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これにて序章が終了です!
それから僕はリーナに会うことなく一週間が経過した。
その間にリーナの家には村長が来り、王家から使いの者が着たりと忙しい様子だった。
僕はというと、家の庭で傘使いの職業に関して色々と試行錯誤していた。
傘は一度壊れると少し頑丈になって再生することが分かっていた。
これは傘の強度を確かめていた時に分かったことだった。
それ以外は何にもわからなかったが。雨の日に、両親が出かけるのに使っているくらいだ。
翌朝、リーナが俺の元にやってきた。
「お、おはようシルム」
「おはようリーナ」
「う、うん。そのお話がしたくて。ちょっといいかな?」
「もちろんだよ」
リーナに連れられて僕は誰もいないところにやってきた。
この場所はいつもリーナと遊んでいた場所だ。
リーナは口を開いた。
「あのね、明日、王都に行くことになって……」
「そう、なんだ……」
リーナがいなくなることに、寂しさの余り肩を落とす僕。
「そこで仲間を集めるんだって」
「良い人に出会えるといいね」
「……うん」
静寂が場を支配する。
そんな静寂を破ったのは僕ではなく――リーナだった。
リーナの瞳から涙が溢れ出す。
「やっぱり、やだよ……シルムと離れたくないよ!」
「それは僕も一緒だけど……」
だがこれは、リーナに課せられた運命なのだから。
傘使いの僕には何もできない。
「シルムも一緒に――」
「それは出来ないよ」
即答で否定した。
「なん、で……?」
「それはリーナにしか出来ないことだから。沢山の人を救ってあげて」
「……なら約束して」
こちを真剣に見つめるリーナ。
「帰ってきたら私と結婚するって」
「っ! ああ、もちろん! 僕だってリーナが好きだ」
そう言って僕はリーナにキスをした。
リーナの頬が一気に真っ赤に染まる。
リーナが頑張るんだ。なら僕も強くならないと!
「ありがとう。でも、私に出来るかな?」
「出来るさ。だけど」
「だけど?」
「もし何かあったら僕の名前を呼んで。そしたら僕はリーナの元に駆けつけ助けるから」
「――うんっ! いざとなったらシルムの名前を呼ぶ」
「ああ、必ず助けに行く」
「大好き!」
僕に抱き着くリーナ。
それをそっと抱きしめるように僕も背中に手を回した。
これは僕も強くならなくっちゃいけないね。
――翌日。
村中でリーナを見送った。
「またねシルム!」
「ああ、元気で」
それだけ言葉を変わ脚、リーナは王家の使いの者達と共に王都へと向かうのだった。
――その日の晩。
外は雨が降っており、僕は奇妙な夢を見た。
それはこことは違う世界。高い建物が立ち並んでいた。
そんな中、スーツを着た一人の男性が傘を差しながら帰宅していた。
しばらくして彼は止まり暗い空を見た。
「お、雨が止んでいるな」
傘を畳みそのまま歩く彼。自宅が近づくに連れ人が減ってきた。そしてとうとう誰ともすれ違わなくなった。後ろを見るも人はいない。
無造作に傘を振り回していると、子供の頃に傘を振り回して遊んだことを思い出した。
「懐かしいな。昔は傘で遊んでいたっけ」
そう言って昔のように傘を剣のように構える。
「はぁっ!」
傘を剣のように、仮想の敵を捌くように振るう。
何度も何度も振り回す。
そして僕は、いや――俺は全てを思いだした。
そう。俺はこの世界に、シルムとして転生したのだと。なんで職業が『傘使い』だったのか。それは社会人になっても傘を子供の様に、まるで剣のように振り回していたらだと。
だから俺の武器となったのだ。今ならこの傘をうまく扱える。
俺はそう確信したのだった。
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