萎れた花のような
「いらっしゃいませ。
お席は、カウンターとテーブル、
どちらになさいますか?」
雨でうだっていた彼女は、
瞬時に営業スマイルに切り替え、
そつなく接客をこなす。
本当に、切り替えが早いな、この人。
「カウンターで、お願いします」
この雨のせいか、
この女性もさっきの由野さんのように元気がなく、
萎れた花のような印象を受けた。
まるで生気が失われていたからだ。
うだるような蒸し暑さに、
由野さんは彼女にあの日と同じく、
マスカットティーを差し出した。
「どうぞ。
すっきりした甘さで飲みやすいですよ」
彼女は小さく頷き、ちびちびと飲んでいく。
どうやら、食事目的でこの店に
立ち寄ったわけではなさそうだ。
深く腰掛けられた椅子からして、長居目的だろう。
さしずめ、電車の運行休止の
待ち時間の暇潰しと思われる。
よく見てみると、
彼女は肌の色が透き通るように青白く、
やけにほっそりした体格で、頬は痩けている。
ストレス性のものか、
生活習慣によるものかは判別つかないが、
あまり健康体とは言えない。
由野さんも似たようなことを考えていたのか、
彼女に声をかけた。
「よろしければ、お食事はいかがですか?
食欲がなければ、
サラダや雑炊などもおつくりしますが、
どうでしょう」
彼女は考えた末、
食事をとることにしたようだ。
「じゃあ、雑炊をお願いします」
相変わらず、力なく、細々と、
芯のない声でそう言った。
「では、
トマトと玉葱の雑炊でよろしいですか?」
「はい」
彼女は由野さんと会話する度に、
声が小さくなっていった。
疲れているときに由野さんを見ると、
格好いいと思う反面、
眩しく感じてしまうのかもしれない。




