「どうぞ、開いてますよ」
自業自得で自覚していたなはずなのに、
あまりにも弱っちい僕の心は傷つくと同時に、
罪悪感が生じていた。
情けない自分が嫌になり始めてきた帰り道、
あの店へ続く裏道が視界に飛び込んできた。
そうだ、傘を借りていたんだった、
返しに行かなくちゃいけないや。
思うよりも先に身体が動き出す。
あの傘を取りに帰ろう、早く、あの店に。
どうしてだか、
無性に彼に会いたくなったのだ。
息急き切らして、
家に到着した僕は玄関の傘立てに入れられていた
傘を手に、自室から普段の財布を持ち出す。
徒歩では遅すぎるからと、自転車に跨がり、
炎天下の中、額に汗を浮かべながらあの店を目指した。
店にたどり着いたのは、
家を出発してから十五分といった頃だったはずだ。
全身汗だくになってようやくたどり着くと、
もうクタクタだった。
そりゃそうだ、学校帰りに動きにくい制服のまま、
汗だくになりなるまで十五分も
自転車を漕ぎ続ければ疲れるだろう。
自転車を駐輪スペースに停め、鍵をかけ、
その場で深くゆっくりと深呼吸をする。
息を切らして店に駆け込むなんて、
格好悪くて、恥ずかしいから。
こんなに急いでいるときでも男のいう奴は
意地を張ってしまう生き物なんだろう。
高鳴る鼓動を抑えて、僕は店の扉を叩く。
潔く、扉を開ければいいのかもしれないけれど、
今の僕にはそれができないから。
店の奥から声がする。
「どうぞ、開いてますよ」




