12話 都の情報
少しずつブクマが増えてくれて、ありがたい限りです!
楽しんでもらえると幸いです。
町へと向かう前に、傷付いた人達の手当てをすることになった。
ユリも商人達もこういう事態には慣れているのか、怪我の治療に無駄な動きはなくテキパキと動いている。
商売柄、今回みたいに命を狙われたり、思わぬ所で怪我を負ったりもするんだろう。
いくら用心棒や護衛を頼んだ所で、危険とは隣り合わせ。
世の中には様々な職業はあるが、さっきみたいに殺されそうになりながらも、この仕事をやり続けているのには何か理由があるんだろうか。
もし、俺が復讐など選ばずに、まっとうな人生を選択していたらどんな仕事をして、どんな人生を送っていたのか。
そんな事を考えながら、ユリ達を見ていた。
全員の治療が終わり動き出せる様になると、俺は荷台に乗せられた。
同じ荷台には、ユリと、そのユリの祖父のシュウドウじいさんと、用心棒が乗り込む。
馬車は他の商人達が動かして町へと動き出した。
さっき会話の一幕を見ていたが、このシュウドウじいさんは、この集団で一番位が高いのだとか。
どちらにせよ町まではまだ距離があった。
歩いていくのも怠かったし、乗せてもらえたのはついてたな。
もし徒歩だと、今日中に着けたか怪しい。
案外広い荷台の壁に体を預け振動に身を任せていると、隣に座るユリが話し掛けてきた。
「ツルギさんは、旅の方ですよね?」
「……ああ」
「町へはお買い物か何かで行かれる予定だったのですか?」
「……衣類とかを一式買い揃えに」
「そうでしたか。それでしたら何かお返し出来そうですね。ね? おじいちゃん」
ユリが対面に座るシュウドウじいさんに話しかける。
「ツルギ殿わたし達は店に品を卸し、またそこで販売もさせてもらっております。お買い物をするのであれば、料金がかからない様に、商店の方へ話を通しておきます。あとそれとは別に、もう暗くなって来たので今日は宿場に泊まられるとよいかと。宿代も、わたしが出させてもらいますので。こちらも話を通しておきます」
シュウドウじいさんが嬉しい提案をしてくれた。
買い物が安くなるのは正直助かるし、それに、宿泊代も浮くのはこれからの旅を考えるとありがたい。
じいちゃんが俺の為に遺してくれた金は、結構な額がある。
でも、なるべくなら無駄遣いはしたくないと思っていた。
ここは素直に甘えさせてもらおう。
「助かる。それと俺からも一つ聞きたいんだが。町を出た後、都に初めて行くんだが、何か情報はないか?」
俺の質問にはユリが答えてくれた。
「都には初めてですか。それではどの様な場所かも知らない感じですか?」
「ああ」
じいちゃんからも教えてもらってない。
その辺の詳しい事を聞く前に、奴等に殺されたから。
「ではそこから説明させてもらいますね。都はこの大陸の中央に位置し、また三國を支配する帝様が居られる場所になります。三國は、それぞれ剣神を領主として独立した國にはなりますが、実際は帝様が実権を握り、三國の物流は全てここに集まる様になっています。
その為、正規のお店では豊富な品揃えがあり、……あまり大きな声では言えませんが、闇市ではお金を支払えば、手に入らない物はないと言われております。その為、沢山の人達も集まってくるのです」
俺が思ってた所より、都はデカイみたいだ。
闇市なんてものもあるんなら、違法な物も扱ってんだろうな。
当然それにかこつけた悪党も大勢いるだろうし。
やっぱり『滅』の奴等も、そこにいると見て間違いなさそうだ。
だけどこれだけじゃ足りない。
まだ情報を聞き出す必要があるが。
ユリに聞いてみるか。
「都は普通に中に入れるのか?」
「いえ。中に入るには、三國のいずれかで通行証を貰わないといけません」
「通行証?」
「はい。三國にはそれぞれ國紋となる証があり、都の検問でそれを提示しないと中に入れないのです。一応帝に仇なす者を入れない為の処置みたいですが。まだお持ちでないのなら、いずれかの國の物を手に入れる必要があります。ただ、発行してもらうまでに時間がかかるかもしれません」
それは。
めんどくせーな。
俺は三國に行くつもりはない。
都に入って、じいちゃんの師匠が遺したという奴等の手掛かりを掴んで、それからじいちゃん達の仇をぶっ殺すつもりだった。
それなのに。
そんな通行証ごときに、邪魔されたくない。
とは言え、どうするかな。
考える俺を見て、ユリが聞いてきた。
「ツルギさんは、どうされるおつもりですか?」
「……町に行くまでに考えてみる」
正直今は良い案が浮かばない。
いざとなれば、強行突破で無理矢理入るか。