純情でひたむき
次会うときには、
彼の恋は成就しているだろうか。
今の彼は素敵な人だから、誠心誠意を込めて、
相手に想いを伝えたら、その恋は叶うように思う。
単純だけど、相手の為に、
由野さんの元で習い事まで始めたんだ、
それも「好き」と自覚する前から。
悪く言えば、重いけれども、純情でひたむきなんだ。
彼が初めて好きになった人は
きっと素敵な人なんだろう。
その相手が氷川さんの想いを
受け止めてくれるように祈ろう。
また暫くの間、彼と会うことはなかった。
しかしながら彼女は
彼と会っているような様子だ。
相変わらず、僕のシフトが入っていない日に、
習い事を続けているんだろうな。
どれぐらい彼の腕は上達しただろうか、
その努力が相手に伝わるといい、
それでなくても、努力が実を結ぶ日があるはずだ。
ただ、彼は少々、
思い込みが激しいところがあるから、
それが変な方向に突っ走らないといいけれども……
彼は今まで執心するようなことが
あまりなかったらしいから、夢中になるあまり、
相手に嫌われるような言動をとるかもしれない。
気をつけてください、氷川さん。
夏休みが終わり、
秋も色づき始めた十月十五日の土曜日に、
彼は再び店に姿を現した。
と言っても、これは僕が彼と久しく
会っていないことを指すだけで、
彼自身は週に一度か二度程度は、
この店に足を運んでいるらしいが。
「こんばんは。君とは、久しぶりだね」
どことなく、デジャブのような気がしたが、
実際に同じ会話をしたのを思い出す。
「いらっしゃいませ、お久しぶりです氷川さん。
あれからどうで……
いえ、その鉢を見れば、一目瞭然ですね」
二ヶ月前、彼がこの店に足を運んだときに
見せてくれた鉢植えには、
二つの小さな花が咲いていた。
今は、それが果実になっている。
甘く熟していそうな桃だ。
種がこれだけ育っているだけあって、
彼の心も、恋もそのような結果なんだろう。
彼は白桃の赤みと同じような顔をして、
結果を報せてくれた。




