初デート
「もう一つの実はどうなさいますか?
自分をよく知るにはいい果実ですよ」
「調理のサービスをお願いします」
彼女は、
彼の果実を用いて白桃のコンポートをつくった。
彼はそれを口にして、静かに呟く。
「表現力を得るには、自分自身を理解することと、
自分の考えを深めることが必要だったんですね」
じっくりと味わうように
それを完食した彼は
また彼女に感謝の言葉を連ねる。
淡々と僕は一人語りをしているが、
感情的な言葉を口にしよう。
とても美味しそうだなぁ、白桃のコンポート。
非常に食べたくて堪らない。
今度、祖父母の家から送られてきた
栗を貢いで、つくってもらうとしよう。
と、一人で勝手に妄想を繰り広げている間に、
彼は感銘を受けていた。
一人だけ、
この場に相応しくないように思えてならない。
「ありがとうございます、
自分のことを知られてよかったです。
今まで以上に自分のことが好きになれました。
あと、もう一つ、お願いがあるのですが……」
頼み事をしようとする彼に、
彼女は優しく受け応える。
「どうぞ、おっしゃってください」
彼は怖ず怖ずと、単語をいくつかに分けて、
お願い事というのを話し始めた。
「初デートに、
ここで食事をしたいのですが、
一週間後の夜七時に予約できますか?」
渋っていた割には、えらく具体的なお願いだ。
何だかんだ言って、快諾してもらえることに
気づいていたように聞こえる。
勿論、その勘は正しい。
「勿論ですよ。
お値段は三千円程度の、
おまかせコースでよろしいですか?」
そしてまた、彼女もサクサクと話を進めていく。
「はい、大丈夫です」
「かしこまりました。
二名様、
一週間後の夜七時にお待ちしております」
初デートにここを選ぶなんて、
余程この店を気に入ったのだろう。
あるいは、
それだけ彼女に感謝していると言える。
彼女はあっさり予約を承諾してしまったが、
準備はどうするつもりなんだろうか。
初デートの、ディナーコースだ、
彼女なら、とことんこだわりそうに思う。
それを一人で請け負うのは、少々辛い気がするが……
「佐藤、予定は開いているな。
シフトを入れておくが、問題ないな?」
「了解です」




