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「ぐっ……」
あまりの痛さに呻き声が漏れる。
膝を突きそうになるもそうはいかない。ここで膝を突きでもしたら確実に襲って来るからだ。
それにここで膝を突いたら立ち上がることが出来ない気がしたからでもある。
持ってきた回復ポーションも残り一本しかなく、使うのは戦闘が終わってからしかない。
虎型の魔物の一挙一動を見逃さないように俺は神経を研ぎ澄ませていた。それはトラも同様のようで、敵意のある眼光で俺の動きを注視している。
それと集中しているせいなのか、自然と体の痛みも気にしなくなっていた。
(さて、ここからが本番だな……)
トラの方にもそれなりのダメージが残っているが、相手が有利な事に変わりはない。
俺の体力的にもあと一撃が限界ってところだろう。
(ここで限界を超えてくれ俺の体!)
そう願わずにはいられない。
だがその思いは届いたのか、俺の体全体が紅いオーラのような何かに包み込まれた。
「力が、湧いてくる……?」
傘を持つ手に力が入る。
俺の変化に気が付いたのか、それとも何かをされる前に殺そうと思ったのかはわからない。トラは持ち前の素早さを活かして急速に接近し、その爪で俺を切り裂こうと振り下ろそうとしていた。
「負けてたまるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
俺はトラの胴体に隙が出来たのを見て、持ちうるスキルと技術の全てを限界まで引き出し最高の一撃を突き放った。
そして一瞬動きを止めたトラはゆっくりと地面に倒れ伏した。胴体には15センチほどの空洞が空いており、そこから大量の血が流れている。
トラの気配は消え死んでいた。
そう、俺は――勝ったのだ。
トラの爪は体を逸らした俺の背中すれすれに振り下ろされていたのだ。
「――勝っ、た…………」
俺はどさりと前のめりに倒れた。これには当然と言えた。だって体が限界を迎えて尚、限界を超える力を出していたのだから。
体中に激痛が走る中、俺は意識が朦朧とさせながらもポケットから回復ポーションを取り出し一気に飲み干す。
少しずつ体が癒えていくが万全とは言えなかった。
村で買ったポーションだ。王都に売っているポーションとは品質が違うだろう。
だが少しでも体が癒えたのだ。多少だが痛みは消えたのは嬉しい。
その前に――
「ここから帰らないと結局死ぬハメになる、か……」
そう。血の匂いを嗅ぎつけ集まってくる魔物がいるかもしれないのだ。
早々に立ち去る必要があった。
「うっ、ぐっぬぅぅぅっ!」
俺は痛い体にムチ打ち立ち傘を杖代わりにしてなんとか上がり、倒した虎型の魔物に視線を向けた。
「素材は持ち帰れそうにないな……」
素材よりも命の方が大切だ。
リーナとの約束を破るわけにはいかないからだ。
素材の方は体が癒えてから確認することにして、俺は魔物や獣を避けつつゆっくりと拠点に戻るのだった。




