないですが、國で剣術を教わってました」


「何で今は違うんですか?」


 ユリがカゼマルに質問する。


「僕は、もっと自由に大勢の困ってる人達を助けたくて。正式な剣士だと、動きが制限されてしまうんです。基本的には、風雷剣神國内しか活動範囲が無いというか、それが嫌で自分から上の人に言って抜けさせてもらいました。それからは、用心棒を中心に生業を立てています」


「そうだったんですか。それは素晴らしい志ですね。今の御時世には、困ってる人は幾らでもいます。力が無いと何も出来ませんのでカゼマルさんの様な方がいると、助かります」


 カゼマルは頭を掻きながら照れ臭そうに言った。


「いや~先程の失態をしている様ではまだまだです。志が高くても、実力が伴わないと何も出来ませんので」


 確かにな。

 カゼマルの言うことも一理ある。

 力が無いと、家族も守れない。

 弱者は強者に全てを奪われるんだ。


 だから俺は、二年間鍛練に費やした。


「……俺は暫く振りに、山奥から降りたが。前はこんなに治安は悪くなかった。何かあったのか?」


 山籠りをやめた途端、山賊と野盗に出くわしたからな。

 それも僅か半日の間に。

 たまたま運が悪かった可能性もあるが。


 その問いに、カゼマルが言いづらそうに教えてくれた。


「……それは。今都では大きな動きが起きていてそれが原因で、ばたばたしていると言いますか、それの影響が出ているんだと思います」


「ばたばた? 何かあったのか?」


「はい。都では今、次の帝を決める為に権力争いが起きているのです。それで、その動きが増すと同時に貴族達も権力争いが拡大しています。その弊害でこんな事になっているのだと思います」


 そんなくだらねぇ理由で、こんな事になってんのか。

 お上のせいで平民は割りを食う。

 振り回される方の身になれってんだ。


 それに、カゼマルは困ってる人達を助けたいと言っていた。

 だからこそ、今の現状に対しては思う所があるんだろう。

 何かを含んだ様な顔をして続けた。


「そもそもこんな事になっているのは、穏健派と、強硬派の両派閥がぶつかり合いをしているからなのです。

 今までは、穏健派が帝を支える形で権力を握っていたのですが、帝が原因不明の病魔に侵されてからは、次の帝を決める為に穏健派と強硬派からそれぞれ後継者が立てられました」


「後継者は帝の子供達か? 確か世襲で決めるんだったよな?」


 じいちゃんからもそう教えられた。


「そうです。現帝であるオウガイ様の血を引く御子息です。両派閥とも、自分達の後継者を勝たせる為に画策したり、その中心となる者を消したりと、その動きは苛烈を極めていっています。そして、貴族達がそこまでするのは、まだ幼い後継者をその戦いに勝たせる事で即ち次の帝を……その裏から操れる事に繋がるからなのです」


 様は、表立ってはまだ子供の後継者を帝にさせ、政務や実権を裏で貴族達が握る。

 その為の、ぶつかり合い。


「確か。後継者はどちらもまだお若い筈ですよね?」


 ユリがカゼマルに確認した。


「そうです。どちらもまだお若いですが、剣の才と腕前は凄まじいらしいです。そこは帝の血を引いているだけあるかと。それで、現状は強硬派の方が優れているらしく、その事から強硬派が権力を握るようになりました。それからです今回の野盗や山賊の類いが増えたのは。それらを取り締まる職である憲兵も又、金を貰い黙認しているのですよ」


 上が腐敗すると、組織は駄目になるってじいちゃんも言ってたが。

 その権力の頂点が帝で、その次の後継者が二人。

 どちらも剣を扱い、しかも腕も立つと。

 色々と情報が揃ってきたが、今俺が一番気になる事は別にある。


「派閥同士がぶつかる云々は、うざいが正直どうでもいい。帝は、病魔に侵されてると、言ったな? 死にそうなのか? 後継者を立てないといけない程に」


 この事が。

 今一番知りたい情報だった。

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