指先ですすーっと……
不意打ちをかけられたので、
予期せぬ事態に僕は動揺せずにはいられない。
しかしながら、
彼女はそんな僕の気持ちなどお構いなしに、
無遠慮に腕やら二の腕やらを触りまくる。
指先ですすーっと腕を撫でられ、
綺麗な年上の女性(浴衣姿)が
至近距離にいるというこのシチュエーション。
男子なら一度は憧れるんではないだろうか
――ただし、前半部分を除く。
しかしながら、立場が逆転している為、緊迫感が堪らない。
今にも、押し倒されてしまいそうなこの雰囲気。
いやだから、僕はれっきとして男の子だって。
彼女の一挙一動にハラハラしていると、ようやく口を開いた。
「ほどよく筋肉がついている。
それに、硬すぎず、太すぎなく、美しい肉付きだよ」
彼女は僕の袂から手を引き抜くと、
今度は僕の両肩に手を添える。
なんだか、
彼女がだんだんと大胆な行動に出ている、ような。
いやいや、さっきの言動から察するに、
これはその延長にすぎない。
おまけに、彼女の視線は僕の両肩まっしぐらだ。
ただそれでも、緊張せずにはいられないよ。
大人の女性がここまで近づいてきたら、
健全な男子高校生なら胸を高鳴らせてしまうのは
当然のことと思う。
しかし、僕から触れるようなことは
決してしないように、堪えている。
「見かけによらず、肩もしっかりしているな。
骨も太いようだし、肉付きも申し分ない。
これなら、しっかり栄養をとって、
睡眠をとれば、すぐに大きくなるさ。
だから、心配するな」
不意に僕の頭をくしゃりと撫で回す彼女。
どんな格好をしていても、彼女は彼女なんだ。
「綺麗な女性」だけじゃなく、
「stray sheep」の店長の由野さんでもある。
僕は、彼女のほんの一面を見たにすぎないのか。
一度そう思うと、ドキドキが治まっていった。
「そうですか。
なら、由野さんよりも
十二センチくらい大きくなってみせますよ。
そうしたら、ちょうどいい身長差になるでしょ?」
僕は悪戯っぽく笑ってみせた。
何がちょうどいいのかなんて考えていないが、
それぐらいの身長差だったら、
彼女を女性として引き立てられると思ったんだ。




