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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第二種「感情」―表現する術―】
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清々しい雰囲気

「氷川さん、雰囲気が変わりましたね。


 何か、心境の変化でもありましたか?」


 柔和な態度で彼女は彼に問いかける。

 

 彼も、それを嬉々とした表情で答えた。


「最近よく、そう言われます。


 俺、好きな人ができたんです!」


 一人称が僕から俺に変わっている。


 これも種が為す、心境の変化だろうか。


 それとも元々は

 こういう一人称だったんだろうか。


 少なくとも、自分に自信を持てたようでよかった。


 以前、来店したときの彼は、否定され、

 傷つけられた直後だったからか、

 どこか軟弱な印象を抱かされたけれど、

 今日は清々しい雰囲気を身に纏っている。


「そうでしたか、おめでとうございます。


 好きな人ができてからどうですか、

 自分自身で何か変わったと思うことはありますか?」


 活発にはきはきと、彼は語り始めた。


「はい。


 その人を好きになってから、

 相手の話に親身になれるようになりました。


 また、好かれたくて見栄を張ったりすることも、

 その人だけ特別扱いしてしまいたくなるような

 気持ちも、その人のことを考えるだけで

 胸がいっぱいになったり、

 思わず嬉しくなってしまう気持ちさえも。


 分かってしまうんです。


 自分の心に花が咲いたみたいに、

 日々が彩られたものに変わりました」


 以前も俯いていたわけではないけれど、

 前を向いていなかったその彼は、

 しっかり背筋を張り、前を向いて、

 相手の目を捉えながら会話をしている。

 

 そして、彼が持つ鉢には、

 小さな花が二つ咲いていた。


「氷川さんは、幸せですか?」


 ふと、口を吐いて出た疑問だった。


 心の花の影響力が僕個人のものでないと

 信じたかった為に。


「はい、幸せです」


 言い切りの口調に

 変わっていることが何よりの証拠だろう。


「氷川さんが幸せで何よりです」


 ここを訪れた人が幸せになってくれるのは嬉しい。


 少しでも、

 誰かの役に立てたような気になれるから。


「ありがとうございます、また来ますね」


 それに、笑顔は気持ちを穏やかにし、

 またその笑顔を見るための原動力を生み出す力がある。






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