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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第二種「感情」―表現する術―】
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「自己表現」の種

「はい、分かりました。


 あと、お願いがあるのですが――」


 これがまた一つの縁に繋がることになるなんて、

 僕は思いもしなかった。


「はい、いいですよ。


 それではここにお名前と、

 あなたが通える日時と、連絡先を記入してください」


 そう言って、彼女は店のレジ横に置かれていた、

 メモ用紙とボールペンを差し出した。


 彼はスマホを横目に書き上げた。


 その後、彼は彼女から種、鉢、

 土を購入し、会計を済ませると、

 穏やかな表情で店を後にした。 


 因みに、彼が購入したのは「自己表現」の種だ。


「由野さん、

 種を食べて大惨事になったって話、本当ですか?」


 すると彼女は馬鹿にするように鼻で笑った。


「そんなわけあるか。嘘に決まっているだろう。


 ああでも言わないと、

 勝手に種を食べる輩がいるからね。


 忠告はしておいたから、後は自己責任だ。


 安全も保証できないのに、

 勝手に食べることを許すわけにもいかないからな」


「どうして食べられると困るんですか?」


 彼女の表情が束の間、固まった。


 しかし、彼女はそれを

 何事もなかったようにあっさり答えを出した。


「せっかく調理するサービスを行っているのに、

 勝手に食べられては利益が減ってしまうだろう。


 それを機に、

 常連客になってくれるかもしれないしな」


 商いの鑑みたいなことを言って、

 にかっと笑みを浮かべるけれど、

 さきほどあった間は誤魔化せていない。


 あの間だけでなく、

 彼に種を食べてはいけないことを説明した時も、

 苦汁を嘗めたような表情で、物々しく語っていた。


 けれど僕には、

 その訳を言及することはできなかった。


 そこには彼女の人格を構築する

 何かがあったように思えて、

 僕にはそこまで踏み込む義理はないから。





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