「花火をしよう」
「さあ、こっちだ」
彼女はそう言って、僕の手を強引に引き、
店の奥へと歩みを進める。
一番奥の扉を開くと、店の外へ出てしまった。
けれど、そこにはまた一つ建物があったんだ。
彼女はなおも僕の手を掴んだままで、さらに足を進めた。
「これだよ」
彼女が指さす方へ目を遣ると、
水の入ったバケツと長方形のナイロンの包みがあった。
確認するように、彼女の顔を見てみる。
「花火をしよう」
彼女はそう言うと、言い訳のように理由を説明し始める。
「以前、君の誘いを断ってしまっただろう。
あのときは安易に断ってしまったが、今にして思えば、
あれは私に休めという君からの粋な計らいだったのに、
気づけなかった。
かと言って、
そんなに長時間休みを取れる暇はあまりないし、
今日は定休日だから余裕があると思ったんだ。
どうせなら、花火をやり直そうと思って、
君を誘ってみたんだ。
誘うタイミングが掴めず、
急になってしまったが、迷惑ではなかったか?」
そんなはっきりと由野さんの為に
誘ったと言われてしまうと、心苦しい。
あんなにも、誰かの為なら、
しっかりとした対応がとれるのに、
自分のこととなると急に弱気で分かりづらくなる。
普段の僕に対する少し横柄な態度は、
素の自分とバランスをとるためだったのかな。
「大丈夫です、暇だったんで。
いやー、手持ち花火なんて、久しぶりですよ。
せっかくだから、目一杯楽しみましょう!」
「ああ、そうだな」




