どうでしょう
「はい、ありがとうございます。
いただきます」
しかし、彼女はお客に対しては、
非常に穏やかな表情で、丁寧な応対をしている。
これが大人というやつなんだろう。
到底、真似できそうにないや。
そう思う僕は、まだまだ子どもだ。
スプーンを口に入れた彼は、口元を綻ばせ、
噛みしめるように言った。
「美味しい。とても、美味しいです」
そして、思った通り、彼女は満面の笑みを浮かべる。
こういうところは本当に可愛いんだけれど、な。
パクパクとモンブランを食べ進めていく
彼を見つめる彼女は、
子どもを愛でる母親さながらだった。
それだけ、美味しく
食べてもらえることが嬉しいんだろう。
その気持ちがひしひしと伝わってくる。
いやでもね、由野さん。
彼はあなたより年上だと思いますよ?
「ごちそうさまでした」
モンブランを完食して、
幸せそうな雰囲気が漂っている中、
彼女は突然こんなことを言い出した。
「さきほどのお話、
失礼ながら厨房で聞かせていただきました。
何かお悩みのようでしたが、どうでしょう。
私でよければ、お話お伺いしますよ」
魅惑的な笑みを浮かべ、
物腰柔らかな態度で彼女は問いかける。
彼はそっと目を伏せてしまう。
その理由も大体予想はつく。
悩み事を抱えているときに、
中性的な外見の店主から優しく声をかけられ、
ドキッとしてしまうだろう。
相手は男性なのに、
緊張してしまう自分から
目を背けたくなったんだろう。
この人は、本当にタチが悪い。
けれども、彼は意を決したように顔を上げ、
深く頷き、再度語り始めた。




