表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢と腹黒侍女

作者: 渡辺純々

「なんで……どうしてこうなった」

 開いた窓から入り込んでくる波の音を聞きながら、私は壁に額を打ち付けてそう呟いた。

 日本で流行りの乙女ゲームとやらを興味本位でやっていたら、いつの間にかそのゲームの中に入っていて。私は"フランシーヌ"という悪役令嬢に転生していた。

 戸惑いながらも、一生懸命破滅フラグを回収してハッピーエンドを目指していたのに。それなのに、その終わりがバッドエンドの国外追放なんて。

「なんで私が国外追放? 私はソフィー公爵令嬢を、ココット伯爵令嬢の毒殺計画から救い出したのよ。本来ならその功績を皇太子殿下に認められて、今頃王宮でド派手な結婚式をあげてるはずだったのに」

「それが、毒殺計画の濡れ衣を着せられて、今や陸の孤島に私と二人きり。残念でしたね」

 侍女のリゼットが無感情に淡々とそう述べる。思わず見惚れてしまうほどの美貌とその声に、私の意思とは関係なく胸が一つ高鳴る。そんな私の機微を敏感に感じ取った彼女は、突然私を壁に押し付けた。

「ちょ、ちょっとリゼットっ?」

「詰めが甘いんですよ、フランシーヌ様は。それでいて優しすぎる。あのままソフィー様が毒殺されれば、皇太子殿下のお妃候補の筆頭はあなた様だったのに」

「それは……」

「でも、そんなお優しいあなた様が私は好きです」

 リゼットはそう告白すると、私の耳にふうっと息を吹きかけた。弱点を突いたその攻撃に、思わず変な声が出る。

「日々フランシーヌ様がみんなに嫌われるようあれこれ画策し、毒殺現場にあなた様のブローチを置いて、国王陛下と深い親交のある旦那様の、信頼の厚い執事を懐柔しておいて正解でした。おかげで、計画通り処刑を免れ国外追放。やっとこうしてあなた様と二人きりになれたのですから」

「計画通りって……まさかリゼットあなたっ」

「あなた様がいけないのですよ? 周りから毛嫌いされて生きてきた私にさえ優しくされるから。最初に優しさをくださったあの日から、私はずっとあなた様をお慕い申しておりました。これでやっと長年の夢が叶います。さあ、誰にも邪魔されることなく、存分に愛し合いましょう」

「ちょっ、まっ……ひやぁぁぁ!」

 まさか、リゼットが悪役よりも悪役っぽいヤンデレだったなんて。

 でも、どうしてだろう。絡みついたその熱い手を、私は振り払うことができなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり、ただの令嬢なんですね。面白かったです
2019/09/06 19:06 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ