「私も男装をする必要がなくなるのかと、 つい思ってしまっただけだ」
「ふっ。そうか、楽しみしてるよ」
「あー、今笑いましたね!
絶対大きくなりますから! !」
「いや、別に馬鹿にしたわけではないよ。
そうなったら、
私も男装をする必要がなくなるのかと、
つい思ってしまっただけだ」
また、その壊れそうな儚い目。
どうして時々、そうやって儚い目をするんですか。
男装をする必要って何のことですか。
それって、
由野さんの過去と何か関係あるんですか。
訊きたいことは山ほどあるのに、
結局彼女には触れられなかった。
触れたいと思って、
手を伸ばしかけたのに、その手は引っ込ませてしまった。
彼女を知れば知るほど、謎が深まっていく気がする。
霧が晴れても、すぐに霧が立ちこめてしまうから。
しかし、彼女についてより
深く知りたいと思ってしまったのは今日が初めてだろう。
いつもは、手を伸ばしかけることすらもなかったのに。
傷つくなら、知らずにいようと思っていたけれど、
知らないことで彼女を傷つけているなら、
これからも傷つけるなら、知ってもいいのかな。
彼女が抱えるものから解放してあげられるなら、
重荷を分け合えるなら、
僕は彼女に歩み寄ってもいいんだろうか。
至って抽象的な問いかけではあったが、
僕は真剣にこの答えを探していた……。
早いことに夏休みも終幕を迎え、新学期に突入した。
因みに、課題とかそういうものはバイトの休憩中や、
仕事終わりなんかに由野さんが教えてくれたこともあって、
早々に終わらせていた。
そもそも、ちょっと頭が悪いだけで、
課題を溜め込むような性格ではないんだ。
ところで最近では、
黒田くんとも以前のような間柄を取り戻し、
鈴木や宮田のみんなで遊んだりしている。
それを、鈴木や宮田が哀れむような目で
黒田くんを一瞥し、僕にこんなことを言ってくるんだ。




