あなたの選んだ心の成長
「それでは、『種』自体の説明をしますね。
種は土に植えて、
週に一、二回水を与えたら十分です。
また、種は鉢で育てられ、
日光が当たらない部屋の中でも育てられますよ。
種は、心の状態を反映、投影するもので、
成長を促進してくれるものです。
そのため、種が生長すると、
育てた人の心も成長しますし、その逆もまた然り。
あなたが選ぶ心の種が、
あなたの選んだ心の成長を促してくれるでしょう」
難しく、いつもながら、やや抽象的な口調であったが、
これで理解できるだろうか。
「なるほど。普通の種ではないのですか。
しかも、願いを直接叶えるのではなく、
心の成長を促すという点がまた面白いですね」
え、あれで理解できたんだ。
流石、二十七歳の大人なだけある。
「それと、種は育っても、育たなかったとしても、
店に返却しに来てください。
実が生れば、それを一つ回収します。
二つ返してくだされば、
種のお代は返金させていただきます」
またもや、突拍子もない話だけれど、
彼は話についてこられるようで、
加えて、質問を投げかけた。
「あの、実って食べられるものなんですか?」
彼女は甘く穏やかな笑みを浮かべて、答えた。
「はい、食べられます。
それに、とっても美味しいですよ。
ですが、二つ以上実が生らなければ、
食べる機会はありませんね。
因みに、うちでは実を調理して提供する
サービスも行っておりますので、
よろしければそちらもお試しください」
「あの、その実って
他の人が食べることはできないんですか?」
「いえ、それはできますが、お勧めはできません」
「というと?」
苦渋の表情を浮かべ、
重々しくその唇を開いたんだ。
「過去にそれをして、
大惨事が起こってしまったことがありました。
誰も彼も救われない結果でした。
私が気づいたときには手の施しようも、
修復のしようもありませんでした。
だから、他の人に
実を食べさせることはしないでください」
あまりの剣幕に彼もあっさりと身を引いた。




